福浦和也がロッテ本社講演で語った「ピッチャーを諦めたあのころ」

2月11日(月)11時0分 文春オンライン

 人生とは何とも不思議なものである。2018年シーズンにプロ野球史上52人目の2000本安打を達成した福浦和也内野手は1月28日、東京都新宿区にあるロッテ本社を訪問していた。目的は社員への講演。テーマは「大きな目標に向かって」。100人の定員で250名を超える社員が応募し、会場は熱気に包まれていた。


「前回、ここに来たのは25年以上前。四半世紀前だよね。まさか。まさか。こんな形でまた、ここを訪れることになるとはね。誰も思っていなかった。もちろん自分ですら思っていない」


 福浦は到着すると懐かしそうに周囲を見渡し、そう話した。それもそのはず。ロッテ本社を訪れたのはドラフト7位で指名されて入団会見に臨んだ93年12月以来の事だったのだ。7人いた新人選手の中でも最後の指名。ドラフト上位選手たちにスポットライトが当たる中、背番号「70」(当時)の若者は会見場の端にポツンと座った。


 そして時は流れた。あの時の新人選手の中で唯一、いまだ現役でプレーしている。12球団を見渡しても93年ドラフトで現役を続けているのは福浦ただ一人だ。そして幕張のレジェンドと呼ばれるまでになった男はロッテ社員向け講演の堂々たる主役としてあの日以来のロッテ本社に招かれた。



ロッテ本社前で記念撮影する福浦和也 ©梶原紀章


ショックだった投手人生の終わり


 思えば25年以上前に行われた入団会見でマスコミから目標を聞かれた福浦は「まずはプロ初登板を果たしたい」とキッパリと答えた。当時、投手として入団したからだ。しかし結局、その目標は叶わなかった。一軍はおろか二軍ですら投げることなく投手人生はあっという間に幕を閉じた。1年目の夏。二軍首脳陣は投手としてではなく野手としての潜在能力を見出し本人に野手への転向を打診。苦渋の選択を強いられた若者は、その提案を受け入れた。 


「もちろんショック。すごいショックでした。投手として入ってきて投手をやりたかった。しかも1年目ですから。でも『試しにフリー打撃で打ってみろ』と言われて打った時、ポンポンと打球が飛んで気持ちが良かったのも事実。どうせクビになるなら、チャレンジして悔いのない形で終わろうと。プロの世界で生き残れるなら、なんでもやってやるという気持ちになった」


 講演で当時の心境をそう語った。それからの福浦は必死に練習をした。野手転向は打つだけでない。守備練習、走塁練習も一からの再スタートである。他の野手に追いつくためには人の2倍、3倍と練習する必要があった。苦しい日々であった。ただ悔いは残したくないという想いが若者の気持ちを突き動かした。時には休みたいこともあったが、決められたノルマは必ずこなした。試合後には必ず凡打した自分の打席を映像でチェックし、なにが問題だったかの答えを導き出せるまでは絶対に球場を離れることはなかった。そしてそのたゆまぬ努力が安打を生み、その数字は2000本に到達した。



ロッテ社員の心に響いた福浦の言葉


「継続は大事。一度、決めたら、これでもかというまで突き詰めて続ける。ボクは継続してやることが出来たからここまで長くプロ野球人生を送れたのだと思う。最後は自分」


 90分に渡る講演はあっという間に終了した。普段は聞くことが出来ない超一流プロ野球選手の貴重な講演はロッテ社員の心に響いたようだった。25歳の女性社員は「自分が生まれた時からプロ野球選手である福浦選手のお話を間近で聞けて感動しました。コツコツと続けることが大きな結果につながるのだなと改めて気づかされましたし、夢を見続けることの大切さを学びました」と感想を口にした。福浦と同い年の男性社員は「ターニングポイントの乗り越え方の話を聞いて職業は違うもののすごく共感しました。またコーチになる福浦選手の人材育成についての考え方を聞いて、自分もコミュニケーションを取りながら、長所を伸ばしていきたいと考えました」と熱く語った。



 長い年月を経て行われた講演は大成功だった。やはり下からはい上がってきた苦労人の言葉には重みがあり、心に響く。それはプロ野球という垣根を超え、一般サラリーマンにも通じるものだった。講演は狙い通りの結果となった。


 そんな福浦だが今年限りで引退することを決めた。継続し努力をし続けた男は二軍打撃コーチ兼任の形で最後のシーズンに挑むべく石垣島キャンプでコーチを行いながら、体を磨く作業に入っている。紆余曲折の中、努力を重ね今の地位を築いた男のラストイヤーが始まる。幕張のレジェンドの最後の雄姿を目に焼き付けて欲しい。


梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)


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(梶原 紀章)

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