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『クズの本懐』第6話 エロシーンに釣られた“俺たち”に突き付けられる「深刻さ」の断面図

おたぽる2月17日(金)23時0分
画像:『クズの本懐』公式HPより
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『クズの本懐』公式HPより

 今期ノイタミナ枠『クズの本懐』(フジテレビ系)も第6話。それぞれの人物の輪郭がハッキリしてきたことで、逆に小難しい展開になってまいりました。

 主人公・花火(CV:安済知佳)の気持ちを弄ぶためだけに、花火が思いを寄せる“お兄ちゃん”こと鐘井先生(CV:野島健児)を誘惑してセックスまで持ち込んだ茜先生(CV:豊崎愛生)。

「昨日、鐘井先生としちゃった」という茜先生の言葉に打ちのめされながらも花火は、少しずつその“他人の気持ちを弄ぶ快感”を理解し始めていました。

「ならいっそ、あなたに夢中な人たちみんな、私のものにしたい」

 そんなことで満たされるなんて思っていないし、惨めだとも思う。そう自問自答しながら、花火は自身の闇に埋め尽くされていくのでした。

 花火はさしあたって、茜先生に片思いしている麦(CV:島崎信長)に「ちゃんと付き合おう」と告げます。今までは、お互いに自分が片思いしている相手だと“思い込んで”キスとかペッティングとかしながら心のスキマを埋めあう関係だったけど、ちゃんと付き合おうと。

 麦はその提案に、イエスともノーとも言いません。いや、言ったのかもしれないけれど、それに明確な返答を示すシーンは描かれません。

 なぜ描かれないかといえば、この作品そのものが、麦の返答になんの意味もないことをメッセージとして演出しているからです。花火の提案が空虚なのだから、麦がイエスだろうがノーだろうが、別に意味はない。物語が「語らない」ことで「語る意味がないんだ」と伝えようとしている、ちょっと難解なシーンとなっています。

 その後、花火は“えっちゃん”こと絵鳩早苗に(CV:戸松遥)に「麦とちゃんと付き合うことにした」と告白します。だから、あなたのことはもう利用できない、と。

 レズであり、花火に恋をしているえっちゃんは「だから、何?」と答え、「利用くらいしてよ」と言いながらキスをしてきます。

「自覚してたでしょ? 実感、湧いてきた?」

 それは、えっちゃんの恋心を利用し、寂しさを埋めるために身体を重ねた花火が、「茜先生と同じである」という、えっちゃんからの糾弾でした。前回でおぼろげに語られた「茜先生と花火は同種のクズ」であることを、えっちゃんのセリフによって白日の下にさらす展開です。

 花火は「もう、放課後、2人きりで会ったりしないから」と、少なくとも肉体関係だけは断ち切る意思を表明しますが、えっちゃんは花火が好きなので、「じゃあ放課後じゃなきゃいいんだな」と、自習時間の図書室で花火に手マンしてきたりします。

 花火が自己正当化しながら周囲を利用してきたツケが、どんどん回ってきます。えっちゃんは、決して花火を手放してはくれません。

「男を落とすのなんて、簡単だよ」

 えっちゃんは花火を、そう諭します。本当の気持ちなんて、ずっと隠しておいたほうがいい。自分だけが知っていれば、それでいい。

 花火は、えっちゃんの言葉により、茜先生と同じだとさらに念押しされるのでした。あいつでさえ、寂しいだけなのではないかと。

 そんな花火は、茜先生のセフレと街で偶然出会いました。

 花火はもう、茜先生をマウンティングすることでしか自分を保てなくなってしまいます。まずはこのセフレを落とすことにしますが、やはり処女ですし、最後までさせることはできません。処女を失うことで、自分の価値が何もなくなることが怖いのです。

 何を守ろうとしているのか、何を獲得しようとしているのか、花火自身も明確には理解していません。その理解していない花火が、そのままに画面に映し出されています。

『クズの本懐』は、視聴者が何を思えばいいのか、具体的に提示してこない作品です。自尊心、自分の評価、他人への依存、存在価値、そうした誰もが一度は通過してきた「単語的な悩み」に束縛される思春期そのものが表現され、登場人物たちは涙ながらにそれが「深刻なんだ」と訴えてきます。

 そういう作風を、説明を排してそういう作風のままアニメ化することはとても勇気がいる作業だと思いますし、いい具合に達成されているからこそ、この作品は成功していると思うんです。エロシーンでぐいぐい引っ張りながら、エロシーンだけ目的の視聴者をガシガシふるいにかけている感じ。

 花火に「ちゃんと付き合おう」と言われた麦が、ずっと昔から麦に思いをよえる“モカ”こと鴎端のり子(CV:井澤詩織)とデートの約束をしたところで、今回は終わりました。麦はモカのまっすぐな思いにまるで魅力を感じません(欲情しません)が、「別にいいよ、明日デートする?」と応じます。モカは涙を流しながら「そんなふうに誘ってくれたの、初めてなの。私の“好き”は、それでもいいくらい好き」と、デートを了承するのでした。

 女として茜先生が頂点にいて、それに勝ちたくてもがく花火がいて、その花火が適当に利用している麦に真剣に恋しているモカがいる。

 誰が幸せなのか、何が幸せなのか。エロ目的だけで見ていた筆者ですが、この作品から何かを「読み取りたい/読み解きたい」と思い始めています。要するに、面白いアニメだなーってことです。はい。
(文=新越谷ノリヲ)

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