バイプレイヤーの泉 第149回 面白すぎて一挙手一投足から目が離せないぞ、宇垣美里
2025年2月8日(土)6時0分 マイナビニュース
コラムニストの小林久乃が、ドラマや映画などで活躍する俳優たちについて考えていく、連載企画『バイプレイヤーの泉』。
第149回はタレントの宇垣美里さんについて。TBSの局アナ時代からじわじわと彼女に興味があった。朝の情報番組でも他のアナウンサーに比べて対応にソツがないし、ぶりっ子味はないし、異常に可愛い。エースアナになるのかと思いきや、ちょっと目を離していた間に局を退社、タレントになっていた。なんだろう、この人の「あ、この領域には絶対に踏み込めない」と思わせる雰囲気は。
○タレントか? 女優か? はたまた……?
テレビ局の社員アナウンサーが退職をすると、いくつかの進路がある。『セント・フォース』に所属するタレント路線、もしくは現在『サンデーモーニング』(TBS系)の司会を務める膳場貴子のような、アンカー路線。加えて(なかなか成立はし難いが)、田中みな実のような女優路線。私の推測ではこの3パターンを想定する。
さて宇垣さんはどうなるのか。
2019年、担当していたラジオ番組で退社宣言後に、オスカープロモーションへ所属。まずは王道の美が集結する芸能事務所へと、身を置いた。当時、あれこれと自分の趣向をメディアに披露していた。美容に詳しい、漫画や読書が好き、文筆が得意。冒頭の美容が好きだというフレーズで、この人はTBS局アナの先輩である田中みな実路線に行きたいのかと思った。実際に彼女は2021年に『彼女はキレイだった』(フジテレビ系)でドラマデビューもしている。活動ぶりを俯瞰で見ても、フリーアナウンサーとしての面目躍如……といって、間違いはない。ただこの様子が次第に変化してくる。
○本音がひたすら並ぶ公式YouTube
時系列が前後するが、宇垣さんはフリーになった直後から素人ではとても手の出せない、コスプレで露出するようになった。アニメや漫画好きが高じてらしいが、とんでもない完成度であったことは、検索して見てほしい。他にも理不尽な相手を目の前にすると、腹の中で自分はマイメロだと設定して「私はマイメロだよ〜☆ 難しいことはよく分かんないし、イチゴが食べたいでーす」そう考えてストレスを防御するという独特の理論も披露。
相変わらず可愛いのに、言動がハードボイルドすぎる。彼女の生き様を解剖するのは、私みたいな凡人には厳しい。それでも気になる存在であると、ずっと心の片隅に置いていたら、最近、彼女がついに公式YouTubeを始めた。なんとここに今まで感じていた疑問や、違和感の回答例が並ぶ。
SNSは面倒でできない、文筆は締切があるから書くことができる、など。局アナ時代のことにも触れている。反りの合わないプロデューサーからもらったコーヒーを
「あなたからもらったものを飲むことはできないですね」
と、目の前で捨てた事件を「若かった」と言っていた。ああ、わかる。私も同じようなことは何度も繰り返した。そして今は年齢を重ねて、逆に"される"立場になってわかるのは、人はそんなに変わらないということ。だからといって今、コーヒーを捨てることはない。でもそういう今の自分も加味したうえでの発言なのだろう。
○自己肯定感があって忘れっぽいという最強説
さらに自己肯定感があるとも続ける。ちなみに自己肯定感とは「自分を肯定する、好きになる!」ではなく「まあ、いっか」「どうにかなる」と思える力のこと。それだけではなく「忘れっぽい」とも言っていた。厄介なことを流すことも、忘れることもできるのは本当に強い。職業柄、無駄に多くの人と会ってきた私には分かる。ふつうの人がなかなか持ち合わせないものをダブルコンボで持っているからこそ、私は理由もなく、直感で彼女がうらやましく見えた。だから記憶に残ったんだろうと、溜飲が下がる。
そして配信のラストに彼女は芸能界にいる理由を
「向いているから」
「顔がいいっていうのはある」
と、表現していた。見た目以前に、彼女は才女でもある。もっと頭脳班としてキャリアを構築しても良いのに、自分の可愛さをしっかりと利用している。要は自分観察、管理がよくできている人なのだろうと思った。
美女至上主義といった風潮はもてはやされなくなった。ただ可愛いい、美しいは副産物化していて、当の本人が面白い人物像でないとこの世は淘汰されてゆく。宇垣さんはその見本のような生き方を一足先に会得していた。
今後も彼女の一挙手一投足に、ますます反応してしまいそうだ。
小林久乃 こばやしひさの エッセイ、コラム、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。自他ともに認める鋭く、常に斜め30度から見つめる観察力で、狙った獲物は逃がさず仕事につなげてきた。30代の怒涛の婚活模様を綴った「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(KKベストセラーズ)を上梓後、「45センチの距離感」(WAVE出版)など著作増量中。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k この著者の記事一覧はこちら