恋愛と性的感情がない人の人生を変えた特別な男性との出会い

2月5日(火)7時0分 NEWSポストセブン

パートナーとは「信頼に基づく家族関係」だと語る和泉さん(撮影/清水通広)

写真を拡大

「私は生まれてこのかた、自分を女性と思ったことがなく、20才までは男性だと信じていました」


 明るく話してくれたのは、美容ライターの和泉直さん(30才)。アロマンティック・アセクシャルであり、女性として生まれてきたが、自身のことを男性として認識しているXジェンダーでもある。アロマンティックとは「他者に恋愛的に惹かれることがない人」を意味し、「アセクシャル」とは「他者に性的に惹かれることがない人の総称」だ。


 和泉さんは幼い頃から女の子の輪にうまくとけ込めず、集団から浮きやすかったため、学校で嫌がらせを受けることも多かった。友人として仲よくなるのはほぼ男性で、友達だと思っていた男性から告白された時は傷ついたという。


「自分が女性として見られていると知ってショックでした。“友達じゃなかったんだ”って。その頃は、自分を男だと思って男性と接していたので、女性からは『男に媚びを売っている』と嫌われ、『女としての自覚を持たないと社会に出てからやっていけないよ』と忠告されたこともあります。そうしてやっと、女性と男性は、どうやら違うものらしいと頭で理解できました。魂が宿る容れ物(身体)が違うだけではなかったのか、と」(和泉さん)


 自分は女性であると意識し、メイクしたり、こまめに美容室へ通ったり、スカートをはいて女性向けファッションを身につけ始めた和泉さん。しかし、いくつになっても「恋愛感情」とは無縁だった。


「男性に対して『いいな』と思うことはあっても、それは、『あんな筋肉ほしいな』というような憧れでしかないんです。性的な欲求はなく、“抱く、抱かれたい”という意味がわかりませんでした」(和泉さん)


 どうすれば恋愛感情や性的欲求がわくのかと周囲の人に尋ねたり、告白された相手と実際に交際してみたこともある。心理学の本も片っ端から読んだが、理解に苦しんだ。誰かと恋愛関係になってみたいという願いは果たされることなく、その先にある結婚や新たな家庭を築くことも諦めていた。


「もう、ひとりで生きるしかない」とひそかに決意していた和泉さんだが、約4年前、1人の男性と出会った。和泉さんのセクシャリティーを知っても彼は何も言わず、普通に接してくれた。


「それが何とも言えず心地よかった。食事をしていても、おいしいと思うタイミングが同じで、ふとした言葉がかぶったりして、それまでに経験したことのないシンクロ感でした。将来、彼と疎遠になるのは寂しい、できるなら一生そばにいたいと思ったんです。さまざまな覚悟を決めて、私から『家族になりませんか?』と提案しました」(和泉さん)


 彼は、和泉さんの提案を受け入れた。東京都では戸籍上異性のパートナーシップが認められていないため、現在は別世帯で同居するルームシェアの状態だ。「夫婦」という関係には違和感があり、入籍はせず、あくまで信頼に基づく家族関係だという。



「彼はいわゆるヘテロ(異性愛者)。もしかしたら、自分はデミセクシャル(親密になった相手にのみ性的感情が生まれるセクシャリティー)かもしれないと期待もしたけれど、違いました。


 ただ、彼の方が性的な関係や子供を望んだら、自分はできる限り応えようと覚悟していました。でも、彼にもそんな希望はなく、『一緒にいて安心できる人がほしい』と言ってくれたんです。性行為自体は試したこともあって、結果、行為そのものはできたのですが、私の中には虚無感しか生まれなかった。『これは、私たちには必要じゃないね。それよりも、おいしいご飯を食べに行こう』という話になりました。私たちにとっては、おいしいものを一緒に食べて、感情を共有する方が幸せなんです」(和泉さん)


◆共通の話題がほしかった


 もちろん、理解しづらい人もいるかもしれないが、和泉さんとパートナーが強い絆で結ばれていることは間違いない。


「彼とは、お互いになんでもさらけ出せます。お風呂も一緒に入りますよ」と、笑う和泉さんに、「恋愛がしたかったと思いますか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきた。


「恋愛したかったというより、みんなと共通の話題がほしかったです。私はずっと『あいつは変だ』と言われ続けてきたので、“普通”になりたかった。でも今は、社会的な『普通になる』という形ではなく、自分のあるがままを受け入れてくれる彼と出会えたことに、とても運がよかったと感じています。過去のつらい経験も、きっと彼に出会うための運をためていたんだと思っています」(和泉さん)


 長い苦しみの先に出会った明るい光──彼のことが大好きだという思いが伝わってくる。


「彼との間にあるのは親愛であり敬愛であり、友愛でもあり、いろんな愛情です。ふたりで一緒にいる未来が想像できるから、不安がまったくないし、お互い『どっちが先に介護するかな』と当たり前のように話しています。彼と暮らすようになって、やっと自分はアセクシャルだとためらわず言えるようになったし、“女性”に生まれてきたことも肯定できて、母に初めて『産んでくれてありがとう』と言えました」(和泉さん)


 世間での一般的な男女とは違うかもしれないが、ひとつの揺るぎない愛の形だ。いつの時代も、どのような人にとっても、“恋”に悩みはつきもの。あなたの大事な人に、あなたなりの愛の形は伝わっていますか?


※女性セブン2019年2月14日号

NEWSポストセブン

「恋愛」をもっと詳しく

「恋愛」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ