新たな実験的なライブイベント「エースク」主催者が語るアニソンシーン

2月6日(土)16時0分 おたぽる

“アニソン”でつながったアーティストやアイドルが大集合した「エースク」。

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 アニメソング(アニソン)なら何でもアリ! 影山ヒロノブ、遠藤正明、angelaといったアニソンを専門に歌うアーティストから、i☆Ris、A応P、アフィリア・サーガ、アイドルカレッジなど、“アニソン”でつながったアーティストやアイドルが一堂に会したイベント、「LIVE A2 2016 -アニぱら音楽館×A-POP PLUS-」(読み:ライブ エー スクエアード 2016。以下、エースク)が、東京・豊洲PITで1月17日に行われた。

 前代未聞のセットリストの事前公開でも話題になったエースク。観客とアーティストが一緒に歌う企画も用意され、その今までにない会場の一体感に、アーティスト自身も大興奮。観客参加型であるこの新しいイベントの背景には、現在のアニソンシーンの縮図が描かれているという。それを紐解くため、主催者であるこども・アニメ専門チャンネル「キッズステーション」の竹内誉人氏と、アニメ専門チャンネル「AT-X」の濱田啓路氏と、にインタビューした。

■紅白で石川さゆりが歌った「残酷な天使のテーゼ」は、昔だった考えられない

——はじめに、今のアニソンはどのようなものなのか、アニソンの現在地を教えてください。

竹内誉人(以下、竹内) アニメというのが出てきて、それに付けられた主題歌を歌っていた、水木一郎さんや、ささきいさおさんなどが第一世代だと思います。ちょうど、今のアニソンのライブや番組の作り手が、子どもの頃に聞いていた人たちですね。当時は、作品に即した歌が作られていました。

濱田啓路(以下、濱田) 歌詞にタイトルが入るとかね。

竹内 そういうのがアニソンの最初だと思います。昔は歌謡曲ベースだったものが、80年代の中盤にきて、影山ヒロノブさんや、若手だと遠藤正明さんとか、わりとロック系のアーティストが歌うようになりました。そして、90年代くらいになると、アニメが製作委員会方式で作られるようになります。その時期の代表的なアニソンのひとつが、『るろうに剣心』のJUDY AND MARYによる「そばかす」だったんじゃないかな。その後、みんながアニソンとして認知しているけど、実はJ-POPですよという作品がけっこう出てきてました。その時に、今まで音楽と作品の関連性があったアニソンが、J-POPのタイアップソングになってしまったといえますね。

濱田 『鋼の錬金術師』とか、あの辺ですよね。

竹内 ただ、今は作品と根付いたもののほうが、曲として長く愛されるということもあり、J-POP系アーティストの楽曲も、作品に即して作られるようになってきました。言ってみれば、昔のアニソンとまったく変らないものに戻ったのかなという感じがしますね。

濱田 音楽全体で見ても、今、チャートに入っている曲は、けっこうアニソンが多いですよ。かつて、歌謡曲が流行ったり、ニューミュージックが出てきたり、それがJ-POPになったりして来た。その流れの中でアニソンというジャンルの存在感が増してきている。

——今回のエースクにもアイドルが出演されていましたが、今は、アニソンを歌うアイドルも増えましたよね。

濱田 今話したような流れの中で、アニメの文化が昔とくらべて力を持ってきたので、アイドルがアニソンを歌うようになったのは、自然な流れなのかも知れません。

竹内 若いアーティストが、子どもの頃からアニソンを聞いて育っているので、「アニメだから」というのを考えずに、音楽として聴いて育った世代が、リアルにアーティストの世代になってきているんです。アニソンが一般化してしまっているということですよね。

濱田 アニメオタクとそのほかの人との境目がきっちり分かれているのではなく、多くの人がオタク的な要素を持っているのだと思います。

竹内 『新世紀エヴァンゲリオン』が誕生したのは「最近じゃん」と思っていたけれど、1995年だからもう20年が経っちゃったんですよね。去年末に、『第66回NHK紅白歌合戦』の特別企画「アニメ紅白」で石川さゆりさんが「残酷な天使のテーゼ」を歌いましたが、昔だったら考えられないことでした。

——では、アニソンは今後、どのような発展を遂げていくと思いますか?

濱田 何でもアリだと思いますね。

竹内 たまたまいろいろな音楽のジャンルがあって、それが主題歌になったら、アニソンと言われるだけなので。

濱田 音楽の種類で分けたジャンルじゃないんですよね。ロックやジャズやポップスという分け方を越えて、「何でも来い!」って思います。

竹内 昔は、歌謡曲からロックっぽいものが多かったんですよね。バンドものも多かったです。ただ、それ以外にも、いろいろなジャンルの音楽が入り込んできていて、何でもありになってきていると思うんですよ。

濱田 だから、アーティストにとっては面白いフィールドだと思います。

■海外で起きている現象を日本に“逆輸入”

——エースクには、幅広いジャンルのアーティストが出演されていましたが、アニソン的にみて面白い部分はどのようなところになるのでしょうか。

竹内 今回は声優がいて、アイドルがいて、アニソンを歌うアーティストがいて……というライブでした。わりと日本だと、アイドルオタクとアニメオタクは、ファン同士も別物だという認識があったり、そもそも文化的にも違う発展をしてきていたりするのですが、今、海外では、アイドルというアイコンとアニメというアイコンは、日本を語る上で外せないサブカルチャーで、同じものとしてみられています。海外ではひとつのもののように盛り上がっているんです。だから、日本でもアイドルとアニソンを一緒にやっても盛り上がるのではないかというのが背景にありました。まずそれを実験的にやってみようというのが、最初のきっかけだったんです。

 ただ、今回出演したアイドルは、アニメの主題歌などを歌っているので、そこは大きなくくりで言うとアニソンなんですよ。でも、アイドルの中でも、声優アイドルのi☆Risさんのファンのノリと、アフィリア・サーガさんやA応Pさんなどアイドルファンのノリが、微妙に違うんですよね。

——会場の雰囲気はいかがでしたか?

竹内 “アニメ好き”という共通言語があると思います。ただ、そこから発展して分岐していったものが、キュッと大きな枠の中に入って、一緒にやったら、もっと楽しめたというのが今回のライブだったと思いますね。

濱田 一部の人たちしか盛り上がらないということはなくて、みんなでわっと盛り上がっていた印象です。

竹内 アニメ好きな人は、みんなで楽しもうという思いがあるので、知らない曲でもみんなで盛り上がるんです。いろいろなアーティストが出演するライブだと、自分の推しのアーティスト以外は出て行ってしまうというのもあったりするのですが、アニソンのライブは、出演者が出ていれば、お客さんもずっとそこにいますね。

濱田 エースクも、4時間ずっと盛り上がっていましたね。

——みんなで楽しむという点では、エースクには「歌え俺達!オレライブ!!」という企画がありましたね。

竹内 「オレライブ!」は、もともとさんが、そういう企画をやっていたんですよ【編注:「オレライブ!Vol.0」は、2015年7月5日に開催】。彼らは、いろいろな楽曲をコピーして、ニコニコ動画にアップしていたことからデビューしたバンドですが、アニソンなどをみんなで大合唱したいというお客さんの要望がけっこうあったそうです。

 それで、自分たちがコピーするだけでなく、お客さんも含めてボーカルとして参加にするということをやったらどうなるのだろうということで、実験的に「オレライブ!」というのを始めました。それを今回のライブに入れたんです。やはり、聴くだけでなく、ライブにお客さんが参加するようなことは、まだあまりほかではやっていないので、そこで差別化できたらいいなと思いました。

——実際に拝見しましたが、会場がすごく盛り上がっていて、すごかったです。

竹内 アーティストにはお客さんの歌声がもろに聞こえるので、アーティスト自身も盛り上がっていましたね。会場ではアーティストの声の方が上回ってしまいましたが、理想的だったのが、遠藤正明さんが「勇者王誕生!」のサビをお客さんに振って、お客さんが「ガガガッ ガガガッ ガオガイガー!」と歌った時のハーモニーでした。お客さんも歌って、アーティストも歌って、本当に会場が一体となっていました。

■アニソンアーティストとの“共演”の夢を、疑似体験できるライブ

——エースクはセットリストを事前に公開し、話題になっていましたが、そういうことにつながっていたのですね。

竹内 わりとみんなが知っている曲を選んではいましたが、知らない人も、こういうのを歌うんだとわかれば、予習できますよね。アーティストがセッションするときもそうなのですが、その曲を聞き込んで、自分ものにして歌うんです。だから、お客さんもいちボーカリストという感じでやれたら面白いんじゃないかなと思いました。

濱田 あと、アーティスト系の方も、アイドルの方も出演しているということで、コラボというのをもっとはっきりさせようという意図もありました。たぶん、既存のライブイベントよりも、コラボの割合は高かったと思います。だから、「歌え俺達!オレライブ!!」も含めて、そういうことをまず先に、お客さんにお知らせしたかったというのがありますね。「あのアーティストとアイドルでこんなことをやるんだ、どうなるんだろう?」というのを、期待してほしかったんです。

——アーティスト自身も喜んでいましたね。特に、中川翔子さんがとても嬉しがっていたのが、印象的でした。

濱田 そうですね。影山ヒロノブさんと一緒に歌えて、中川翔子さんもすごく盛り上がっていましたね。彼女が盛り上がっているのをみていると、ファンも楽しいし、嬉しいのでとてもよかったと思います。

竹内 出演していたアーティスト自身も、自分が子どもの頃に観ていたアニメの主題歌を憧れのアーティストと並んで歌える喜びがあったと思います。「歌え俺達!オレライブ!!」は、いつかは自分も一緒に並んで歌いたいという夢を体験できるという意味でも面白い企画だと思います。ライブでお客さんは見る側に徹するので、自分が歌って、自分が主役になるというのは、今までのライブではあまりないですよね。

——あまりないという点では、会場には、オタ芸を打つエリアも設けられていましたよね。

竹内 アイドルとアニソンを一緒にやるからには、両方のお客さんがいるので、オタ芸で盛り上がれる専用の“ハイテンションエリア”を作りました。紳士的なファンが多いので、専用のエリアを設ければ、それをちゃんと守ってくれますからね。

濱田 エリアの中で、みんなお互いにハイテンションで盛り上がっているけれど、ぶつからないという、とても紳士的なエリアでした。

竹内 みんな、なれているから上手いんですよね。それを見てもまた楽しめるかもしれない。オタ芸を打っている人たちを見ているとすごいと思います。それだけでも、ライブとして成立するのではないかと思うくらいですよ。でも、こうしたエリアを設けることで、じっくり見たい人には邪魔にならないし、オタ芸を打って盛り上がりたい人は思いっきり好きな動きができるから、そういうのがいいですよね。そういう空間を楽しみたい人たち同士で、また仲間が増えていく訳ですし。

濱田 「アニソン好きな人は、みんな来い!」というイベントなので、アニソン好きも、アーティスト好きも、オタ芸をやりたい人も、みんな楽しんでもらえるイベントだったと思います。ライブも、セットリストを公開していた一方で、もちろん、サプライズもあったから、程よいバランスだったのではないでしょうか。

■『おそ松さん』のエンディングは、アニソンだから成り立った曲

——アニソンが専門のアーティストから、アイドル、声優と幅広いアーティストが出演していたエースクですが、特に今のアニソン業界を象徴している方はいらっしゃいますか?

竹内 象徴的なのは、A応Pさんだと思いますよ。彼女たちは、本当にアニメが好きで、自分たちがアニメを応援するというファンの立場に近いところから活動してきたのですが、『おそ松さん』をきっかけに、歌が作品と一緒に人気になって、この半年で一気に化けましたね。

濱田 「歌え俺達!オレライブ!!」のコラボで、流田Projectさんのお面をもらったA応Pさんたちのメンバーがとても喜んでいて、演出で会場のみなさんに投げてくださいと言われて、最初は嫌がったんですよ。私のがなくなるって(笑)。あとでもう一枚もらっていましたが。彼女たちは本当にファンと立場を共有しているんですよね。

竹内 彼女たちは『おそ松さん』人気もあって、この半年でだいぶ変わったんじゃないかな。変らないのは、本人たちがアニメ好きというところですが、波に乗っているときのオーラというか、雰囲気というのがあるんですよね。華やかな感じがあるんです。たぶん、今が一番楽しいときじゃないですかね。

——彼女たちのブレイクの要因は、どのようなところにあったのでしょうか?

濱田 本当に作品が好きなんですよね。オンエアもタイムリーに観て、ツイートしているんですよ。

竹内 『おそ松さん』がネットで話題になって盛り上がったとき、同じように盛り上がっているのが、A応Pさんなんですよ。彼女たちはアニメが好きだから、ファンと一緒に盛り上がっているんです。そこが、うまいこと合っていたのだと思います。

濱田 流田Projectさんもそうですよね。アニソン好きで、自分たちが演奏していたというところでは、同じスタンスなのかな。

——それでは、最後に、エースクが考えるアニソンとは何でしょうか?

竹内 アニソンは組み合わせも自由だし、何でもありなジャンルになってきていているので、異種格闘技化してきたと思います。今回も、アーティストがいて、アイドルがいて、異種格闘技戦ですよね。

濱田 異種格闘技だけど、それがひとつのジャンルになっています。何をやってもいいので、可能性は無限大だと思います。

竹内 本当にそうですよね。ほかの歌だと、演歌は演歌というように、わりと曲調などが同じになりますが、アニソンだったら、何を試してもOKですし、どんなものを融合してもOKなんですよね。

濱田 例えば、『おそ松さん』のエンディング【編注:「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」、「SIX SHAME FACES 〜今夜も最高!!!!!!〜」】なんて、普通にああいう曲は出せないですよね。ああいうラップというより、ほとんどトークに近いものでも成り立っている。アニソンはそういうジャンルですよね。

——本当に、可能性が広いですね。

竹内 可能性でいうと、昔からあったと思います。そこをもっと自由に解釈すればいいというところでしょう。今、いろいろなイベントがある中で、差別化していくときに、捉え方をもうちょっと柔軟にして、何でもアリでいいのではないかというコンセプトでやったのが、エースクですね。よりお客さんが参加できるような、参加型で物事を考えたりとか。

——では、次回についても、もう何か考えていたりしているのでしょうか?

濱田 今は終わってほっとしているところですが、この形で発展していくのがいいのかなと思っています。

竹内 当初は、コラボに重きを置いていた訳ではなく、ひとつのライブで、いろいろな企画を魅せられればいいなという話をしていたんですよ。もちろん、アイドルのコーナーもあり、お客さんが参加できるコーナーがあり、遠藤正明さんが20周年なので、そのお祭りがあったりと、どこを見てもおいしい企画で全部構成すれば、お客さんが来てくれるのではないかと。だから、アニソンシーンの縮図をそのままライブにしちゃったら、どうなんだろうというところでしょうね。
(取材・文/桜井飛鳥)

■キッズステーション『LIVE A2 2016 -アニぱら音楽館×A-POP PLUS-』放送予定
2月19日(金) 23:00 アニぱら音楽館 LIVE A2-SQUARED 2016 Part1
2月28日(日) 23:30 アニぱら音楽館スペシャル LIVE A2-SQUARED 2016
3月 4日(金) 23:00 アニぱら音楽館 LIVE A2-SQUARED 2016 Part2
3月18日(金) 23:00 アニぱら音楽館 LIVE A2-SQUARED 2016 Part3
※2月28日は90分スペシャル
※そのほか、リピート放送あり

おたぽる

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