解散の激震から1年余、 SMAPのベストヒットを探る!「臼井孝のヒット曲探検隊 ~アーティスト別 ベストヒット20」

2018年2月8日(木)18時0分 OKMusic



CD、音楽配信、カラオケの3部門からヒットを読み解く『臼井孝のヒット曲探検隊』。この連載の概要については、第1回目の冒頭部分をご参照いただきたい。ただし、前回の安室奈美恵からは2017年末までのデータを反映している。

不遇な時代を送った デビュー当時

2016年12月31日、多くの音楽ファンから惜しまれつつも解散したSMAP。その直前となる12月21日に発売された3枚組ベストCD『SMAP 25 YEARS』は、累計約120万枚のセールスを記録し、あらためて国民的なアイドル・グループであることが示された(ちなみに、同年12月28日発売の全シングルの映像をまとめた『Clip! Smap! コンプリートシングルス』も約50万枚の売上で、さらにベストCDがレンタルにも出荷されていることを考慮すれば合計200万枚規模のヒット現象が起こったと言える)。

そんなスーパー・グループの音楽面における遍歴を辿ってみたい。彼らは1991年9月9日(←この影響からか、彼らの96年までの6人組時代は、ゾロ目発売日が非常に多い)にシングル「Can't Stop!! -LOVING-」でデビューするも、当時はバンド・ブームやシンガーソングライターのドラマ主題歌などによる大型タイアップなどでメガヒットを飛ばしていた煽りを受け、アイドルの人気はいわゆる“氷河期”に突入していた。より正確には、3M(宮沢りえ観月ありさ、牧瀬理穂)と呼ばれる3人のタレント活動は大盛況だったし、小泉今日子や中山美穂などドラマ主演と主題歌を兼ねたアイドル出身の女性歌手はサバイブしていたのだが、音楽主体の作品となると大きなヒットはなく、SMAP自身も、80年代に少年隊、光GENJI、男闘呼組と華々しくオリコン1位を連発してきたジャニーズ勢の後輩としてデビューした影響は薄く、シングルがTOP10に入るのがやっとという状況が続いていた。

バラエティー番組『夢がMORI MORI』で本格的なコントに挑戦したことにより 一般層にも知名度が浸透!

そんな中で、バラエティー番組『夢がMORI MORI』へのレギュラーが決まり、アイドルながら本格的なコントに体当たりで挑戦したことで一般層にも知名度が浸透、これに伴いCDセールスも徐々に上げていき、1994年の12作目のシングル「Hey Hey おおきに毎度あり」で初のシングル1位を獲得。以降は、2000年の31stシングル「Let It Be」を除きTOP3級のヒットをキープ(ちなみに、「Let It Be」の発売週は、1位が大ヒットドラマ『ビューティフル・ライフ』主題歌のB‘z「今夜月の見える丘に」、2位がサザンオールスターズの「TSUNAMI」3週目、3位が30万枚限定シングルの大半が初週で売り切れ続出だった頃の浜崎あゆみ「Fly High」で、SMAPは20万枚を超えるハイレベルな4位だった)。特に2002年の34thシングル「freebird」から2015年9月発売の55thシングル「Otherside/愛が止まるまでは」まで初登場1位をキープしてきた。

SMAPの成功の要因として、バラエティーや映画、ドラマなどマルチタレントとしての活躍ぶりが挙げられることが多いが、実際は気鋭シンガーソングライターの楽曲を積極的に取り入れてきたことも大きいだろう。林田健司、スガシカオ、山崎まさよし、コモリタミノル、槇原敬之、そして近年のMIYAVIやゲスの極み乙女。の川谷絵音など、SMAPへの提供曲やSMAPがカバーした楽曲をきっかけとして、さらにステップアップしたアーティストも数多い。つまり、音楽をより大衆化できるポップアイコンとしての魅力も兼ね備えてきたのだ。そんな彼らのヒット現象を振り返ってみたい。

総合TOP5は CDの1位から5位と一致!!

SMAPの総合TOP5を見てみると、なんとCDの1位から5位とまったく一致した。これは彼らのヒットしたCDがコアなファン以外に大きく浸透してきたことを意味している。つまり、CDで売れた作品はダウンロードやカラオケでもさほど人気を落とすことなく概ね強く支持されているということだ。

しかも、CDシングル市場のピークは1995年〜1997年に対し、彼らの人気曲のTOP3は1998年、2000年、2003年といずれもそれからズレており、決して“業界が元気だったからSMAPのCDもよく売れた”とは説明できない。これも大きなポイントだろう。つまり、この時流に逆らって生まれた大ヒット3曲があったからこそ、彼らが国民的大スターへとさらにステップアップしたのではないだろうか。

シングル、配信、カラオケ すべてで1位を制覇した 「世界に一つだけの花」が総合1位に!

総合1位はシングル、配信、カラオケすべてで1位を制覇した「世界に一つだけの花」で、当然100点満点。彼らの長年のファンなら、この曲がメディアで取り上げられる度に、「もっと良い曲があるのに…」と思うかもしれない。これだけ名曲が多いのだから、それもよくよく分かるのだが、圧倒的に支持されているのでどうかご了承願いたい。

この「世界に一つだけの花」は、その2002年のアルバム『SMAP 015/Drink Smap!』に収録されていた一曲で、ファンの間では人気曲として定着しつつあった。そこへ、2003年の1月期の草彅剛主演ドラマ『僕の生きる道』の主題歌が決まり、余命わずかな主人公の気持ちに《もともと特別なOnly one》という歌詞がシンクロし、視聴者から問い合わせが殺到。急遽シングル化を決めたところ、1週間で60万枚、2週目、3週目も30万枚を超える大ヒットとなった(ちなみに、同CDの発売2週目にはB’z「IT’S SHOWTIME!!」の発売が予定されていたが、B’zがオリコン1位連続記録を守るために、発売を2週間ずらしたほどだ。実際に「世界に一つだけの花」の発売2週目は38.0万枚に対し、B’zの初動は30.8万枚。ビーイング・スタッフのこうした英断により、現在もB’zの記録は継続されている)。

その後もヒットを続け、2015年までに累計約258万枚に。そして2016年、解散危機報道がされると、彼らへの応援や感謝を示した購入行動が広がり、その代表格となる本作がCDでは週間3位に再浮上し、累計300万枚を突破! 日本の歴代シングル売上第3位に浮上、配信(レコチョク)においても初の週間1位となる快挙に。解散後も、各メンバーの誕生日近辺になると、“お花摘み”と称してCDショップに足を運んで購入しているファンが多く、ロングヒットを続けている。ちなみに、作詞・作曲・編曲を手がけた槇原敬之も2004年に自身のアルバム『EXPLORER』でセルフカバーをしており、同アルバムは槇原にとって約7年ぶりに50万枚を突破し、同曲のダウンロードも10万件を超えている。

世界に一つだけの花

2位は自身初のミリオンヒットとなったバラードナンバー「夜空ノムコウ」

総合2位は1998年の「夜空ノムコウ」。作詞はスガシカオ、作曲は川村結花といったシンガーソングライター勢が担当し、その冬の寒さと孤独な状況を醸し出しつつ、気候面でも精神面でも次なる"春”を感じさせ、木村拓哉がアコギを弾きながら語るように歌うというスタイルも相まってこれまでのアイドル・ポップスとは一線を画したバラードで自身初のミリオンヒットに。とりわけ、スガの言葉を選ぶセンスが注目を浴びた。それゆえ、スガシカオが本作をセルフカバーしたアルバム『Sugarless』は裏ベスト的な意味合いがあったにもかかわらず、スガにとって初のオリコン1位となっている。

夜空ノムコウ

3位は草彅剛主演ドラマ主題歌の 「らいおんハート」

総合3位には草彅剛主演のドラマ『フードファイト』主題歌となった、2000年の「らいおんハート」。女性がうっとりするようなメロウなバラードで、洋楽でもバックストリート・ボーイズが大ヒットしていた時期と重なる。《君を守るため/そのために生まれてきたんだ》という野島伸司による歌詞を、照れることなく自然に歌えて、しかも多くの女性がそれに納得できたというのも、SMAPだからこそ。ちなみに、本作が100位内登場週数40回と異例のロングヒットになっているのは、発売2カ月後に木村拓哉が結婚を発表し、ワイドショーなどで大量に本作がオンエアされ、結婚ソングとして定番化したことも大きい。

らいおんハート

カラオケで人気のナンバーが 4位と5位にランクイン

そして、総合4位と5位には、ともに1996年の「SHAKE」と「青いイナズマ」がランクイン。どちらもカラオケが人気で、《シェイク シェイク ブギーな胸騒ぎ》と1996年末のエンタメ業界全体の高揚感とも見事に重なるアッパーな「SHAKE」がカラオケ5位、元は林田健司が発表していた楽曲をカバーし、そのキャッチーなメロディーや木村がウインクをしながら「Get you」と女性ファンを瞬殺するカメラ目線が話題となった「青いイナズマ」がカラオケ6位と、20年以上経ってもノリの良いナンバーとして支持されている。これは彼らがライヴを中心に同作の魅力を伝え続けてきたことも大きいだろう。

シングルのカップリング曲 「オレンジ」が6位に!!

そして、これらに次いで総合6位には、「らいおんハート」のカップリング曲「オレンジ」がランクイン。配信では2位、カラオケでも4位と表題曲にも引けを取らない人気ぶりだ。本作は別れの情景を描いた切ないバラードで、2015年の配信解禁初日は「世界に一つだけの花」を超えて1位のダウンロード数となった。

また、カラオケでも4位につけている点が興味深い。なぜならば、カラオケでの上位入りはCDや配信音源を購入せずとも、カラオケ番組やカラオケBOX等どこかで聴いたことのあるというライトなファンが多いからだ。これらの事実から「オレンジ」はコアファン発のヒットながら、多くの国民が意識しているがゆえにすでに配信やカラオケでも愛される大衆ソングとなったことが分かる。そういえば、ベッキーは「オレンジ」がこんなに話題になるずっと以前から自身の好きなSMAPソングとして機会あるごとに本作を挙げていた。長らくタレント好感度の高かった彼女も、本作のヒットに一役買っているのかもしれない。

7位にはロングヒットを記録している メッセージソング「ありがとう」が!

総合7位は2005年のシングル「ありがとう」。同作はドラマ『僕の歩く道』(これまた草彅剛主演)で、CDセールスとしては上から23番目となる累計37.7万枚だが、CDのTOP100内の登場週数は33週と、「世界に一つだけの花」(169週、現在も継続中)、「らいおんハート」(40週)に次ぐロングヒット。これも彼らだから歌える素直なメッセージソングだが、解散前後にもCDや配信での購入が進んだのは、ファンから彼らへのメッセージだったようにも思える。

総合8位には、1994年当時木村拓哉が出演した「オロナミンC」のCMに起用されたエールソング「オリジナル スマイル」。シングルでは、まだブレイク直後だったため18位の約41万枚と控え目だが、やはり前向きなメッセージが届きやすい配信や、ノリの良さが伝わりやすいカラオケでは好調で総合8位となった。特に、熊本地震が起こった2016年の4月下旬、この歌に励まされたいというリスナーが増えたのか、一時は配信やカラオケで「世界に一つだけの花」「オレンジ」に次ぐ3番人気にもなっていた。

総合10位にも1992年のシングル・カップリング曲「BEST FRIEND」がランクイン。もともとは「負けるなBaby!」(SMAPの全55作中最低となる売上9.9万枚)のカップリングで、NHK『みんなのうた』に使われていた友情や家族愛を歌ったものだが、メンバーの絆が話題となるたびに本作の配信やカラオケが再浮上してきた。特に、2013年『SMAP×SMAP』内で香取の歌唱に対し中居・草彅の号泣シーンが放送された際、大きな話題を呼んだ。彼らの楽曲は、ダンサブルでノリが良いものも多いが、このようにグループやメンバーの動向と併せて共感される楽曲も非常に多い。ちなみに、4位の「ありがとう」も解散前後にCDや配信セールスが急増しており、これもファンからメンバーへの感謝の表れだったのだろう。

「フラッシュモブ」型MVが話題となった「Joy!!」が12位を獲得

2010年代で最も人気なのが総合12位となった2013年のシングル「Joy!!」。女性バンド“赤い公園”のメンバーである津野米咲が作詞・作曲した皆で盛り上がりそうなアッパーチューンで、登場する人物が次々とダンスの渦に加わっていくという「フラッシュモブ」型の本格的なミュージックビデオとして話題になった。2009年まで1種類でのCD発売を貫いてきた彼らだが(奇しくもAKB48がミリオンヒットを多発するようになった)、2010年よりCDの複数形態での発売を実施し、この「Joy!!」は5種類の内容違いを出すことで累計39.9万枚と、こちらも2010年代最大の売上となっている。ただし、配信10位、カラオケ11位と他でもヒットしているので真のヒットと言えよう。

総合15位には2011年の配信限定シングル「not alone〜幸せになろうよ〜」がランクイン。CD発売が予定されていた矢先に東日本大震災が起こり、急遽配信のみのリリースとなったこともあり、配信での売上が突出している。ちなみに、SMAPの大半の楽曲は長らくフルサイズのダウンロードが解禁されておらず、シングル曲を中心に配信されたのは2015年4月28日(iTunesでは2018年現在も未配信)。それゆえ、2010年前後の楽曲が配信上位になりやすい一般的な傾向とは事情が異なる。しかし、だからこそ「世界に一つだけの花」や「オレンジ」などオールタイムでの“記憶の名曲”が配信の人気曲として浮上しているのだろう。

デビュー10周年を記念して発売された 「Smac」にもスポットを!

まだまだ触れていないヒット曲が多数あるSMAPだが、どのランキングでもTOP20入りしていない、けれどスタッフ側の熱量は絶大だったのではと思う曲も最後に紹介しておきたい。それは2001年の通算33作目のシングル「Smac」だ。デビュー10周年を記念して発売されたのに、同じ週に発売されたモーニング娘。や宇多田ヒカルより下の初登場3位。ただし、これは発売日の関係で初動の集計期間が1週間フルではなく約3日間しかなかったこと、ボーカル1曲入り900円(当時)という割高なシングルだったこと、さらにノンタイアップだったことも影響しているだろう。

しかし、この曲は「イナズマ」「ダイナマイト」「いいこと」「しようよ」「胸騒ぎ」「カンシャ」「Shake」などなど、それまでのシングル曲の名フレーズが散りばめられた、昭和歌謡ファンに合わせて言えば、SMAP版「微笑がえし」(キャンディーズ)なのだ。発売1カ月後にメンバーの事情によりプロモーションを中止させたというのも、ファンにとっても苦い想い出が残る作品なのかもしれないが、この曲があらためて認知されてこそ、そういったわだかまりが氷解するのではないだろうか。ともあれ、一歩間違えばコミックソングになりそうな内容でも、ファンキーでクールなナンバーにできるのはSMAPならではの強みも感じ取れる。ただ、2018年現在、本作は未配信…これはもったいない!

現在は各メンバーがそれぞれの分野で活躍していて、それは本当に何よりのことで、もう前を向いて進むことが正しいことは重々分かっているのだが…。それでも時々、5人(ないし6人)が揃った時ゆえに起こる強烈なマジックをまたいつの日か見てみたい。それはきっと、多くのリスナーが願っていることだろう。

臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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