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「描く!」マンガ展で田中圭一と伊藤剛が語る マンガ家がこの先生きのこるための話も

おたぽる2月13日(土)14時0分
画像:「『描く!』マンガ展 ~名作を生む画技に迫る-描線・コマ・キャラ~」より。
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「『描く!』マンガ展 ~名作を生む画技に迫る-描線・コマ・キャラ~」より。

 2月11日より高崎市美術館(群馬県)にて「『描く!』マンガ展 〜名作を生む画技に迫る−描線・コマ・キャラ〜」が始まった。当展は昨年8月1日から9月23日にかけて、大分県立美術館にて開催されたことを皮切りに各地を順次巡回しているもの。

 昨年11月21日から今年1月24日までは北九州市漫画ミュージアム(福岡県)にて開催された。本稿では1月10日に実施されたトークイベント「田中圭一×伊藤剛『ペンが語る、画技のひみつ』」の模様をお伝えする。

 伊藤剛(マンガ評論家・東京工芸大学准教授)は監修、田中圭一(マンガ家・京都精華大学准教授)は技法解説を担当。田中は「手塚治虫の絵を真似ではなくタッチを描線のレベルから身につけて、手塚治虫が描いたことのないキャラクターを描く」(伊藤)ことで度々話題を集めているマンガ家。「何かしら絵でその人の持っているタッチの位置づけを解説するのは難しくもあり楽しくもあった」(田中)。


■分析しないとモノマネできない 太い線と細い線がどういう理屈で構成されているか
 田中の絵が手塚治虫風になったのは90年代半ば。「系統系列があるんで、途上にある作家を何人か模写してると元祖の作家に戻るはず」との持論を実践。「(以前に模写していた)『機動戦士ガンダム』などの安彦良和さんが虫プロダクション出身なんで先祖帰りさせるのは難しくない」と、体得するに至った。「ちばてつやさんも本宮ひろ志さんを描いてたんでそんなに難しくなかった」

 田中はその後「どこかのタイミングで、ある程度モノマネの域としてはいいけど、そこから上にどうやっていけるだろうとここ10年ぐらい悩んだ。ゼロ年代の半ばからスランプじゃないけど、さらにもう1段上に行かないとダメ」と気づく。「分析しないとモノマネできないし、トレースじゃないから。そのキャラクターがやってない表情とかポーズを描かないといけない」

 田中は手塚治虫の絵について「『ジャングル大帝』の頃に描いてたのは、ディズニーのような均質で太さが変わらない線で強弱がない。『リボンの騎士』あたりからメリハリやアクセントがついてきて、『るんは風の中』で完璧に太い線と細い線がまぜこぜになってる」と分析。

 また「さいとう・たかをがGペンの抑揚を始めたところがある」と『ゴルゴ13』を例に「太い線と細い線がどういう理屈で構成されているかは線の外側と内側の距離であるのが分かる。輪郭は背景と頬とで距離があるから太い。顔の中で距離があるのは鼻の頭と頬だから輪郭の次に太いのは鼻。目の下側とか距離のないところは細くなる。その法則で描くとグレードアップしてマンガっぽくなるので覚えて帰られるといいかもしれない」と語った。

 一方で伊藤は、マンガと絵画とを大きく分けることができるポイントとして「一般的な美術の感覚で言うと輪郭線を描いちゃいけない。唯一輪郭がある日本画はフラット」と補足した。

■ペン先はペンが決めるんじゃなくてマンガ家が決める 好みのペン先は1種類
 続いて、マンガ家が使用するペンの話題に。「ペン先を特定するのは簡単じゃないなと最近4〜5年で気づいた」と田中。「抑揚のあるペンは全部Gペンじゃないかと思ってたけど、松本零士さんとお会いする機会があって『あのフニャフニャしたペンはGペンですよね?』って言ったらカブラペンだった。カブラペンって結構硬い。松本さんは思いっきり筆圧かけてる」

 竹宮惠恵子についても、田中は「実はカブラだった。ペン先はペンが決めるんじゃなくてマンガ家が決める」と感心。逆に「Gペンを使っていながら抑揚を消して均一に描く人っていますよね。鳥山明さんとか」と例を挙げた。「場合に応じてGペン、丸ペン、カブラペンって使い分けるんだと思ってたけど、どうやらマンガ家の好みのペン先は1種類で、強弱や細い太いはコントロールしているっぽい。いちいち持ち替えなくて済むし、その方が効率いいから。そういうのがおぼろげながら見えてきた」

 田中は竹宮惠恵子の絵も解説。「普通だったら鼻の影は傾いてる側にあるのにあえて逆にする意味って何だろうと。竹宮タッチ、萩尾(望都)タッチだってのは認識するけれども自分たちの個性を出すためにやってるのかと思ったら違った。鼻の反対側の線は影の一部が残ってるんだと。だんだんコントラストを上げていくと最後に残るのが線の部分」

 その影の一部についても「1つは鼻が高いということ。鼻が高いから影が深く出る。1本だけ線を残しているということは全体的に色が白い。つまり白人で鼻が高いキャラクターを表現できるんだということで落ち着いた」と田中。「日本人とは違う顔立ちが成立してないとありえないというのを影の描き方、この線1本でいけると。僕はこれをGペンで描いたんですけどもカブラペンでこれを描けるのは相当なペンコントロール」

 このほか諸星大二郎など、基本的に展示と関連させて事例を紹介していた。なお図録も販売されているが、ISBNコードを取得していないので、是非とも会場にて入手しておきたい。


■クオリティはこの10年で上がった 課金でキラーコンテンツが出る機運を待望
 聴衆との質疑応答では、いかにして利益を得るか? という話題にもなった。「ソーシャルゲームが課金で成功しているように、デジタルマンガを課金のシステムで成功させることができるタイミングがあるんじゃないかと思っている」と田中。「インタラクションができて、買わなきゃいけない状況に持ってって買わせてる。マンガではそれができないでしょって言うけど、そういうマンガを制作することがどこかで求められてる。キラーコンテンツが出るタイミングがあるんじゃないかと」。

 田中は、ホラーマンガを応用させる案を提示。「読み終わって2巡目から話が変わるとかだと読者に選択を迫らないので、そういう感じでキラーコンテンツが出てくると新しいフェーズに入ってデジタルだから価値がある、だからお金を払ってもいいになるかもしれない」とソシャゲとは異なる展開を期待。「マンガ家がこれだけいて、食ってる人がこれだけいるんだから、みんな生活してかなきゃならない」。

 このように田中が憂慮しているのは、これまで放っといても売れていたマンガがジリ貧になっている背景があるためだ。「マンガのクオリティは、この10年ですごく上がってると思う。個人的に好きなのはイブニングの『累−かさね−』(松浦だるま)。あれは20年前なら間違いなくミリオンセラー。今はマンガが売れなくなってるから単に面白いねってレベルになってしまっている」

 後半には伊藤が「大学でもマンガ史を教えてるけど、今あるマンガだけをマンガの形だと思わないでほしい。展示でもやってるけど手塚治虫からだと見誤るんで」と本展の意義について触れた。「去年、ちょっと国立国会図書館で昭和20年の10月から24年の10月までのマンガを見た。GHQの検閲があった時代の全部検閲されたマンガが、前まではアメリカに行かないと見られなかったのが、今はデジタル化されて国会図書館の中でだけ閲覧できる。研究者目線は別にしても、こんなマンガあったのかって。手塚だけが超天才で、あとは何もないみたいに思われてるが、戦前からやっててその作品以外に全然資料が残ってないのが結構ある」

 重ねて田中も「戦後マンガ史はイコール手塚じゃないよ、戦前からの流れで手塚が出てきたんだよというのを知ってほしい」と念を押した。

 高崎市美術館での展示は4月10日まで。3月21日には2人のトークも予定されているので、詳しくは現地で耳を傾けてみたい。
(取材・文/真狩祐志)

■『描く!』マンガ展 〜名作を生む画技に迫る−描線・コマ・キャラ〜
北九州市漫画ミュージアム(終了)
http://www.ktqmm.jp/kikaku_info/7094
高崎市美術館(2月11日〜4月10日)
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2015121300012/

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