大坂なおみに日本語での回答を要求するメディアの魂胆

2月4日(月)16時0分 NEWSポストセブン

マスコミは「日本語」を求めてばかりだが…(時事通信フォト)

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 世界ランキング1位となったプロテニス選手の大坂なおみにまつわる報道が、ネットで反感を買っている。慣れない日本語をわざと喋らせて、テニスそのものより「ナオミ節」を強調したメディアの報じ方が嫌われている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、大坂なおみをめぐるメディアの姿勢について考えた。


 * * *

 ネットでは「マスゴミ」という言葉がよく使われるが、テニスプレイヤー・大坂なおみをめぐっては特に頻出する。大坂が全豪オープンで優勝し、世界ランク1位が確定した翌日のスポーツ報知電子版に、〈大坂なおみ、「日本語で答えて欲しい」との質問に「英語で言わせていただきます」〉という記事が出た。記者が「今の気持ちを日本語で」と聞き、これに大坂は日本語で答えたが、試合がいかに大変だったかを日本語で話すよう言われると「英語で言わせていただきます」と言い、その後は英語で喋ったという。


 これに対しては「マスゴミ」批判的書き込みが相次いだ。「もうこれマスコミによるハラスメントだな」「大坂を苦しめるなクソマスゴミ」などだ。そして、この2つが真理を突いているかもしれない。


「マスゴミはサンコンさんレベルで微笑ましいと思ってるんだろ」

「要はテレビ映えのするたどたどしいナオミ節を撮ろうという魂胆が見え見え」


 昨年9月、全米オープン優勝後に来日した際は、テニスの話題とは関係のない「日本で何をしたいか」と質問し「原宿に行きたい」「ジェットコースターにも乗りたい」と喋らせ、サンスポの記事では「無邪気に答えた」と表現した。


 メディアの大坂への扱いの要点は以下3つだろう。


【1】「世界で活躍する日本人」を出し、自らも誇りに思いたい。

【2】語彙が少なく、きちんとした敬語ではない日本語を喋らせ「かわいらしいですね」とスタジオで言い合いたい。

【3】日本で行きたい場所や食べたいものを聞き、「日本をあまり知らない子のほのぼのとした様子」を見て歪んだ優越感を抱きたい。



 つまり、大坂のことは選手として超一流という点は押さえつつも、「天真爛漫で素直なかわいい子」と扱い、さらには「決して上手とはいえない日本語から珍発言を繰り出す」芸能人としての枠にハメようとしている。


 メディアの狙いには、日本語で喋らせることによって何か一つの流行語を作り出したいというものもあるだろう。「ちょっと疲れたけどぜんぜんOKネ」みたいな発言を大坂ならしそうだが、もしこう発言した場合、「職場で『ぜんぜんOKネ』を使う従業員が増加中」みたいな企画が出てきそうである。大坂は今回英語で答えたが、テニスとは関係のない部分で「おいしい」発言を取りたいと考える意図はすでに見抜かれているのかも。


 それにしても、「タレント性がある」「画(え)的においしい」がいかにメディアが求めるものかがよく分かるのが、バドミントン選手と大坂の扱いの差である。男子シングルスで桃田賢斗は世界ランキング1位で、女子ダブルスのトップ3はいずれも日本ペアだ。桃田は過去に賭博関連不祥事があり謹慎経験があるとはいえ、あまりに注目度が低過ぎないか。あと、美形ペアともてはやされた小椋久美子と潮田玲子の「オグシオペア」は世界ランクの最高位は6位だったが、現在のトップ3組よりも明らかに大きく取り上げられていた。


 スポーツをバラエティー番組化したいメディアの意図はもう世間ではかなり嫌われている。


●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など


※週刊ポスト2019年2月15・22日号

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