史上最高の「大河ドラマ」総選挙ベスト20

2月6日(木)11時0分 NEWSポストセブン

『麒麟がくる』はまずまずのスタートを切った

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 主役級のキャストがずらりと揃い、緻密な脚本と豪華な演出で歴史という“大河”を1年かけて描く。NHK大河ドラマは1963年の開始以来、「テレビドラマの最高峰」で在り続けている。では歴代作品のうち、そのナンバーワンは? 大河ファンの本誌・週刊ポスト読者1000人が選んだ──。


◆将棋で秀吉の本質を描く


 59作目になる大河ドラマ『麒麟がくる』は、ヒロイン・沢尻エリカの降板で例年より遅い1月19日からのスタートとなったが、視聴率は20%近くを維持し、放送後の評判も上々だ。


「前作『いだてん』が近代の設定だっただけに、『麒麟がくる』のド派手な合戦シーンに“これぞ大河!”と興奮しました。主人公・明智光秀(長谷川博己)の清廉さと主君である斎藤道三 (本木雅弘)の残酷さが好対照で、やはり大河は別格だなと再認識しました」(58歳自営業)


 しかし、『麒麟がくる』が今後比較されるであろう過去の名作の輝きは、あまりにまばゆい。


 読者が選んだ1位は39.7%の歴代最高平均視聴率を記録した渡辺謙主演の『独眼竜政宗』(1987年)だった。


「かわいかった梵天丸 (主人公・伊達政宗の幼名)が病で“独眼竜”になりながら逞しくなっていく様子に胸が躍りました。渡辺謙さんを見たのはこのドラマが初めてでしたが、まさかこんな大物になるなんて!」(65歳会社員)


 梵天丸が不動明王像を前に言う「梵天丸もかくありたい」という言葉は流行語になり、真似する子供が続出した。


 梵天丸を演じた藤間勘十郎氏は現在、39歳。当時の撮影をこう振り返る。


「そのセリフは撮影当時とくに思い入れもなく、あんなに反響を呼ぶとは思ってもみませんでした。印象に残っているのは、お父様(伊達輝宗)役の北大路欣也さんと馬に乗るシーンです。僕は乗馬をしたことがなく、さらに鞍ではなく馬の首にしがみつかなければいけなくて怖かったのですが、北大路さんが自分と僕を見えないように紐で括りつけて『これだったら絶対に落ちないから大丈夫』と言ってくださって何とか撮影できました」


 秀吉を演じる勝新太郎と若き日の政宗の対決も見物だった。百姓一揆を煽動したとされる「鶺鴒の花押」(せきれいのかおう)事件で、嫌疑をかけられた政宗が秀吉に呼び出されて上洛する。


「久々に見た勝新がとんでもない大物オーラを放っていて、画面に釘付けになりました」(60歳会社員)


 勝は緊張感を高めるために、このシーンの収録まで渡辺に一切会わなかったという。脚本を担当したジェームス三木氏が当時を振り返る。


「首元にいきなり采配を突きつけたのは、勝さんのアドリブ。あれには驚いた。秀吉と政宗の腹心が将棋を指すシーンもありましたが、実は勝さんとは彼の事務所でよく将棋を指していたんです。なかなか強くてね。それで将棋のシーンを思いついた」


 秀吉は王将と角、歩しか持たず、「代わりに自分だけ三手進める、どうじゃ」と持ちかけ、三手で相手の玉を取ってしまう。「将棋を通して秀吉の本質を描こうとした」(ジェームス氏)という。


 


18位の『八代将軍吉宗』(1995年)もジェームス氏の脚本だ。徳川御三家・紀州藩の四男で、将軍になるはずのなかった吉宗(西田敏行)が運命のいたずらで将軍の座にのぼりつめる。


「平和な時代を描くのは難しいんだよ(苦笑)。女性や幅広い年齢層に見てもらうために、ホームドラマの要素も取り入れました。質実で明るい吉宗を、西田が見事に演じてくれた」(同前)


◆「本能寺の変」を2か月延期


 黎明期の大河ドラマを「国民的ドラマ」の地位に引き上げたのは、7位に入った『赤穂浪士』(1964年)だ。


「討ち入りの日に、長谷川一夫演じる大石内蔵助が『おのおのがた、かねての手はず忘れぬよう……』と言った台詞は今でも記憶に残っています。学校でもみんな真似して、ちょっと鼻にかかった声で『おのおのがた』って言ってたなぁ」(66歳自営業)


 翌1965年の『太閤記』も6位にランクイン。


「秀吉というと“猿”のイメージだけど、緒形拳の真っ直ぐで、カッコいい秀吉が大好きだった」(72歳無職)


「炎と白煙に包まれた部屋のなかで、白装束に身を包んだ信長(高橋幸治)が自害するシーンが鮮烈だった」(75歳自営業)


 まだ文学座研究生だった高橋演じる信長の人気はすさまじく、「信長を殺さないで」という投書がNHKに殺到。本能寺の変の放送が2か月も延期されたという。


 秀吉をテーマにした作品では、竹中直人演じる『秀吉』(15位・1996年)も人気が高かったが、こちらも主役以上に注目が集まったのは信長だった。


「渡哲也の、言葉ではなく表情だけで相手を震え上がらせるような雰囲気はさすが。本能寺の変で『神が死ぬか!』と叫びながら刀で首元を切るシーンには息を飲んだ」(55歳会社員)


 大河ドラマといえば、その時代をどう描くかにも注目が集まる。『秀吉』の時代考証を担当した、歴史学者で静岡大学名誉教授の小和田哲男氏がその舞台裏を語る。


「『秀吉』では、洪水によって石垣が壊れた清洲城を秀吉が修理するシーンが出てくる。修理箇所を10箇所に分けて作業員を競わせ、工事の効率を上げるという秀吉の切れ者ぶりを表わすエピソードですが、『信長時代の清洲城に石垣はない』ことをNHK側に伝えたところ『土塁や土塀では迫力が出ない』と。議論した末、『将来的には石垣が発掘される可能性もある』として私が妥協する形になりました(笑い)」


 史実と創作のせめぎ合いが名シーンを生んだ。


◆『龍馬伝』の映像革命


 大河には女性の存在も欠かせない。女性が初めて単独の主人公となった佐久間良子主演の『おんな太閤記』(14位・1981年)、大原麗子の代表作ともなった『春日局』(19位・1989年)など、女性が単独主人公の大河は10本あるが、その中で最も支持を集めたのは宮崎あおい主演『篤姫』(4位・2008年)だ。


「篤姫に会えないまま、夫の徳川家定(堺雅人)が息を引き取る場面は、夫婦でティッシュを奪い合いながら見ていた」(54歳会社員)


 近年の大河のなかで、「映像面で従来とは違う新機軸を打ち出した」(ドラマ評論家の成馬零一氏)と評価が高いのが3位にランクインした『龍馬伝』(2010年)だ。


「画面に砂煙が舞っているような特徴的な映像を作ったり、生々しさや臨場感溢れる映像によって作品のリアリティが増しました」(同前)


 一方、ストーリーの新しい見せ方が話題になったのが2位にランクインした『真田丸』(2016年)。


「三谷幸喜脚本で、戦国モノながら戦いの場面はあまり描かれず、議論のシーンのほうが多かった。台詞の掛け合いや主人公たちの心の動きを楽しめるものだった」(同前)


 2022年に放送予定の大河『鎌倉殿の13人』でも三谷氏が脚本を務めることが発表されている。


 現在放送中の『麒麟がくる』は、歴史上では「悪人」として描かれる明智光秀が主人公なだけに今後どのようなストーリーになるのか注目を集めている。同作品の時代考証を担当している前出の小和田氏が言う。


「光秀は謎の多い人物ですが、彼が書いた文書(手紙)のなかには、戦でケガを負った家臣に対して『傷の具合はどうだ?』『良い薬があるから送る』といった内容のものが多い。私は戦国武将の文書を何千通も読んできましたが、光秀ほど家臣に労りの声をかけた武将はいません。脚本家の方には光秀の人間像がわかるエピソードを伝えてあります」


 過去の名作を超える傑作になるだろうか。


※週刊ポスト2020年2月14日号

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