不倫ドラマのトレンドに変化 “スル妻”から“サレ妻”へ

2月18日(日)7時0分 NEWSポストセブン

『ホリデイラブ』で”サレ妻”を演じる仲里依紗

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 芸能界に不倫騒動が相次いだこともあり、不倫を取り上げるドラマが増えている。その傾向に最近、変化が見られるという。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。


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「サレ妻地獄へ、ようこそ」というキャッチコピー通りの過激な展開で話題を集めている『ホリデイラブ』。同作は、最愛の夫・高森純平(塚本高史)に不倫されてしまう=“サレ妻”・高森杏寿(仲里依紗)を主人公に据えた物語です。


 かつては、不倫に走る妻=“スル妻”を主人公に据え、「まるでロミオとジュリエットのように甘美で切ない純愛として描く」不倫ドラマが多かったものの、今作は真逆のコンセプト。さらに、「不倫を日常に潜む罠として扱った上で、そこから夫婦再構築を描く」という新機軸の物語です。


 思えば、昨年放送された『あなたのことはそれほど』(TBS系)は、“スル妻”・渡辺美都(波瑠)が主人公の物語でした。それ以前も、『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)、『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)、『紙の月』(NHK)など、やはり主流はスル妻。


 しかし、前期の昨秋に放送された『ブラックリベンジ』(日本テレビ系)、前々期の昨夏に放送された『カンナさーん!』(TBS系)は、主人公がサレ妻だったほか、来期の今春に放送予定の『あなたには帰る家がある』(TBS系)でも、主演の中谷美紀さんがサレ妻を演じることが発表されています。


 連ドラの主人公が、スル妻からサレ妻に変わっているのは明らかですが、ここまで急激にシフトしたのはなぜなのでしょうか。


◆スル妻を演じた波瑠にバッシングが殺到


 最大の理由は、やはり芸能人をめぐる不倫報道と、それに対する世間の厳しい目線。この2年間、数えきれないほどの不倫報道があり、世間の嫌悪感情が高まる一方でした。そんなムードの中、かつてのように不倫を“甘美で切ない純愛”として描くと、放送局としても、主演女優にしてもバッシングのリスクが高いのです。


 実際、スル妻を主人公に据えた『あなたのことはそれほど』では、主演の波瑠さんに対するバッシングが殺到し、本人が「しょうもないとか馬鹿とか最低とか言われても、観て感想を抱いてもらうっていうことで私は報われるような気持ちです」「私は美都には共感できないけど、毎日やらなきゃ仕方ない」と釈明のようなコメントを発表する異例の事態に発展しました。


 以降も、週刊誌による不倫報道と世間の処罰感情はいっこうにやむ気配がなく、さらに女優本人と役柄を混同してクレームを入れる人が一定以上いたことで、「少なくともプライムタイムのドラマでは避けたほうがいい」というスタンスになっているのです。


 また、視聴者にとってドラマのスル妻は、「自分は不倫しないけど、作品の中だけで妄想するファンタジー」であるのに対して、サレ妻は「『もしかしたらウチもありえるかも』と感じる、それなりのリアル」。前者が不倫の加害者であるのに対して、後者は被害者であり、現在の風潮を踏まえると、視聴者は被害者側に立って見るほうが安心して楽しめるのでしょう。


 ただ、小室哲哉さんと小泉今日子さんをめぐる不倫報道から、世間の処罰感情が緩和しはじめているだけに、今夏以降の方向性は不透明。しばらくは不倫を“甘美で切ない純愛”として描く可能性は少ない気がしますが、サレ妻ばかりでは飽きられてしまうだけに、再びスル妻が主人公を飾る作品は生まれるでしょう。


◆サレ妻が演技派・仲里依紗の力を引き出す


 ドラマでサレ妻の主人公が増えたもう1つの理由は、演技派女優が輝くから。


「罪悪感を覚えながらも不倫に溺れる」スル妻より、「夫の不倫に怒り、悩み苦しむ」サレ妻のほうが感情は複雑であり、演技の難易度は上。演技派女優にとっては、腕の見せどころと言える役柄なのです。


 たとえば、『ホリデイラブ』でスル妻の井筒里奈(松本まりか)は、「夫・井筒渡(中村倫也)への不満を抱えているため、杏寿の夫・純平を運命の相手と信じ込んでしまう」と感情が一直線。一方、サレ妻の杏寿は、「良き夫と子どもに恵まれ幸せの絶頂から、夫の不倫を知って怒り、離婚を考えたり、思い留まろうとしたり、やはり許せなかったり」と感情が激しく揺さぶられ続けています。


 その点、仲里依紗さんは『あなたのことはそれほど』でサレ妻を好演。泣きわめくのではなく、静かに発せられる怖さを見せて絶賛を集めました。そんな演技ができるからスタッフは『ホリデイラブ』の主演に仲さんを選びたくなるし、視聴者も安心して見られるのです。


 仲さんは同じ俳優の中尾明慶さんと結婚して一児に恵まれるなど、プライベートはドラマ冒頭の杏寿と同じ幸せな家庭。だからこそ、視聴者が「仲さんのような幸せな妻でも一歩間違えたら、杏寿のようになってしまうかも……」と想像できるのが『ホリデイラブ』の醍醐味とも言えるのです。



【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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