青木さやか「自分を愛せないわたしは、娘を大切にするのが難しい」

2月15日(月)20時0分 婦人公論.jp


保護猫のクティと

青木さやかさんの好評連載「47歳、おんな、今日のところは『……』として」ーー。青木さんが、47歳の今だからこそ綴れるエッセイは、母との関係についてふれた「大嫌いだった母が遺した、手紙の中身」、ギャンブル依存の頃を赤裸々に告白した「パチンコがやめられない。借金がかさんだ日々」が話題になりました。第12回は「自分を愛せないわたしは、娘を大切にするのが難しい」です。

* * * * * * *

冬休みっていつまでだっけ?


「冬休みって、いつまでかわかりますか?」
12月のある日、出演中の舞台、三軒茶屋の世田谷パブリックシアターの楽屋で、娘の同級生のママのみほちゃんに電話した。
「始業式、知らない人いたんだ!」
「あ、みほちゃん知ってた?」
「ちょっと〜」

ママ友は笑って、冬休みがいつからいつまでで、ついでに宿題はこんな感じで、ついでにコロナ対策として学校はこうなっているから、ということまで教えてくれた。
「さすが、みほちゃん」
「はは。褒めてくれてありがとう」
「すごいねえ」
「ほとんどの人、知ってるから!」
「あ、そうでしたか」

わたしのだらしなさは、ママ友たちはわかっていて、時に注意を挟みながらも惜しみなく情報を教えてくれる。
「いま、パブリックシアターだよね?」
「すごい、わたしの仕事まで。いよいよすごいわ」
「聞いたよ!『ママ、舞台やる』って。この前バス停で会ったとき」

娘は、わたしの仕事を友だちのママに自慢するみたいだ。わたしには言わないけれど。
「バス停で会ったとき思ったけど背、伸びたよね〜」
「うん」
「もうさ、女子だね。男の子は子どもっぽいよ」
「可愛いじゃない」
「ママを守る隊だって言ってるし」
「わぁ、最高。彼女できたら大変だ」
「厳しく見るよ、私は! 彼女を!」
「わぁ、もしうちの子が彼女になったら、わたし、みほちゃんに口聞いてもらえないわ!」
そうかもよ〜なんて笑って電話を切った。

選んでいない人間関係


娘が幼稚園に入る時には、すでにうちは娘と2人暮らしだった。娘のパパや、パパ方の親戚、わたしの実家など、頼るところはあるが、今日明日を助けてくれるのは、やはりママ友たちだった。
たまたま同じ時期に母になり、たまたま同じ地域に住み、たまたま同じ学校で出会った。娘を中心に知り合っている人たちなので、突き詰めれば、わたしの意志ではない部分で知り合っている人たちでもある。

メディアから流れてくる「ママ友」というものは、わたしに、あまりいい印象を与えなかった。おそろしい世界が広がっているのかもしれない、と思った。

もちろん育ってきた環境も仕事も年齢も違う。わたしが選んだ友人ではない。だから、一つの問題が起きたときの捉え方や対処の仕方はそれぞれで、度肝を抜かれることもあった。わたしとは違うな、と思うこともあった。

だけど、子どもを育てていく過程で、わたしは学んだ。

「個性」「自己肯定」「共生」

幼稚園や学校で、そして娘の同級生と接することで実感した。わたし自身、みんな違ってみんないい、ということを学び、生き直しているような貴重な時間だった。

親になって気づいたことがある。自分を大切にしていないわたしには、自分の一番大切な娘を、大切にすることがとても難しいのだ。

わたしは、わたしを、いつも傷つける。

娘を愛して受け入れるには、まずは自分自身を愛して受け入れるのが先だと気づいた。そこに気づけたのは、そして、それにチャレンジしようと思えたのは、ママ友という存在が大きい。悩みを吐露する相手というよりは、同志のように、自分と子どもと心と、いろんなものと向き合っている姿をみせてくれた。

たまたま知り合ったママ友たちは、誰だって初めての経験をしている母親として、もがいて笑って泣いて立ち上がる姿をみせてくれた。3人目の子のママともなると、「猛者」のようで、腹が据わっている風格さえ漂った。まわりにさまざまな同志がいることは、勇気になった。

みんな、色々、あるわけで。多分。

多くを語ってきたわけではない。だから想像に過ぎないけど。

娘に「みんなそれぞれだからね」と伝えていきたいわたしが、誰かを否定する生き方は、もうしたくないなと思う。たとえ自分と考え方が違っても。たとえ、自分を否定されたとしても。

みんな違ってみんないい


「ママ、冬休みの日にちわかった?」
「みほちゃんに聞きました」
「みほちゃんは間違いないから、大丈夫だね」

この10歳は、何様なんだろう。

「ママ、今週スケートいくから」
「決定ですか?」
「決定」
「ちょっと待ってよ」
「決めてきたから、学校で」
「ちょっと待ってよ、ママ忙しいから、わからない、予定、いま」
「舞台終わったら、どっか連れてくって言ってた」
「言ってたね」
「おつかれさまでした」
「はい、ありがとうございます」
「舞台よかった!」
「嬉しい、どこが?」
瀬戸康史くんが、かっこよすぎた!」
「そうだよね」
「スケートね」
「ママの感想は?」
「スケート行ったとき教える」

こうしてくれたら、こうしてあげる。

この良くない癖は、わたしの口癖だったかもなぁ、と反省。

「スケートいつにするかってLINEして。ママ、すぐ忘れるから」

友だちのママにLINEをしろと急かされる。

「いつもありがとうって言うんだよ、ママ」
「なに、わかってるよ」
「私たちをいつも助けてくれるんだから」
「知っていますから」
「しっかりしてね」

何様だろう。

確かにわたしに何かの情報を聞いてくるママ友は、1人もいない。

「みんな違ってみんないい」

いやいや。だらしないわたしに付き合ってくれるママ友に、足を向けて眠れません。

婦人公論.jp

「青木さやか」をもっと詳しく

「青木さやか」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ