老舗健康雑誌『壮快』編集長 垂れ流される健康情報に苦言

2月17日(土)16時0分 NEWSポストセブン

『壮快』編集長の安藤伸剛さん

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 東京・湯島にあるオフィスビルのワンフロア。忙しそうにパソコンに向かう8人の男女。一見すると、普通の職場に見える。しかし、ある社員は椅子の代わりにバランスボールに腰かけ、またある社員は赤い紐をたすきのようにかけて、あくせく手を動かしている。


 ここは、健康雑誌『壮快』の編集部。1974年の創刊以来、40年以上も続く日本一の老舗健康雑誌が作られている“現場”だ。


 この日は2月16日に発売された4月号のメイン特集「タマネギで糖尿病を撃退」を作成中のようだ。


 デスクの上には「汚れた血液がサラサラに! タマネギは食べる薬だ」「タマネギの常食で重症糖尿病を克服」などと書かれた原稿が山積みとなっている。


 昼休みになると、ある女性社員は納豆を冷蔵庫から取り出し、おもむろにお酢をかけて食べ始めた。冷蔵庫の中には、ほかにもこうじ水やりんご酢、酢玉ねぎなどの同誌で紹介された健康食品がズラリ。


 創刊から現在に至るまで、『壮快』は「紅茶キノコ」「朝バナナダイエット」「食べる甘酒」など、健康に関する、さまざまなブームを巻き起こしてきた。常に最新の健康術を読者に届けることができる秘訣は一体どこにあるのか。また『壮快』を作る編集部員たちは本当に健康なのか。そして一体どんな生活を送っているのか。


 次々と浮かぶ謎を解き明かすため、『壮快』編集部に潜入した。


 テレビをつければ、『ガッテン!』(NHK)や『名医とつながる!たけしの家庭の医学』(テレビ朝日系)、『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)など、健康番組のオンパレード。書店や新聞広告には「健康になりたけりゃ○○しなさい」といったタイトルが並ぶ。現代は空前の「健康ブーム」である。


『健康ブームを問う』(岩波新書)の著者である飯島裕一さんが解説する。


「平均寿命が伸び、高齢社会の中で『健康になること、健康でいること』が生きる目的になっているような傾向がみられます。そういった志向を助長するように健康情報があふれ、地道に健康作りをするのではなく、健康に関する商品をお金で買おうとする人が増えている」


 実際、健康に関する市場は年々拡大している。日本健康・栄養食品協会が行った特定保健用食品に関する調査によれば、2016年の市場規模は6463億円。1997年の1315億円と比べて5倍近く伸びた。


 しかし、『壮快』編集長の安藤伸剛さん(47才)は、現在の「健康ブーム」に苦言を呈する。



「昔は健康に関する情報を知る手段が少なかった。雑誌と本、そしてテレビの『ためしてガッテン』(NHK)、『発掘!あるある大事典』(フジテレビ系)くらいしかありませんでした。それに比べて、今は情報があふれていますが、その多くは垂れ流しです。テレビ番組にありがちですが、医師が出てきて『○○が体にいいですよ』とアドバイスしただけでは受け手はすぐに忘れてしまいます。体験者の生の声や裏付けとなる実験データがない健康情報は記憶に残らないうえ、信憑性も薄いのです」


『壮快』編集部が最もこだわっているのは「体験談」だ。同誌では、専門家の解説はもとより体験談を必ず記事に入れ込んでいる。


 たとえば2918年3月号の「オクラ水」特集では、51才トラック運転手の越田隆憲さんが登場して、「オクラ水を飲んで血糖値が140mmから90mmに下がり、しかも壊死したひざ軟骨が再生した」という体験談を披露している。


「実際に体験者がいるのが弊誌の強みです。匿名のかたももちろん実在しています。医師や鍼灸師などが健康法を披露するだけでなく、実際にそれを体験した話を入れることで読者に信用していただける。非常に大事なことなので半ば意地になってやっています」(安藤編集長)


 そのため、体験がなければ、どんなに引きがあるネタでも特集はしないと決めているそう。では、貴重な体験者をどうやって探すのか。


「『読者はがき』です。毎月200通ほど読者から送られてくるはがきは編集部員全員で回覧して必ず目を通します。そのうえで『納豆』『りんご』など項目別にストックしておき、関連した特集を組む際に電話や手紙で『取材をさせてくれませんか』と読者にお願いします。もちろん断られる時もありますので、体験者が見つかるまで粘り強く連絡を続けます」(安藤編集長)


『壮快』の読者層は60〜70代女性が中心で男女比はおよそ3対7。50代や80代の読者も少なくない。そんな健康が気になる読者からはひっきりなしに編集部へ問い合わせの電話がかかってくる。


「前回特集の健康法は本当に効きますか」「ひざが痛いので何かいい治療法はありますか」といった内容に真摯に対応するのも重要な仕事なのだ。高齢で耳が遠い読者には編集部員がはがきを書いて“文通”することもあるという。


※女性セブン2018年3月1日号

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