半世紀経ても眠狂四郎を演じられる田村正和の底力

2月14日(水)7時0分 NEWSポストセブン

眠狂四郎役がよく似合う田村正和

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 これまで幾度となく映画やテレビでシリーズ化され、何人もの名俳優たちが演じてきた眠狂四郎。このほど、ドラマスペシャル『眠狂四郎 TheFinal』(フジテレビ系)で半世紀ぶりにこの役を演じるのは田村正和(74才)だ。これだけ長い年月を経ても、田村が同じ役を演じられるのはなぜか。“田村版眠狂四郎”について時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。


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 今年は時代劇に関してあっと驚くニュースが多いが、2月17日土曜日に放送される田村正和主演『眠狂四郎 TheFinal』もそのひとつだ。なんたって、田村正和がこの役で初めて主演したのは、1972年。札幌で冬季オリンピックが開催され、上野動物園に初来日したパンダが大人気となった年…というと、なんだか今年と共通点があるような気もするが、とにかく半世紀近くも前なのである。ひとりの俳優がこれほど長く当たり役を演じ続けるというのは、日本のテレビ界ではほとんど例がない。


 この役は、映画では松方弘樹、鶴田浩二、市川雷蔵と昭和の名優が演じ、ドラマでも江見俊太郎、平幹二朗、片岡孝夫(現在の仁左衛門)、GACKTが演じているので、ご存知の方も多いと思うが、とにかくこの「眠狂四郎」という男は、異色の時代劇ヒーローである。


 そのポイントはふたつ。ひとつは、転びバテレンのオランダ人宣教師と大目付の娘との間に生まれたという出生の秘密を抱え、虚無の中に生きる孤高の剣士であること。目立たないように生きているのに、赤味がかった髪と憂いを帯びたその美貌はやたら人目を惹く。


 狂四郎がイケメン好きの女子に誘惑されたり、抱きつかれたりするのは日常茶飯事。1970年代の夜のドラマには、セクシー女優も多く出ていたので、お子様だったペリーも当時のお色気シーンをドキドキしつつ見ていたものだ。


 そんな積極的な女たちに対して、狂四郎の態度は「Sですか!?」と言いたいほど、いたってクール。「地獄へ墜ちてもかまわんと?」なんてことを平気で言うのだが、それが田村正和にぴったりくるのだった。


 もうひとつのポイントは、狂四郎が独自の必殺剣「円月殺法」を使うこと。狂四郎が下段の構えから妖刀無想正宗をくるりと一周させながら相手を幻惑、見た者は必ず死ぬ。光る刀がキラキラと軌跡を描く円月殺法は、眠狂四郎ならではの幻想的なシーンである。


 今回のファイナルでは、ある事件をきっかけに江戸に戻った狂四郎(田村)が、自分と同じ髪色をし、「父上」と呼ぶ娘・操(吉岡里帆)と出会う。その後、謎めいた妖術と円月殺法を遣う加賀美耀蔵(椎名桔平)の存在を知った狂四郎は、運命に導かれるように自らの過去と向き合うことになる。


 吉岡は、時代劇初出演。京都生まれで時代劇出演をずっと願っていたという。また、円月殺法のシーンは撮影に3日間かけ、田村本人が「大変なスケールになる」と語っている。思えば、田村正和はフジテレビと縁が深い主役だ。1970年代には『眠狂四郎』、1980年代には、『番町皿屋敷』『髑髏検校』など怪談時代劇に出演する一方、『ニューヨーク恋物語』をヒットさせている。怪談とラブストーリーの両方で主役をできるのも田村正和ならではだ。さらに1990年代には『古畑任三郎』シリーズで高視聴率を獲得。2000年代にも『さよなら、小津先生』に出演。すべて主演だ。


 今回は自らのキャリアの締めくくりを考えて、この作品を選んだという。仕事のときには朝四時起床(!)で夜間撮影は苦手と語っていた田村正和が、夜型ヒーロー狂四郎でフジテレビのドラマに、時代劇にどんな足跡を記すか。見なきゃ、円月殺法!

NEWSポストセブン

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