『べらぼう』唐丸が蔦屋の銭箱を見つめるシーンに視聴者最注目 第5話画面注視データを分析
2025年2月9日(日)6時0分 マイナビニュース
●店先でほうきを持つ手を止めたまま…
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、2日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第5話「蔦に唐丸因果の蔓」の視聴者分析をまとめた。
○鱗形屋の傘下に入ろうと誘う孫兵衛
最も注目されたのは20時11分で、注目度75.1%。唐丸(渡邉斗翔)が蔦屋の銭箱を見つめるシーンだ。
唐丸は店先でほうきを持つ手を止めたまま、次郎兵衛(中村蒼)の持つ銭箱をじっと見つめている。店の奥では、蔦重(横浜流星)と次郎兵衛が、鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)から送られてきた手紙について話をしていた。孫兵衛は、鱗形屋の傘下に入って一緒に本を作らないか、と蔦重を誘ってきている。「いいんじゃねえの」と、次郎兵衛は思ったままを口にしたが、蔦重は納得できない様子だ。
店の外から2人のやりとりを見ていた唐丸に、向こう傷の男(高木勝也)が下卑た笑みを浮かべながら声をかけてきた。客の来店と思った蔦重は、あわてて向こう傷の男のもとに駆け寄ったが、唐丸との間に何か不穏な空気を感じ取った。蔦重は唐丸を男から遠ざけようとするが、逆に唐丸は蔦重を追いやって男の対応を続けた。
そこに、今度は満身創痍の平賀源内(安田顕)がやってきた。「とりあえず何か食わしてくれ」という源内を、思いがけず有名人と会う機会を得た次郎兵衛は快く、向かいのつるべ蕎麦に案内した。蔦重は胸騒ぎを覚えつつも次郎兵衛に引っ張られ、蔦屋には唐丸と向こう傷の男を2人きりにしてしまうのだった。
○「向こう傷の男、卑劣でロクでもねえな」
注目された理由は、向こう傷の男から脅迫を受ける唐丸に、視聴者の視線が集まったと考えられる。
蔦重と唐丸は明和の大火で出会ってから3年の間、2人は実の兄弟のように過ごしてきたが、蔦重は唐丸が何かを隠しているのではないかと、かねてより感じていた。そこへ唐丸の秘密を知る謎の男が現れる。男は唐丸の出自だけでなく、明和の大火当日の唐丸の行動も把握している様子で、しかもそれは人には聞かせられない内容であると推察される。
SNSでは、「向こう傷の男、卑劣でロクでもねえな」「いい年した大人があんな小さな子供をゆするなんて…」「唐丸くんってそんなにヤバイ秘密を抱えてるのかな」「ゆすりたかりの場面が妙にリアルで胸が苦しくなる…」と、唐丸をゆする向こう傷の男にバッシングと、唐丸を心配するコメントが集まった。
唐丸と蔦重は1772(明和9)年の明和の大火で出会っているが、今回登場した向こう傷の男はその口ぶりから、唐丸とはそれよりもっと前からの知り合いだと思われる。慕っている蔦重にも昔のことはひた隠しにする唐丸。彼の過去には何があったのだろうか。謎は深まるばかりだ。
蔦重と唐丸が出会うきっかけとなった明和の大火だが、その原因は、目黒・大円寺の庫裡へ盗みを働くために、無宿の真秀という坊主が放火したこと。真秀はカモ平こと長谷川平蔵宣以(中村隼人)の父親・長谷川宣雄に捕縛され火刑にされた。もしかすると唐丸は真秀の一味である可能性もある。
唐丸を演じる渡邉斗翔は、クラージュキッズに所属する12歳で、2022年のデビュー以来、すでに多数のドラマやCMに出演している人気子役。昨年の大河ドラマ『光る君へ』で藤原道長の次男・藤原頼宗の幼少期である巌君を演じたのは記憶に新しいで。2年連続で大河ドラマに出演した渡邉斗翔だが、今後も出番は残されているのだろうか。
●本屋から出てきた唐丸をつけ狙う男
2番目に注目されたのは20時2分で、注目度74.0%。向こう傷の男が唐丸に接触するシーンだ。
本屋から出てきた唐丸をつけ狙う男がいる。その男の顔面には向こう傷が走っており、目つきには不気味な光が宿っていた。唐丸が人通りの少ない通りに入ったところで、「よう、久しぶりだな」と、男は後ろから声をかける。振り返った唐丸は、「ど…どなたさまで…おいら、何も覚えてないもんで…」ととぼけるが、動揺を隠せずその声は震えていた。どうやら2人は面識があるようだ。
「じゃあ教えてやろうか。おまえがどこの誰で、あの日何をしたのか」と言うこの男は、唐丸にとって招かれざる客なのだろう。男から逃れようと唐丸は走り出したが、追いかけてきた向こう傷の男に肩をつかまれ捕まってしまった。
「ただいま」しばらくして蔦屋へ戻ってきた唐丸だが、その声は暗かった。蔦重は「お使い、ありがとな」と返事をしたが、心ここにあらずである。版元になれないという絶望感からまだ立ち直れていない蔦重が、唐丸の様子がおかしいことに気づくことはなかった。
○「わかりやすいくらいすげえ悪人」
このシーンは、唐丸に不幸をもたらす人物の登場に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
唐丸の身に異変が起こることは、前回の予告で明らかとなっていた。その原因となる人物・向こう傷の男は、ビジュアル的にもいかにもな風貌で唐丸を分かりやすく脅迫する。
SNSでも、「いかにも時代劇に出てくる悪役ってキャラだな」「骨までしゃぶりつくす典型だね」「もう、わかりやすいくらいすげえ悪人」と、向こう傷の男の型にハマり過ぎた悪役っぷりが話題となった。
向こう傷の男にゆすられた唐丸が「あんた、死罪になるよ」と、反論するシーンがあったが、この時代の「死罪」は斬首刑の一種で、庶民に執行されていた死刑の一つ。処刑後に死骸を試し斬りにされる上に、付加刑として財産が没収され、死体の埋葬や弔いも許されなかった。さらに重罪の場合は、馬に乗せ刑場まで連行される「引廻し」が追加されることもあった。当時の死刑は「下手人」「死罪」「獄門」「磔」「鋸(のこぎり)引き」「火焙り」の6つがあり、武士の場合は「切腹」が追加される。どれも御免こうむりたいものだ。
江戸時代後期では、死罪は死刑のうちで最も多く執行された。「公事方御定書」の規定では「追落(人を脅したり追いかけたりして、財布などを奪い取ること)」、土蔵を破る盗み、人妻との密通、十両以上の窃盗などが死罪に該当する。2人の会話から想像すると、唐丸の場合、年齢的に人妻との密通は考えにくいので、何か盗みを行った可能性が高いと考えられる。
向こう傷の男を演じた高木勝也は、太田プロダクションに所属する神奈川県出身の38歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演だ。スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマンの3大特撮出演を果たした俳優の1人として特撮界では有名。ウルトラマンではクールな隊長役、仮面ライダーでは冷徹ながらもコミカルな面のある悪役を演じ、その演技力の高さが注目されている。
●蔦重、鱗形屋の傘下に入ることを決意
3番目に注目されたシーンは20時42分で、注目度72.7%。蔦重が鱗形屋の傘下に入る決意をしたシーンだ。
「お互い、うまくやっていこうぜ」蔦重は鱗形屋抱えの改になりたいと鱗形屋の主人である孫兵衛に伝えると、孫兵衛は蔦重を歓迎した。版元への道を絶たれた蔦重は、九郎助稲荷で花の井(小芝風花)と語り合う中で、唐丸を当代一の絵師にするという唐丸との約束を守るため、今は鱗形屋という長いものに巻かれる決意を固めたのだった。そして、須原屋市兵衛の本屋に奉公に上がれという助言に従い、孫兵衛からの申し入れを受けることにしたのだ。
『吉原細見』の改、入銀本以外にも、吉原に人を集めるためのものを作っていきたいと意気込みを見せる蔦重。鱗形屋の傘下に入るのは不本意ではあったが、ゆくえ知れずとなった唐丸といつか2人で夢をかなえるためと思えば、こんな屈辱などどうということはない。新たな一歩を踏み出した蔦重の足取りは、思いのほか軽かった。
○「めげない蔦重の熱い思いに心を打たれました」
ここは、新たな一歩を踏み出した蔦重に、多くの視聴者がエールを送ったと考えられる。
鱗形屋と西村屋の策略によって、『雛形若菜初模様』をかすめ取られた蔦重。普段は前向きな思考の蔦重だが、今回は珍しくふてくされる一面も見られた。しかし、「我が心のままに生きる」「わがままを通しているからきついのは仕方ない」という平賀源内の言葉に胸を打たれ、弟のようにかわいがっていた唐丸との別れを経て、蔦重はしがらみを捨てて、鱗形屋の傘下に入る決意を固めた。
SNSでは、「横浜流星くん演じる蔦重はカラッとしたさわやかさが最高だね!」「成果を横取りされても、めげない蔦重の熱い思いに心を打たれました」「蔦重が絡まると再会できる未来を祈っているのが、本当に切ない」「蔦重が鱗形屋さんに仕えるって決めた時の心情、すごく考えさせられた」と、本来のポジティブさを取り戻した蔦重を応援する多くのコメントが寄せられた。
蔦重こと蔦屋重三郎を演じる横浜流星だが、大河ドラマ初出演にして、いきなり今作『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の主役に抜てきされた。今を代表するイケメンでありながら、ストイックな役作りに定評があり、2022年のドラマ『DCU』では、ダイバー役のためにダイビングライセンスを取得したり、2023年映画『春に散る』では、ボクシングのプロテストに合格してC級ライセンスを取得したりしている。
『べらぼう』でも、粋でさわやかな江戸っ子を自然に表現しており、ネットでも、「顔の良さに目がいかないくらい演技がすごい」「横浜流星、綺麗な顔してお芝居も良いの最強すぎる」「べらぼうに顔がいい」「横浜流星さん、役を生きてる」と、ビジュアル・演技の両面で流星群(※横浜流星のファンネーム)を中心に多くの視聴者の支持を獲得している。
鱗形屋からの帰り道では、少年とすれ違った際に思わず振り返ってしまうなど、唐丸を失った心の傷はまだ癒えてはいないようだが、次回以降の蔦重、横浜の活躍に期待が高まる。
●里見浩太朗がさすがの存在感を発揮
第5話「蔦に唐丸因果の蔓」では、前回に引き続き1775(安永4)年の様子が描かれた。
版元になる夢をあきらめきれない蔦重は、平賀源内に書物問屋「申椒堂(しんしょうどう)」の主人・須原屋市兵衛を紹介される。蔦重は須原屋から助言を受け、のれん分けしてもらうために鱗形屋抱えの「改」になる決意を固める。一方、唐丸は自身の過去を知る、向こう傷の男にゆすられるが、蔦重や次郎兵衛を守るため、我が身をかえりみず、捨て身の行動に出た。
また、源内は開発中の中津川鉱山の出資者たちと衝突するが、田沼意次(渡辺謙)に援助を求め、鉄ではなく炭を扱う方針へ転換し、出資者たちとの話に折り合いをつけた。今回は前半の注目度が高く、典型的な悪役である向こう傷の男が、蔦重たちにどのように災厄をもたらすのかに多くの関心が集まったことが視聴データからうかがえる。
注目度トップ3以外の見どころとしては、中津川鉱山の船頭役として、元プロレスラー・佐々木健介が登場したことが挙げられる。現役時代に「マッスルボルケーノ」や「爆走重戦車」と呼ばれた佐々木の迫力は今も健在だ。演技とはいえ、佐々木にすごまれた安田はどんな気持ちだったのだろうか。
人質として捕らわれた源内の相方・平秩東作だが、源内とは非常につながりの深い人物で、戯作者・狂歌師・漢詩人としての顔を持ちながら煙草商を営む実業家でもあった。源内ばりに所持スキルが多い。少し先の話になるが、東作は源内の死後、その遺体を引き取ったと伝わっている。
今回、源内が求めた「株仲間」は同業の商人や手工業者が、幕府の許可を得て結成した独占的な組合。田沼時代には積極的に公認されていた。冥加金を納める代わりに、営業の独占権や様々な特権を与えられ、同業者間の相互扶助、価格の維持、品質の管理、新規参入者の制限などを行った。そのため、源内は薪炭問屋の主人(綾田俊樹)を探して蔦重を訪ねたのだ。
また、今回初登場を果たした里見浩太朗もさすがの存在感を発揮していた。須原屋の「申椒堂」は書物問屋と呼ばれ、歴史書・辞書・医書など専門的な内容の本を扱う問屋。1774(安永3)年には、蘭方医である杉田玄白・前野良沢・中川淳庵らの翻訳した『解体新書』を刊行している。同じ出版業界でも、蔦重の周囲の問屋とはずいぶんと毛色が違うが、今後の蔦重にとっては心強い味方となってくれるのだろうか。
里見浩太朗は御年88歳。言わずと知れた時代劇の重鎮だ。『水戸黄門』では、水戸光圀・佐々木助三郎・渥美格之進の三役を演じた唯一の御仁である。大河ドラマは、1993年『炎立つ』第一部、2002年『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』、2010年『龍馬伝』、2023年『どうする家康』に続いて5度目の出演になる。『炎立つ』では、渡辺謙演じる藤原経清の舅である安倍頼時を演じた。『べらぼう』では32年ぶりに渡辺との共演のシーンが用意されているのだろうか。
余談だが、今回が放映された2025年2月2日は暦の関係で、例年より1日早い節分となった。千葉・成田山新勝寺では毎年恒例の豆まきが行われ、『べらぼう』出演者の横浜流星、小芝風花、安田顕、渡辺謙という主要メンバーがそろって参加した。SNSでもこの豪華すぎる豆まきは大きな盛り上がりを見せた。
きょう9日に放送される第6話「鱗剥がれた『節用集』」では、蔦重は鱗形屋と新たな青本の出版を計画する。そんな折、須原屋から『節用集』の偽板の話を聞き、蔦重は胸中にある疑惑を抱く。また、幕府内では田沼派に危機が迫る。