高齢タクシー運転手 能力低下でも免許剥奪のルールなし

2月2日(木)7時0分 NEWSポストセブン

悩ましい高齢タクシードライバーの問題

写真を拡大

 高齢ドライバーをめぐる問題は悩ましい。昨今「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と高齢者が証言する事故が相次いでいる。ただ、事故リスクがある半面、いつまでも運転し続けていたい気持ちもよく分かる。


 それがタクシードライバーとなればさらに難しい。彼らにとって生活の糧であると同時に、乗客の安全を守る重大な責務があるからだ。では実際にどれだけ高齢ドライバーは存在するのか。


 法人も個人もタクシー運転手は試験に合格し、地域毎にある国交省の指定登録機関に登録しないと営業できない。それによると、東京地区(東京タクシーセンター登録)のタクシー運転手のうち、75〜79歳は「2522人」(法人1712人、個人810人)、80歳以上が「442人」(法人153人、個人289人)もいる。


 大阪地区(大阪タクシーセンター登録)は75歳以上が1416人(80歳以上を含む。法人1080人、個人336人)で、なんと個人タクシー運転手の1割以上が75歳オーバーだった。


 今年3月12日に施行される改正道路交通法では、75歳以上のドライバーが信号無視などの違反を起こした場合、「臨時認知機能検査」を受け、認知機能が低下していれば実車講習などが義務づけられる。


 それでも、医師に「認知症」と診断されない限り、高齢を理由に免許を取り上げられることはない。


 それに対して、タクシー運転手は客の命を預かるのだから、高齢になって運転能力や注意力が低下していないかのチェックがより厳しいのかと思いきや、そうでもないようなのだ。


 まずタクシー運転手になるには「普通二種」という免許が必要だ。合格率は40%程度だが、いったん取得すれば更新に年齢制限はない。


 ポイントは免許更新の際、普通一種にはない「深視力検査」が課せられること。3本の棒の真ん中の1本が前後に動き、ちょうど3本が横一列にならんだところでボタンを押す。遠近感をチェックする検査で、3回続けて平均誤差2センチ以内でなければ合格できない。


「慣れないと難しいが、実は、何度失敗してもいい。高齢者の方など、失敗を重ねながらタイミングのコツをつかみ、3回続けて成功するまで挑戦している。この試験で不合格になったという話はほとんど聞いたことがない」(深視力試験の体験者)


 免許更新より厳しいといわれるのが法律で義務づけられた「適齢診断」だ。タクシー運転手が国の機関「自動車事故対策機構(NASVA)」で視聴覚機能や判断力などのテストとカウンセラーの指導を受ける。65歳以上は3年に1度、75歳からは毎年適齢診断が課せられる。


 ただし、こちらも診断結果が悪くても免許が剥奪されることはない。NASVA安全指導部の説明だ。


「テストは本人に加齢でどういう機能が衰えるかを自覚してもらうのが目的。警察から二種免許を取得して運転の権利を得たプロですから、カウンセリングで“あなたは運転してはならない”とは決して言ってはいけないことになっている。あくまでも会社に診断表を出して、会社が運転手への指導法を考えるという制度です」


 運転能力が低下しているか否かを判断するのは運転手自身で、能力低下があっても制度として“免許召し上げ”のルールはないのだ。


※週刊ポスト2017年2月10日号

NEWSポストセブン

「タクシー」をもっと詳しく

「タクシー」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ