鹿賀丈史 コメディで大事にしているのは心のリアリティ

2月8日(木)16時0分 NEWSポストセブン

鹿賀丈史が演じる上で心がけていることを語る

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、劇団四季を退団してしばらくは舞台から離れていた鹿賀丈史が、再び劇場に立ち、『レ・ミゼラブル』や新作『ラ・カージュ・オ・フォール』などを演じるなかで気づいたこと、心がけていることについて話した言葉を紹介する。


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 鹿賀丈史は劇団四季を退団後は舞台から離れていたが、1986年の『トーチソング・トリロジー』で復帰を果たしている。


「劇団を辞めて七年目、久しぶりの舞台で、しかもセリフの長い芝居でしたので不安はありました。でも、これで舞台の楽しさを思い出しました。それはやはりライブ感覚。ライブですから、同じようなことをやっているようで毎日微妙に違うんですよね。演じ方も、お客さんの反応も。何より僕の舞台を待ってくれているお客さんたちがいた。それが嬉しかったです」


 翌年に始まった『レ・ミゼラブル』では当初、主人公のジャン・バルジャンとそれを追うジャベールの二役を、それぞれ滝田栄と交代で演じている。


「ジャン・バルジャンが人生をやり直していこうという歌とジャベールがセーヌに飛び込んで死んでいく歌とが同じメロディなんです。つまり、善良で温厚なジャン・バルジャンに対して非情なジャベールという見方をされますが、実は表裏一体という描き方で。そこが素晴らしい。


 ジャベールは執拗に追いかける強さの持ち主です。ところが、最後はバルジャンの慈悲にあい、自分のやってきたことはなんだったんだろうと思い身を投げる。よく考えると根本的には弱い人間なんです。ですからただ強いだけでなく、その弱さや繊細さも出せるように工夫をしました。


 昨日僕がバルジャンで滝田さんがジャベールだったら、今日はそれが逆というようなこともありましたので滝田さんの芝居を意識することはありました。が、それは対抗意識というのではなく、二人で作っていこうという意識でした。僕は僕のやり方、滝田さんは滝田さんのやり方でいこうということで」


 新作の『ラ・カージュ・オ・フォール』もそうだが、鹿賀のミュージカルはロングランや何度も再演されることが多い。


「日本の場合、ロングランといってもずっと続くわけじゃない。必ず間が空きます。僕は忘れっぽいものですから、前回の公演でやったことを忘れたりするんです。今度の『ラ・カージュ』もそうです。忘れて、また一から本を読みなおしてセリフも覚え直す。それで、いつも前と違ったものになるんです。『また一から作ろう』という意識は、『レ・ミゼラブル』をやっている時からそうでした。


『ラ・カージュ』はコメディです。コメディの場合、お客さんの笑い声が物凄く力になります。一日二公演もやるとヘトヘトにはなりますが、お客さんに喜んでもらえると、やっぱり楽しくなってくるんですよね。


 コメディで大事にしているのは心のリアリティです。表面的な面白さだけでなく、心の揺れ具合や人間の持っているおかしさを繊細に出す。自分の心理状態を細かくしっかり捉えて、それが見えるよう舞台でやりたいとはいつも思っています。


 ミュージカルの魅力は歌の力です。ストレートプレイでも『ここで歌が入ったらいいな』と思う時もあるくらいで。十分しゃべらないと伝わらないことが、歌なら二、三分で伝わる。それだけの力があるんですよね」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


●撮影/藤岡雅樹


◆鹿賀丈史×市村正親主演ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』日生劇場(3月9〜31日)などで全国公演


※週刊ポスト2018年2月16・23日号

NEWSポストセブン

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