文系女子のハートを鷲掴み!?忘れられない、国語の教科書に載っていた萌える名作特集

2024年2月3日(土)8時30分 にじめん

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国語の教科書は知られざる萌えの宝庫。多感な学生の時期に読んで、その後の人生を大きく左右された方も多いのではないでしょうか?


今回は国語の教科書に載っていた小説の中から、女子の心をセンシティブに震わせた、おすすめ作品たちを紹介していきます。


『こころ』夏目漱石



発行部数700万部、日本で一番売れたとされる小説を、気鋭のBL漫画家が描いた美しいイラストとともに読める。
この作品では、エゴイズムと心の機微、罪への葛藤などが描かれ、高校の教科書にも掲載。
読み仮名が多く、用語解説もあり、中学生も大人も読める


引用:小説こころ(文響社)


夏目漱石の『こころ』は学生の「私」が小説家の「先生」と出会い、彼の死後に届いた遺書で、先生が過去に犯した罪を打ち明けられる話。


優秀な親友Kに嫉妬や羨望、憧憬や劣等感全部乗せの複雑な感情を抱き、三角関係の果ての悲劇に至った経緯に引き込まれます。


先生が「果断の富んだ性格」と評したKは家族と不仲で、先生しか友達がいません。下宿先の「お嬢さん」を巡るすれ違いはなんとも切なく、Kと先生の間柄にただならぬ気配を察し、BLに目覚めた人も多いとか。


避暑地の砂浜で知り合った先生に一目惚れし、積極的に近付いていく「私」の若さが眩しい!


学生時代の先生はK直々にお嬢さんに惚れている事を告白されておきながら、彼の気持ちを裏切る形で婚約を取り付けます。


……が、Kを下宿に誘ったのは先生自身。


下宿先の奥さんとお嬢さんもどちらかといえば先生の方に関心を寄せている為、唐突にKを出し抜いた先生の行動が、ややちぐはぐに映ります。


故に「先生の本命はKでは……?」と、あらぬ疑いが芽生えてしまいました。


Kとお嬢さんが自分をさしおいて結ばれる未来を許せず、エゴイズムから抜け駆けした結果、大切な親友を失ってしまった先生の愚かさが印象深いです。


文響社の『小説 こころ』はBL漫画家の有栖サリが挿絵を担当しており、耽美なイラストに魅せられました。






『こころ』を読んだ方には短編集『夢十夜』をおすすめ。


世にも奇妙な夢物語を詰め合わせた本作は、ラブロマンス・ファンタジー・ホラー・シュールギャグと、テイストの異なる短編が収録されています。第一夜の幻想的な美しさにうっとり……。


『こころ』の見所&感想ポスト








『走れメロス』太宰治



暴君ディオニスを殺そうとして死刑を言いわたされたメロスは、たったひとりの妹の結婚式に出るために、親友のセリヌンティウスに身代わりになってもらう。
「3日以内に戻ってくる。」という約束のもと、40キロはなれた家へ向かったのだが、再び市へと戻るべく走るメロスの前に、次々と困難がおそいかかる–。
命をかけた友情を描いて日本文学の名作とうたわれる表題作のほか、「ろまん燈籠」「黄金風景」「新樹の言葉」「葉桜と魔笛」「善蔵を思う」「佳日」の全7編を収録。


引用:講談社BOOK倶楽部


続いて紹介するのは太宰治の『走れメロス』。熱血漢の農夫・メロスが、都で聞き及んだ暴君の悪行に怒り狂い、王城に殴り込んで捕まる所から話は始まります。


メロスは絵に描いた直情径行型、身も蓋もない言い方をすれば天然ドジっ子。


冒頭の一文、「メロスは激怒した。」は大変有名ですね。


問題はその後……。


メロスは単純な男であった。買い物を背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
引用:走れメロス(講談社)


ズコーッ、てなりません?しかも「のそのそ」てドンくさ……せめて買い物は下ろしてけ……。


メロスの暴走はまだまだ止まらず、唯一の肉親の妹の婚礼が迫っているからと、石工の親友・セリヌンティウスを勝手に人質に差し出すではありませんか!


セリヌンティウス、よく受けてくれましたね。


……このようにツッコミ所満載な話なのですが、親友の信頼にこたえる為、王との約束を守る為、命がけでひた走る姿はカッコイイ!


妹を祝福して送り出す兄の顔、セリヌンティウスとの熱い友情にもときめきました。ラストの「勇者は、ひどく赤面した。」に思わずニッコリ。


集英社文庫版の表紙は『テニスの王子様』の許斐剛先生が手掛けているので、ファンはぜひチェックしてください。


浪費家の太宰治が友人の壇一雄を旅館に置き去りにした実話が元ネタと言われているので、それを踏まえて読むと味わい深さがまた格別。


青い鳥文庫の表紙を手掛けるのは浅見よう先生。少年漫画ぽくて素敵です!






難しい印象が先行しがちな太宰作品ですが、個性的な五人兄弟が妄想ロマンストークで盛り上がる『ろまん燈篭』は、読みやすくておすすめです。


筆者の推しは二十五歳法学士、毒舌ぶっているものの映画を観に行くと真っ先に泣く長男です。


『走れメロス』の見所&感想ポスト








『少年の日の思い出』ヘルマン・ヘッセ



『車輪の下』と同時代の初期短編集。青春の心の動きを類い稀な描写で描いた独自の世界。表題作は蝶の標本を巡る話で昆虫好きの訳者がこれまでの誤訳を詳細に正す。


引用:少年の日の思い出 ヘルマン・ヘッセ青春小説集(草思社)


出ましたみんな大好きトラウマメーカーヘルマン・ヘッセ!


卑屈な少年の心をバッキバキにへし折る名台詞、「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。」が有名ですね。


私の中では鬱なジュブナイル、略して鬱ナイルを書かせたら右に出る者がいない作家。保守的な寄宿舎を舞台に少年同士の濃密な友情を描いた『車輪の下』、『デミアン』も名作です。


蝶の採取に熱中していた「僕」は、隣に住む模範少年エーミールが、同じ趣味を持っているのを知って近付いていきました。


が、苦労して捕まえたコムラサキを「せいぜい20ペニヒ程度」と酷評されがっかり。


「僕」は可哀想ですが……ドS毒舌(美)少年、いいね!


ちなみにエーミールの容姿の描写はないものの、「この性格で美形じゃなきゃ嘘でしょ!?」ってことで脳内補完。


子供らしさに欠けた悪徳の象徴としてエーミールを疎む一方、育ちの良さから来る気品や知性、洗練された展翅技術や贅沢な標本箱の数々に憧れを禁じ得ない「僕」。


エーミールが非常に希少なクジャクヤママユの繭を入手した噂を聞き、うっかり魔が差して盗んでしまったのが運の尽き。


その後反省して謝りに行くのですが……。


ノスタルジックなタイトルに反し、本作は「僕」がエーミールに許され大団円なんてぬるい結末は迎えません。エーミールは泥棒の「僕」を軽蔑し、「そうか、そうか(以下略)」と貶めたのでした。


たっぷり皮肉をまぶした潔癖(美)少年の毒舌を摂取したい方、絶望に歪む少年の顔が好きな方はぜひ読んでください。


個人的にはエーミール×「僕」推しです。


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『デューク』江國香織先生



クリスマスソングが流れる街で起きた奇跡。
愛する犬・デュークが死んでしまった。悲しくて涙が止まらない私の目の前に現れた少年。 晴れた冬の1日を彼と過ごした私が受け取ったメッセージは……。


引用:デューク(講談社)


赤ちゃんの頃から一緒に育った愛犬・デュークを亡くし、深い悲しみに沈む「私」。


バイトに行く為真っ赤な目で電車に乗った所、前に座っていたハンサムな少年が席を譲ってくれました。


彼から気晴らしに誘われた「私」はバイトを休み、一日遊び回ります。


別れ際、少年は「今まで楽しかった」と告げて「私」にキス。それはデュークのキスによく似ていました。


現在ペットを飼っている方、ペットと死に別れた経験がある方は、あらすじだけでも感涙必至の切ないストーリー。


ひょっとして……とほのめかされこそすれ、少年の正体が最後まで明かされないのも粋だと思いません?


たった数十ページの中にデュークを失った寂しさや感傷、少年と過ごすひとときの楽しさや癒しがギュッと凝縮され、カタルシスを経た後はほっこり心があったまります。


ジェームズ・ディーン似で音楽好きでキスが上手い。その上擬人化イケメンなんてデュークの彼氏力高すぎ〜〜!


江國香織先生はゲイの夫と偽装結婚したアル中妻、夫の彼氏のシェアライフを描いた、『きらきらひかる』も女性人気が高いです。


エッセイ『都の子』のきらきらした言葉遣い、小学生の視点からひと夏の不穏を綴る、『すいかの匂い』の湿潤な空気も素敵!


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『ひよこの眼』山田詠美先生



メロンの温室、煙草の畑、広がるれんげ草の群れ。香り高い茶畑、墓場に向かう葬列、立ち並ぶ霜柱など。学校までの道のりに私が見た自然も人間もあまりにも印象的であった。心を痛めることも、喜びをわかち合あことも、予期しない時に体験してしまうのを、私はその頃知った。永遠の少女詠美の愛のグラフィティ。


引用:晩年の子供(講談社)


切なすぎるラストが読者をどん底に叩き落とす傑作。


中学三年の「私」のクラスに来た転校生、相沢幹生。「私」は常に上の空で何かを一心に見詰めている、ひどく澄んだ彼の瞳に惹かれます。


後日クラス委員に選ばれた「私」と幹生は急接近し、お互いに仄かな好意を抱くのですが、その先に待ち受けていたのは残酷な結末でした。


ああ、思い出し鬱……。


本作は1990年に執筆された作品。


だけど読み味がまるで古びてないどころか、ヤングケアラーや子供の貧困が表面化した現代だからこそ、より強いメッセージ性とリアリティーを帯びています。


幹生に恋する「私」の心理描写がリリカルで瑞々しく、二人のハートフルな触れ合いが微笑ましいだけに、ひよこの眼をした彼にな何もできなかった「私」が募らせる、後悔さえも通り越した無力感がやるせない……。


タイトルの意味がすとんと胸に落ちると同時に、足元にぽっかり穴が開いたような気持ちになりました。


彼は、あの公園で、確かに生きようとしていたのに。そして、私の手をきちんと 握ったのに。あの人は、私が初めて出会った、人生に対して礼儀正しい人だったのに。


引用:「ひよこの眼」(講談社)


笑わせてあげてたんじゃなかった。


きっと彼が笑ってあげていた。


音を乗せた問いとして放たれない、ラストの独白が胸に刺さります。


『ひよこの眼』とテイストが似た山田詠美先生作品をお探しながら、『色彩の息子』『放課後の音符』『僕は勉強ができない』にもチャレンジしてください。


『デューク』収録の短編集、『つめたいよるに』に入ってる『晴れた空の下で』もじんわりしました。


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『卵』長野まゆみ先生



先生、今度は何処の学校へ行くのだろうね…紺野先生は臨時の理科教師。白い夏帽子に旅行鞄。任地の学校の生徒たちは、先生が駆使する言葉の魔法に誘われ、不思議な世界をかいま見る。長野ワールドのエッセンスがつまった傑作。


引用:夏帽子(河出書房新社)


学校の図書室で読めるBL、改め一部女子のカリスマ・長野まゆみ先生。


アナタはどこから?『天体議会』から?


筆者は南国の少年たちが爛れた休暇を過ごす『夏至南風』を読んでいた為、あの長野まゆみ先生が国語の教科書に!?と、色んな意味で驚愕しました。


とはいえ本作ははじまりから終わりまで健全なのでご安心あれ。


理科教師の紺野先生と任地の少年たちの交流を綴った物語には、ノスタルジックなジュブナイルの美質が詰まっています。


国語の教科書に載っている『卵』は、学校の人工孵化器でチャボの雛が孵るのを心待ちにしていたものの、海が荒れて欠席せざる得なくなった離島の生徒の為に、紺野先生が機転を利かせる話。


孵化する瞬間の「音」を無線機で伝える紺野先生の柔軟な発想力、チャボの雛を愛しげに抱っこする少年のいじらしさにトウンク!


年の差師弟萌えがしたい方、お茶目で優しい先生が好きな方は必見。


『卵』で長野まゆみ先生を知った方には、『少年アリス』『天体議会』『三日月少年漂流記』が入門編におすすめです。


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『夏の葬列』山川方夫



突然の空襲。敵機から少年をかばった少女が銃撃されて死んだ。少年は成長し、苦い思い出の地を訪れるが…。人生の残酷さと哀しさを鋭く描いた表題作他。(解説・山崎行太郎/鑑賞・川本三郎)


引用:夏の葬列(集英社)


嘗て田舎に疎開していたサラリーマンの「俺」。


十数年ぶりに当地で途中下車した際、畦道を行く葬列を目にし、機銃掃射で大怪我したヒロ子さんのことを思い出します。


ヒロ子さんは同じ東京出身の「俺」に優しくしてくれたにもかかわらず、「俺」はヒロ子さんを突き飛ばし、一人だけ田んぼに転がり込んで助かったのでした。


大勢の子供にトラウマを植え付けた鬱小説の決定版。


ミステリー的などんでん返しも仕掛けられており、ラストに明かされる衝撃の真実に戦慄!


サバイバーズギルトに苦しみ続けた主人公のエゴイズムが第二の悲劇を招く因果応報の展開には、人間の狡さや愚かさを否応なく突き付けられました。


ヒロ子さんが身を挺して主人公を庇った優しく気高い少女として描写されているだけに、より対比が際立ちますね。



本作が好きな人には道尾秀介先生のイヤミス、『向日葵の咲かない夏』をおすすめします。


叙述トリックに欺かれる快感が味わえる、屈指の鬱小説ですよ。


夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。


引用:向日葵の咲かない夏(新潮社)


『夏の葬列』見所&感想ポスト








あなたのイチオシを教えて!


以上、筆者の印象に残っている国語の教科書掲載作品をご紹介しました。気のせいか鬱成分が多くなってますね……。


何故?


子供に辛い現実を教える方針なの?


あなたのお気に入りはありましたでしょうか?記事で取り上げてないイチオシ作品があれば教えてください!


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