コインロッカーに遺骨放置で逮捕、「死体遺棄」になる理由

2月5日(日)16時0分 NEWSポストセブン

遺骨遺棄の裏にある現代社会の闇

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 1月14日、読売新聞の朝刊に《コインロッカーに妻の遺骨遺棄容疑》との見出しでこんな記事が掲載された。


《コインロッカーに妻の遺骨を捨てたとして、丸の内署は13日、千葉県市川市東菅野、弁当工場勤務鈴木照司容疑者(74)を死体遺棄容疑で逮捕したと発表した。


 同署幹部によると、鈴木容疑者は昨年9月30日、JR東京駅のコインロッカー内に妻の遺骨を納めた骨つぼを捨てた疑い。容疑を認め、「別の女性と一緒に住むことになり邪魔になった」と供述している。鈴木容疑者の妻は2014年8月に病死し、火葬後の遺骨を鈴木容疑者が自宅で保管していたという》


「遺骨でも死体遺棄容疑になるの?」と疑問に思った人も多いだろう。本題に入る前に、まずはその理由について解説したい。


 フラクタル法律事務所の弁護士・田村勇人さんは、刑法190条にある《死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する》を示しながら、こう説明する。


「正式には『死体損壊等の罪』で、報道では『死体遺棄』『遺体遺棄』などとも伝えられます。


 そもそも火葬後の遺骨は、墓地埋葬法に、墓地と認められている場所に埋めてくださいとの規定があります。ただそれ以外の記載がない。いつまでに埋葬しなさいということも書かれていないので、自分の手元に置いておくのは問題ありません。ただし自宅の庭や空き地などに勝手に埋めるのは違法となるわけです。


 これは多数人の精神的な嫌悪感を保護する法律だと考えられていて、例えば隣に住んでいる人が、ご主人が亡くなった後、その骨を庭に埋めたと言われたら、それはちょっと気持ちがいいものではありませんよね。そういう意味合いがあります」


 ただし、今回の事件に関してはこの墓地埋葬法とは関係がないという。



「あくまで刑法違反。JR東日本の駅構内に設置してあるコインロッカーの約款に、収容できないものとして『遺骨』と明記されています。禁止されているところに遺骨を置いたので、『遺棄した』となったわけです。


 とはいえ、こういったケースは、実際にはほとんどが不起訴となり、起訴されたとしても執行猶予がつきます」(田村さん)


 家族が遺骨を捨てるといった事件はここ数年、珍しいことではなくなった。その理由はさまざまだ。


 例えば2015年5月、東京都練馬区の無職の男(当時68才)が、警視庁石神井署に死体遺棄容疑で書類送検された。男は近所のスーパーの男性用トイレの便器内に妻の頭や顎の骨を捨てた。


「生前、苦労をかけられ憎んでいた」——そう言って容疑を認めた男。近年問題になっている「妻からのDV」に人知れず悩み、苦しんだあげくの復讐だったのだろうか。


 また老後破産や下流老人という言葉の実相をまざまざと見せつけられる遺骨遺棄事件もある。


 2011年8月、東京都小金井市の住所不詳、無職の男(当時60才)が父親の遺骨が入った骨壺をゴミ袋に入れ川に捨てたとして逮捕された。男はこんな供述をしていた。


「お金がなく埋葬できなかった。捨てるのが悪いとわかっていたが、住む場所がなく、持ち歩けなかった」


 終活が人生の大きなテーマとなっているなか、多くの人が深刻な墓問題に直面している。葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さんが言う。


「単身世帯で住まわれているかたが増えていて、65才以上だと25%。夫婦だけという世帯も31%。そんなデータが示すとおり、自分が死んだら誰に始末をお願いしようかと悩まれているかたは非常に増えています。


 また親が亡くなった場合、ちゃんと供養はしたいけれど、あまりお金をかけられない、お墓を作っても守っていけない、などという相談も非常に増えています」


 一口にお墓といっても、今は永代供養墓、樹木葬、合葬墓など、その様式は多岐にわたり、最近では送骨という手段も注目されている。



「送骨とは、遺骨を寺院などに送って、納骨・供養してもらう葬送方法。ゆうパックでの郵送費用を含めて料金はだいたい3万〜5万円です」(吉川さん)


 散骨も増えているが、これは法律的には“グレー”だと、前出の田村さんは指摘する。


「法律では散骨に関する記載がありませんが、形式的にいえば違反です。しかし『節度を持って行う限り違法ではない』との見解が示されていると主張する人もいます。これだけ散骨が行われているのに、取り締まらないことからも、黙認されているというのが現状です。ただし自治体によっては条例で散骨を禁止している地域もあります」


 例えば静岡県熱海市。観光地としてにぎわう沿岸部に、喪服の人が重複して並ぶ姿が異様だと抗議を受けたことが発端となり、沖合10km以内の散骨は自粛するようにとの規制がある。


 前出の吉川さんは、「結局、遺骨をどうするかについては、生前の関係で決まってくるように思う」と見ている。


「よほどのことがない限り、大切な人が亡くなったら、なんとか供養をしてあげたいと思うものではないでしょうか?


 納骨は、場所やスタイルにこだわらなければ、5万円前後でもできます。そういった方法もわからなくて、すぐにまとまったお金が用意できない場合は、葬儀社、石材店、仏壇などの業者や寺院に相談してみてください。それぞれ連携しているので、最適な方法が見つかると思います。自分に何ができるか、故人との縁をどうつないでいくかという視点を忘れずに」


※女性セブン2017年2月16日号

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