新型コロナ、感染爆発Xデーと「隔離」「解放」の究極選択

2月15日(土)7時0分 NEWSポストセブン

いまだ大黒ふ頭に停泊を続ける「ダイヤモンド・プリンセス」(共同通信社)

写真を拡大

 乗客が新型コロナウイルスに感染したいた事が発覚し、横浜港に停泊している豪華クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。船内の感染者は174人となっている(2月12日現在)。


◆解放か、隔離か。パニックは防げるか


 厚労省は2月5日、クルーズ船で10人に新型コロナウイルスの陽性反応が出たと発表した。そのため、潜伏期間とされた14日間を健康観察期間として設けた。潜伏期間では体内でウイルスが増殖していないため、感染者であっても「陰性」とされる可能性がある。だから、14日間は隔離して様子を見なければならないということだ。


 しかし、9日、中国の研究者が、ウイルスの潜伏期間が最長で24日におよぶと明らかにし、状況は一変した。


「潜伏期間を考えると、乗員乗客は2月5日から数えて24日間は隔離しなければ、感染していないと確定できないはずです。つまり、2月29日まで隔離生活をしなければならないのに、政府は19日以降に、乗員乗客の検査をして下船させることを検討しています。


 そうなると、潜伏期間中の可能性があり、100%『陰性』と言い切れない人たちが下船してしまうことになる。そのため、日本に感染爆発が起こるXデーは2月20日だといわれています」(全国紙社会部記者)


 武漢から第一便のチャーター機で帰国した人たちは、2月11日にウイルス検査を受けて、感染が確認されなければ12日にも施設から出られるという。第二便以降も順次、検査を受けたうえで施設を出ることになる。


「帰国者約800人も潜伏期間が24日であると考慮して、それまで隔離するべきだという声もありますが、帰国者の不満が限界に達していて、政府も目をつぶらざるを得ないんです」(前出・全国紙社会部記者)


 実は、厚労省によると、2月5日の時点で、武漢からの帰国者のうち11人は“やむを得ない事情”で国内の自宅に帰っているという。


「子供連れという理由で埼玉県内の自宅に帰宅していた40代男性が11日、感染していたことが確認されました。実際には、すでに国内にウイルスが入り込んでいて、市中で散発的な流行が起きてもおかしくない状況なのです」(厚労省関係者)


 解放か、隔離か──この問題には2つの考え方があると自治医科大学附属病院感染制御部長の森澤雄司さんは指摘する。


「個人的な意見ですが、患者を診る医師の立場から言えば、致死率が1%を大きく割り込む病気を理由に疑わしいぐらいの人々を隔離するのは、隔離された人々への負担が重すぎます。一方で、流行を防止する公衆衛生の立場からは、仮に致死率が0.1%でも数十万人の患者が出れば数百人が死亡することになり、発症前の隔離もやむを得ないかもしれません。この2つの考え方のバランスを取ることが難しい」


 乗客からすれば、早く下船して日常生活を取り戻したいだろうが、それによって、多くの国民の日常生活が害される恐れがある。個々人の自由を尊重すれば、その自由を成り立たせている社会基盤が崩れかねない。


 評論家の呉智英さんは「隔離やむなし」との見解だ。


「非常時においては、平時のように『みんなで議論して妥協点を探そう』とはいきません。悪性の感染症者を隔離する例は過去にもありましたが、今回も同様に隔離が必要です。差し迫った状況ゆえに全員が納得できる回答はあり得ず、公権力を行使してウイルスに感染した可能性のある人々を隔離する必要があります」


 ヘルスコミュニケーションが専門の京都大学大学院医学研究科教授の中山健夫さんはこう言う。


「同じ事実を目の前にしても、人それぞれの価値観や立場によって、行動や考え方は違ってくる。“解放してあげて”と思う人もいれば“隔離したままの方がいい”と思う人もいるでしょう。一般の人たちが心の中で考えることは自由ですが、不安に振り回されすぎることは危険な時があります。今は自身や家族の身を守るために手洗いを徹底するなど、個人レベルできちんとすることが第一です。必要以上に騒ぎ立てずに動向を見守るという考え方が大切です」


◆医療機関パンクの懸念と「正しく恐れる」ことの重要性


 現状、想定されている感染力を考えると、不特定多数の人が利用する電車やバスといった密室の移動手段はリスクと言わざるを得ない。会社や学校に行くことは、もはや文字通り“命がけ”となるのだ。名古屋市衛生研究所微生物部長の柴田伸一郎さんが指摘する。


「2009年に新型インフルエンザが流行した際は、地域によっては小中高が臨時休校になり、街の興行施設(映画館など)が自主的に営業を停止しました。今回の新型コロナウイルスも感染が広がれば、同じ対応になるかもしれません」


 新型コロナウイルスの影響でマスクは品薄状態。中国やシンガポールなどではスーパーでの食料品などの買い占めにより、棚から商品が消えている。これは日本の近い未来かもしれない。


「現在、日本では大学受験シーズンに入っています。試験会場には箱入りマスクを置くなどの対応をしている学校もあり、感染の疑いがある学生には振替受験できる救済策を決めた学校もある。受験生は勉強以外の対策にも苦しんでいます」(教育関係者)


 最も怖いのは不安心理の拡大だ。


「実際に感染した人だけでなく、感染しているかどうか不安にかられた人が検査に殺到して、医療機関がパンクする可能性があります。すると本来医療を必要とする人々に医療が行き渡らなくなってしまう。なので国民には理性的な行動が求められます」(前出・柴田さん)


 まずはパニックを避けて冷静に対処する必要がある。


「重症化しないためには、個人の努力による対策が必要です。初期段階で防ぐためには、『石けんやアルコールによる手洗い』が非常に有効です。まずはこまめな手洗いを心がければ、リスクは減ります」(前出・柴田さん)


 WHOは感染リスクを下げるために手洗いなどに加えて、「肉や卵はよく加熱する」「野生動物や家畜に防御なしで接触しない」ことを推奨する。


 日本政府は、4500人の“解放”を想定している。間もなく、彼らを受け入れることになるが、正しい知識を持ち、“正しく恐れる”ことが肝要だ。


※女性セブン2020年2月27日号

NEWSポストセブン

「感染」をもっと詳しく

「感染」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ