「真田丸」脚本 三谷流と大河流を使い分ける絶妙なバランス

2月3日(水)7時0分 NEWSポストセブン

堺雅人主演『真田丸』。好調の秘密は?(公式HPより)

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 三谷幸喜脚本、堺雅人主演で話題を集めているNHK大河ドラマ『真田丸』。戦国時代最後の名将といわれる真田幸村(真田信繁)の生涯を描いた同作。視聴率は好調で、第2回は20.1%を記録し、2013年放送『八重の桜』以来、3年ぶりに20%の大台にのせた。1月31日放送の第4回は、17.8%だった。作品のなかで、“三谷ワールド”はどれだけ発揮されているのか。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが好調の秘密に迫る。


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 まだ始まったばかりだというのに、さまざまな評価が噴出している大河ドラマ『真田丸』。初回から武田家滅亡、真田一家の脱出劇など、ものすごいスタートダッシュ。吉田鋼太郎の織田信長は、怖い顔でのしのしと登場したかと思ったら、あっという間に本能寺の変であの世に旅立ってしまった。普通、ここはもっと引っ張るでしょ?と思ったが、出てきたその回にもうめらめらと炎が燃えて、明智光秀(岩下尚史)が「敵は本能寺にあり!」と叫んでいるって。驚くべきスピードである。


 しかし、私がこのドラマ全体に感じたのは、大事件の躍動感、スピード感というより、三谷幸喜脚本の「三谷ドラマファン、歴史ファン、大河ドラマファン、それぞれに配慮したバランス感覚」だった。


 はっきり言って、この三ジャンルのファンすべてを満足させるのは、とても難しい。初の三谷作大河ドラマ『新選組!』では、初回に近藤勇(香取慎吾)が土方歳三(山本耕史)、坂本龍馬(江口洋介)と黒船見物に出かけた。この三人が関東にいたことは事実とはいえ、若き日に知り合いで、さらに黒船に泳いで近づこうと下帯一丁になった近藤と土方が西洋流の大砲にびっくりし、抱き合って震えるというとんでもない展開には、みんなびっくり。違和感を持った歴史ファン、大河ドラマファンも多かった。


 その経験があってか『真田丸』は、くすぐりは控えめ。ただし、そこは三谷作品。女子や内輪の会話劇は現代語の三谷流、男子の会話劇は武家の格式重視の大河流とカラーと使い分けているように見える。たとえば信繁(堺雅人)が初恋の人、梅(黒木華)に土産の櫛を手渡そうとする場面。「いただけません」とためらう梅に、きり(長澤まさみ)は「いいんじゃないの、くれるって言うんだから」とプリプリしている。


 箱入りの梅の櫛に比べて、きりがもらった櫛は明らかに安物の地味なものだったのだ。その後、きりは山で騒動があった後、わざと足を痛めたと言いだして、信繁におんぶしてもらう。少女マンガか!と突っ込みたくなる場面だ。また、真田家から織田方に人質を出すことが決まった際には、信繁の姉の松(木村佳乃)が「私が!」と立候補。実は裏切り者として隠れている松の夫を人質の従者として密かに安土に同行させようと信繁に知恵をつけられているのだ。「いや、ここはばば様(信繁の祖母)がいいのでは…」と父昌幸(草刈正雄)に言われると、松も信繁もジタバタと抵抗。こんな場面は妙に可笑しい。

 

 歴史には女性の記録がほとんど残らないため、自由に書きやすい。過去の大河ドラマでも側室の名前や性格などは創作ということも多いのだ。また、女子は家の中にいることが多く、代表作『ラヂオの時間』のスタジオ、『有頂天ホテル』のホテルなど閉じた空間でのドタバタが得意な作家にはぴったりともいえる。


 映画では役所広司や佐藤浩市など、何をやってもカッコよくなる俳優にとぼけた役をやらせるのが大好きな三谷脚本。今回のターゲットは、家康の内野聖陽だろう。信長様がきれい好きだから「馬糞もひとつ残らず拾え」とちょこまかしている小心者の家康が、将来、信繁の最大の敵になる。ここがこのドラマの仕掛けどころ。まだまだ道は長い。

NEWSポストセブン

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