『いだてん』視聴率低迷を加速させる「ストレスコーピング」

2月13日(水)7時0分 NEWSポストセブン

W主演の中村勘九郎と阿部サダヲ

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 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の深層心理を推察する。今回は、1月から新たに始まったNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』を分析。


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 NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の視聴率が伸び悩み、苦戦しているらしい。『いだてん』は、日本人が初めてオリンピックに出場した時から、1964年の東京オリンピックが実現するまでの半世紀が描かれている。


 個人的には、放送された6話全てを見ているが、主役の金栗四三を演じている中村勘九郎さんの演技がいい。“目標に向かってどこまでも真っ直ぐに突き進む太陽のような男”と番組HPにあるように、日本人で初めてオリンピックに参加した、純朴で真面目で熱心という金栗像を見事に好演しているのだ。上半身がぶれず、背筋を正したまま、真っ直ぐに走る姿は、さすが歌舞伎役者と思うばかりだ。他の役にも演技派が揃っていて、個性豊かな演技に魅了される。


 ところがいかんせん、展開が早すぎてストーリーに付いていけない。登場人物が多すぎて誰が誰やら、どう繋がっていくのやら…と思っていたら、視聴率が伸び悩んでいるという。3日に放送された第5話は10.2%、第6話は9.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。予想外の視聴率低迷に、いくつかのメディアがその理由を分析していた。


 それらをまとめると、分かりにくい、視聴者が話に付いていけない、というのが一番の理由だ。やっぱりね。そして原因は、凝り過ぎた作りや展開の慌ただしさにあるとも書いている。確かにストーリーが複雑だ。主人公以下、重要人物が入れ替わり立ち替わり、次から次へと息つく間もなく場面も展開すれば時代も変わる。人物さえも入れ替る。落語家の古今亭志ん生役をビートたけしさんと森山未來さん(若き日の志ん生)が演じているのだが、最初は2人が同一人物を演じているとは思わなかったほどだ。




 話を理解する前に、場面も時代も人物も展開してしまうから、見ているこちらは消化不良気味になってしまう。1人の登場人物を中心に展開が早いだけなく多軸で展開されるし、画面いっぱいに物や人物、セットが溢れ、自分の認知や理解の範囲を超えて、処理能力が追いつかない。


 この消化不良、これまでの大河ドラマなら解消できたものだ。分かりやすく、馴染みの深い歴史上の人物が描かれていたからだ。多少、話が逸れたり演出が加えられても、ある程度の歴史を知っていれば、その人物がどこでどうなるのか、ストーリーがどう進むのか、人間関係がどうなっていくのかが予測できた。だが、今回は近代史。登場するのはよく知らない人物ばかり。話がどうなっていくのかも予測不可能。調べたところで、細かな史実も人間関係もよく分からない。


 予測するから期待する。期待するからワクワクする。期待をうまく裏切られるからはまっていく。大筋が分かっているから、演出が楽しめる。安心して心地よく見ていられる。これまでの大河ドラマはこんなパターンだったと思う。期待したのに、興味があるのに分からない、付いていけない、予測できないとなると、見ているうちにストレスが溜まっていく。


 このストレスとどう向き合うかだが、ストレスに対処する「ストレスコーピング」の考え方で捉えると分かりやすい。ストレス要因であるストレッサ—は番組で、コーピングはストレッサ—を取り除くことだ。つまり、番組を見ない。こういう人が多くなると、結果的に視聴率は下がってくる。


 加えて、人の認知機能には限界がある。視覚的には同時に注意を向け続けられるのはだいたい4〜5個。短期に記憶しておける情報は約7個と言われているが、提示時間や明るさ、新奇性などによって、その度合いは変わってくる。さらに、年代が上になるほど認知機能は低下する。私などは話しに付いていこうと思っても、見ているうちに脳がフリーズ。残念ながら目が追いつかない感じなのだ。もう少し分かりやすくしてもらえたらと、つい思ってしまう。


 コーピングには見方や視点を変えたり、違う意味をそこから見出したりすることで、ストレスを無くすという方法もある。東京オリンピック開催に向けたせっかくの大河ドラマだ。パズルの謎解きのような感覚で見れば、また違った面白さが味わえるのでは?と思うのだが、いかがなものだろう。

NEWSポストセブン

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