キャストのダンス、歌唱…多彩なドラマエンディングの狙い 

2月18日(土)7時0分 NEWSポストセブン

『カルテット』では松たか子らキャストが歌う(公式HPより)

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 今クール、番組のエンディングにひと工夫加えるドラマが増えている。その傾向と狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが、過去の代表的なドラマのエンディングを振り返りながら解説する。


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 昨年秋、『逃げ恥』の“恋ダンス”がブームになったことで、今期のドラマもエンディングに注目が集まっています。


 ドラマのエンディングは1980年代ごろから、制作サイドが明確な狙いを持って作られてきましたが、ダンス、キャストの歌、フリートーク、マネキン・チャレンジなど、今期ほど多彩な演出が見られるのは異例であり、明らかな変化と言っていいでしょう。


◆最初から最後まで見せる最善策


 今期エンディングの工夫が目立つ最大の狙いは、視聴率と視聴者を増やすこと。もともとドラマ業界では、「完成度と注目度の高いエンディングを作れば、最後まで視聴率が落ちにくい」と考えられてきました。


 たとえば、『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系、2003年)は、雄大な自然を背に主人公が自転車で走る美しい映像が好評でしたし、『アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜』(フジテレビ系、2001年)は、毎週Mr.Childrenの異なる楽曲を使ったエンディングで、「今週はどの曲かな?」と視聴率アップに貢献していたのです。


 さらに昨年あたりから制作サイドが、「エンディングは短時間動画として配信しやすく、ネット上で拡散されやすい」ことに着目。実際、『逃げ恥』に続いて今期の『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)も、エンディングダンスがネット上の反響を集めています。


 また、「冒頭に前週までのダイジェストを見せる形が定着して、テーマ曲を流さなくなった」ことも、エンディングに工夫を凝らす理由の1つでしょう。視聴者に“ながら見”をさせず、チャンネルを変えさせないためには、凝ったオープニングを作るよりも、「ダイジェストのあとにいきなり物語を動かす形にしよう」というスタンスがうかがえます。


◆作品の世界観を象徴。真逆のケースも


 その他にも制作サイドが工夫を凝らしたエンディングを作る、3つの狙いがあります。


 1つ目の狙いは、視聴者に作品の世界観を印象づけること。たとえば、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系、2014年)のエンディングは、ベッドシーンを想像させる過激な映像と、名曲『他人の関係』を重ねて、危うくセクシーな世界観を印象づけました。


 その他では、若手俳優がじゃれ合う姿を映した『木更津キャッツアイ』(TBS系、2002年)、夏の景色と水着の高校生が爽やかな『ウォーターボーイズ』(フジテレビ系、2003年)、原作者本人の写真と文章で涙を誘った『1リットルの涙』(フジテレビ系、2005年)。古くは、小泉今日子さんの『学園天国』に爆笑NG集をかけ合わせた『愛しあってるかい!』(フジテレビ系、1989年)、森田童子さんの哀しげな歌声が印象的な『高校教師』(TBS系、1993年)も作品の世界観を印象づけていました。今期の中では、『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)のエンディングが、ウエディングドレスを着たマネキンが、ホラーのような作品の世界観を物語っています。


 面白いのは、作中の世界観が強烈な作品ほど、中和する意味合いで真逆のエンディングを用意すること。たとえば、『女王の教室』(日本テレビ系、2005年)は作中の殺伐としたムードから一転して、エンディングは天海祐希さんの楽しげなダンスが見られました。「シリアスな作品は、エンディングでホッとさせる」「病気などの暗いキャラクターは、エンディングで明るい姿を見せる」など衝撃を薄めることで「視聴者の気持ちをフォローしよう」という意図が見えます。


◆演出家の力を見せつけるご褒美の場


 2つ目の狙いは、キャラとキャストの親近感アップ。ラストシーンからエンディングに切り替わった瞬間、「作中とは異なる姿を見せて、身近に感じてもらおう」としているのです。


 今期も、『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)のヒロイン・高梨あすか(西内まりや)がマネキン・チャレンジをしている主要キャラの間をいたずらっぽい笑顔で歩き、『バイプレーヤーズ』(東京テレビ系)のおじさん俳優たちがコタツの中で語る「バイプレトーク」は、ともに魅力十分。これまでも、『マルモのおきて』(フジテレビ系、2011年)の蘆田愛菜ちゃんと鈴木福くん、『民王』(テレビ朝日系、2015年)の遠藤憲一さんが踊る姿が、親近感を集めてきました。


 3つ目の狙いは、演出家の個性とスキルを見せること。エンディングにショートフィルムのような美しい映像を撮りたがる演出家は多く、言わば「本気を見せられるご褒美のような場」とも言えるのです。


 たとえば堤幸彦さんは、『TRICK』(テレビ朝日系、2000年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系、2004年)、『H2〜君といた日々』(TBS系、2005年)などのエンディングで、さまざまなコンセプトと撮影テクニックを見せてきました。


 その他で思い浮かぶのは、映写機風のカタカタと揺れる映像の『あぶない刑事』(日本テレビ系、1986年)、色気とユーモアを織り交ぜた『最高の離婚』(フジテレビ系、2013年)、企画・岩井俊二&監督・長澤雅彦のコンビが手がけた幻想的な『なぞの転校生』(テレビ東京系、2014年)などがあります。今期では、メインキャストの4人が歌う『カルテット』(TBS系)がこの系譜と言えるでしょう。


◆あの『半沢直樹』はエンディングなし


 ここまで書いてきたようにエンディングにはさまざまな狙いがありますが、作品のジャンルによっては必ずしも必要なものではありません。実際、キャラクターがシビアにぶつかり合う『半沢直樹』(TBS系)は、緊張感を削がないようにエンディングどころか、主題歌すらなし。このような考え方の演出家も多く、視聴者としても好みが分かれるところでしょう。


 今後も工夫を凝らしたエンディングが制作されるでしょうが、気をつけたいのは「話題先行になりすぎない」ようにすること。かえって視聴者にマイナスイメージを持たれてしまわないためにも、「見終えた」という満足感と、「早く次回が見たい」という期待感を高めるような演出を期待しています。



【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。



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