【ACTF2017】春アニメ『正解するカド』で3Dと2Dのキャラをどう両立? 効率アップのために管理ツール「Draw Data Manager」を開発!

2月19日(日)21時0分 おたぽる

『正解するカド』キービジュアル (C)TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI

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 2月11日、東京都練馬区の光が丘区民センターにて「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2017」が開催された。このACTFは、15年よりデジタル制作技術に関する情報や機会の提供を目的に実施。本稿では、東映アニメーションによる「『正解するカド』におけるデジタル作画実践編」の模様をお送りする。

 この4月より放送開始予定の本作は、15年にTVシリーズでは東映アニメーション初となる、オリジナルCGアニメーションプロジェクトとして発表した作品。ところが3D(CG)と2D(手描き作画)のキャラクターが混在するシーンが多々あるなど、徐々にその全貌が明らかになってきた。他作品でもそうした3Dと2Dが入り交ざってキャラが描かれる、混在作品の比率が増しつつある中、この作品でも作画オタクの眼力が試されることになるのは間違いない。

 壇上には渡辺正樹(監督:シリーズディレクター)、りょーちも(演出)、小倉裕太(アニメーションプロデューサー)が並んだ。

 まず小倉が、社内のデジタル映像部において「タップを貼ったり、原図をコピーしたりといった事務作業を大幅に削減して、カット袋がない状態で制作してます」と説明。ワークフローについては「デジタル部はシナリオからオンラインまで、全てフルデジタルで作業しています」と触れた(制作部はシナリオから原画までは紙で、それ以降はデジタル化されている)。

 渡辺は制作環境について「最初は13インチの液晶タブレット。絵コンテでは問題なかったんですが、演出チェックをする際に、どうもやりにくいと感じるようになりまして、大きい22インチに変えてもらいました」と説明。「演出チェックが全体の把握といいますか、設定を見ながら、絵やタイムシートを見ながら同時並行で色んな要素をみる工程になりますので、画面内を埋め尽くすようになるわけです」というのが、その理由だ。

 さらに続けて「モニターにタイムシートを出しながらタブレットで絵を動き込みでチェックするような作業が生じるので、モニターは多い方がいいなという感想です。原画マンからは16インチが好ましいとコメントをいただいてます」(渡辺)

 りょーちもは渡辺の話を継いで、「13インチが主流なんですけども、16インチを触ってみてわかるのは、フルで作業してたサイズに、設定を置けるスペースがついてくるということですね。サブモニターでカバーするのもアリなんですけど、2つのモニターだけではカバーし切れないことが作画の方でも往々にしてあるので」と補足。

「そうなると大きめのサイズということになるんですが、22インチの欠点としては、机を完全に占有されてしまうと。動かせないほどの大きさなんで。13インチや16インチのメリットは運べることですね。軽いので。作業に応じて3Dだけではなく、2Dもあるといった部分部分の作業に対応するには16インチがバランスいいかなと思います」(りょーちも)

 そして話題は、各工程のスタッフに素材データを渡す前の「撒き前チェック」に移った。りょーちもは「この作品のレイアウトは3Dをベースにしています。プレスコした音声をコンテ撮に入れて芝居をつけてます」と、自身の「撒き前チェック」を紹介。

「2Dで描くキャラも3Dで構図をつけるんですけど、演出さんが3Dのスタッフとカメラワークを探りながら方向性を決めます。そして決定したのをpsdファイル(『Photoshop』形式)で出力します」(りょーちも)と、この段になって初めてデジタルで管理する素材データが生まれる。

 一方の渡辺は光源の指示から始めるとのこと。「3Dの光源と2Dの光源と背景の光源とでバラバラに作業をすることになりますので、例えば屋外の光源は水色の矢印、屋内はピンク色とか指定しています」。合わせて「3Dで作業するのはどこまでなのか、2Dや背景で作業するのはどこまでなのかも指定します。例えば夏目律は3Dですが、その他のキャラや椅子や屋外は2Dでといった感じです」と話した。

 りょーちもは「演出さんでも作業の割り振りをしたものをベースにやっていきます」と、素材データのpsdファイルを開きながら説明を続けた。

「先程のは1600x900で出力してまして、こちらの1760x990で作業すると解像度が低くなってしまいます。なので若干解像度を上げて1920x1080になるように周囲にのりしろをつけました」。これは、絵が描きこまれていない箇所が見えてしまう、いわゆる「セルバレ」を防ぐ対策を意味する。美術に関しても「そのままスタッフに撒いたらいいのかというと、外に何もないし、窓枠が何なのかわからなかったりするので描き足します」とのこと。

「3Dでもパースがとれているんですが、『CLIP STUDIO』(セルシスのデジタル作画ソフト)にパース定規という便利な機能がありまして、それに順じて2Dキャラを描いていきます。作画監督や演出のPCにも『CLIP STUDIO』が入ってますのでデータを共有できますし、上がってきたラフ原画に指示をつけていくこともできます」(りょーちも)

 渡辺は「レイアウトはこれでよいのかといった確認をしたり、カメラワークとかの指示をつけたりします。そして作画監督がつけてきた芝居ですね、これが正しいのかどうか、を判断して再び作画監督に渡します」と、まずは作業の流れを解説。

「不便だと思うのは、『CLIP STUDIO』のタイムラインと紙のタイムシートとでタイミングが合わないこと。タイムラインを修正した時にタイムシートも修正しなければならないんですね。カメラワークでも同じで、撮影監督にボカしやピン送りの指示をするんですけど、タイムラインには指示を入れるところがないので、一緒に情報を渡せないんです」(渡辺)

 これは『CLIP STUDIO』に限らず、デジタルツール全般にありがちな混乱。りょーちもも「このように煩雑になりやすいというのも要素としてあって、レイヤーに色をつけたり名称のルールを決めたりして統制していくんですけど、デジタルの場合はフォルダの中なので、各psdファイルはどれを指すのかが分かりにくいんです」と応じた。

「紙の場合はカット袋に入っていて、撮影や美術への指示も別々の用紙で入ってますが、psdファイルだと1枚の絵に見えてしまうので、もしレイヤーが非表示になっていたら修正はいらないんだと勘違いする人も出てきます。そこの管理ができてないと事故りますね」(りょーちも)

 さらに話題は、撒いて戻ってきたデータの話へと展開。
 りょーちもは「3Dのキャラの芝居が2Dと連動してる場合は、どっちを優先するかというのを先に決めるんですが、このカットでは2Dのラフ原画を見て3Dに芝居をつけています。原画・動画・仕上げの流れは3Dだと一括なので、(紙の)タイムシートではなく(『CLIP STUDIO』の)タイムラインの中で決まりますし、プレスコの音声のズレもチェックできます」と、戻ってきたデータのチェックポイントを挙げた。

「2Dでの光源は背景のために1灯置けばいいんですけど、3Dとの混用になる場合は各スタッフに光源の指示を出さないといけません。3Dで1灯だけだと、みんな同じ方向にライトを当てられるんですけど、画面の手前に2人のキャラが立っている場合、その間に光源があるようになってしまうので、それぞれに光源を指定しないといけません。そういった細かいところが出てきます」(りょーちも)

 最後に小倉が新規に開発した「Draw Data Manager」を図示し、「サーバーの中にあるフォルダをカット袋に見立てて、各作業工程へ順に流れていく管理ツールですね。各カットがどの状態にあるのかがすぐ分かるようになっています」と、そのメリットを強調。

 親になるデータベースはVFXやCGの業界でよく使われている「SHOTGUN」で、「『Draw Data Manager』とリンクしてて反映されます。進捗について日報、週報、月報まで出せて、外部のスタッフまで『SHOTGUN』を介して作業できます」という小倉の説明に、りょーちも、渡辺もビビッドに反応。

りょーちも「これ、分までじゃなくて秒まで出てますよね。1人1日当たりどれくらい作業をやってるのかまで……」
小倉「サボってるとバレます(笑)。担当者の名前まで小さく出てるんで」
渡辺「この機能やめてほしいんですが……(苦笑)」

 さらに小倉は開発中のデジタルタイムシートにも言及。「まだまだ限りなくシームレスになるところかなと思っています」。締めとして「社内のアンケート結果ですが、デジタルにしても作業速度は変わらないというのが多かったです。やはり高密度にいくらでも描き込めるので、クオリティーと時間との兼ね合いが重要かなと思います」と講演を終了した。
(取材・文/真狩祐志)

■アニメ『正解するカド』公式サイト
http://seikaisuru-kado.com/
2017年4月より TOKYO MX・MBS・BSフジにて放送開始!
TOKYO MX:4月7日より 毎週金曜 22:30〜
MBS : 4月11日より 毎週火曜 深夜3:00〜
BSフジ : 4月11日より 毎週火曜 24:00〜

■アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2017
http://www.janica.jp/course/digital/actf2017.html

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