『武道館』原作・朝井リョウ つんく♂とハロプロを語る

2月19日(金)7時0分 NEWSポストセブン

ハロプロについて語る朝井リョウ氏

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 ハロー!プロジェクトのアイドルグループ・Juice=Juiceが架空のアイドルNEXT YOUを演じるドラマ『武道館』(フジテレビ系、BSスカパー!)が現在好評放送中だ。アイドル業界の裏側を描くこの作品の原作者は、『桐島、部活やめるってよ』などで知られる直木賞作家・朝井リョウ氏だ。ハロプロやつんく♂の大ファンだという朝井氏に、その魅力や、昨今のハロプロについて大いに語ってもらった。


──『武道館』のドラマ化にあたって、つんく♂さんがNEXT YOUのプロデュースを手掛けて、新曲も書き下ろしました。


朝井:まさかずっと好きだったつんく♂さんが、この作品のために曲を作ってくれるとは思ってもなかったので、本当に驚きだったし、うれしかったですね。でも、どこか信じられない部分というか、自分のなかでうまく処理できていない感覚です。


 実は『ハロ!ステ』(ハロプロの情報を発信するYouTubeの番組。毎週更新)なんかもちゃんと見られなくて。メンバーの方々が急に『武道館』の話をし始めると、なぜだか見ていられなくなっちゃうんですよ。もちろんNEXT YOUの曲は大好きなんですけど、自分が書いた『武道館』のためにつんく♂さんが作ったんだ…って考えると、イントロを聴いただけで「ぎゃー!」ってなっちゃって(笑い)。これは原作者ならではの妙な感覚だと思います。


──ある意味、つんく♂さんが好きすぎるがゆえの現象ということなのかもしれませんが、朝井さんが思うつんく♂さんの魅力はどういったものなのでしょうか?


朝井:プロデューサー視点というよりも、ステージに立っているアーティストの視点で楽曲を作っているところです。ファンの人を安心させるような楽曲、つまりリスナーの需要に応えるということではなく、音楽としてカッコいいかどうかが判断基準になっているというか。歌詞の内容も全然アイドルっぽくない。言わばアイドルの楽曲としてまったくマーケティングされていなくて、ぼくはそこに社会への反骨精神を感じるというか、とにかくビンビンきてるんですよ。


 そういう意味だと、今回のNEXT YOUの楽曲はドラマのなかのアイドルグループのために書き下ろした曲なので、むしろマーケティング的な様子はあったとは思うんですが、それでもやっぱりつんく♂さんらしさ全開で、そこは本当にうれしかったし、最高だと思いましたね。


──となると、つんく♂さんがハロプロの総合プロデュースから離れてしまったのは残念ですね…。


朝井:ぼくの場合は、アイドルが好きっていうよりも、むしろつんく♂さんが好きっていう気持ちが強いので、由々しき問題です。


──でも、モーニング娘。に関しては、今後もつんく♂さんがサウンドプロデュースを手掛けることになっています。


朝井:『私のなんにもわかっちゃない』(モーニング娘。’15の秋ツアーで披露された楽曲。音源化はされていない)なんて最高でしたよね! 間奏のダンスに混ざりたい! 卒業するズッキの代わりに腕を拡げて胸を打ちたいですよ……。


──鈴木香音さんを真ん中に配置して、三角形みたいな列を組んでいるやつですね!


朝井:あそこ、ステージっていうよりも祭壇みたいになってますもんね。ああいうものを見ると、やっぱりつんく♂さんの楽曲を求めちゃいます。自分のなかでは、つんく♂さんの楽曲って、ずっと当たり前のようにあり続けてくれたものなんですよ。明日から水が使えなくなったら困るように、つんく♂さんの楽曲が供給されなくなったら生きていけるか不安です。


──つんく♂プロデュースではなくても、たとえばこぶしファクトリーの新曲3曲(2月17日リリースのトリプルA面シングル『桜ナイトフィーバー/チョット愚直に!猪突猛進/押忍!こぶし魂』)なんかは、つんく♂イズムというか、ハロプロイズムがすごく感じられますよね。


朝井:ヒャダインさんの曲(『チョット愚直に!猪突猛進』)に、“カモーナ!”って入ってますもんね。あの曲を聞いて、すぐにヒャダインさんに連絡したんですよ。「“カモーナ!”の元ネタは『そうだ!We’re ALIVE』(モーニング娘。の楽曲)ですよね?」って。そしたら、ヒャダインさんもつんく♂さんへのリスペクトを込めて作った曲だったみたいで「つんく♂さんが好きな人に褒めてもらえてうれしいです」って返事をしてくださいました。


 ヒャダインさんもそうですし、中島卓偉さん(ハロプロの楽曲を多く手掛けているロックアーティスト)もそうですけど、つんく♂イズムを継承している人って、自分もステージに立つ人なんだろうな、と思います。ステージで歌ってこそ映える曲を作れる、というか。なので、つんく♂さんと同じ感覚を持っているアーティストさんがハロプロに楽曲を作ってくれるというのは、つんく♂ファンとしてはとてもとてもうれしいです。


 ただ、素晴らしかったのはJuice=Juiceのファーストアルバム(『First Squeeze!』。シングル曲を集めたベスト盤的内容のディスク1と非つんく♂プロデュースの新曲中心のディスク2の2枚組)。ディスク2はつんく♂さんプロデュースではなかったけど、すごく良かったですよね。松浦亜弥さんの1枚目のアルバム(『ファーストKISS』)って名盤って言われてますけど、松浦さんの歌がうますぎて、それに応えるために制作陣が本気を出したら、すごく良いアルバムになった、っていう話を聞いたことがあるんですよ。Juice=Juiceのアルバムもまさにそれと同じ感覚を抱きました。Juice=Juiceがあまりにも歌えるから、制作陣も嬉しくなってエンジンフル回転になったんじゃないかなって。


 ハロプロってやっぱり実力主義だから、パフォーマンスが良くなってくると、制作陣もどんどん本気になって、さらに素晴らしい作品がなってくると思うんです。そういう部分で、つんく♂さんプロデュースとはまた違った魅力が出てくるんだろうな、という気はします。


──朝井さんは、以前からオーディションが好きだとおっしゃっていますが、最近のハロプロはオーディションの途中経過を映像などであまり見せなくなりました。ファンの間では、オーディションが見たいという意見も多いようですが、朝井さんはいかがですか?


朝井:『ASAYAN』を見て育った身としては、オーディションを見たいという気持ちもあるんですけど、どちらかというと10代後半から20代くらいの人のオーディションにグッと来るところがあったんですよ。それこそ太陽とシスコムーンが結成されたときのオーディションとか、「これ電波少年?」っていうくらいハードだったじゃないですか。今のハロプロのオーディションは10代前半の女の子たちが中心ですが、ぼくはもうちょっと年齢が上の人たちの裏側を見たいと思っているのかも、よりシビアというか。


──となると、『GREEN ROOM』(ハロプロを含むアップフロントグループに所属する女性アーティストのレッスンや舞台裏を紹介するYouTubeの番組。2月から『Girls Night Out』という番組にリニューアルされた)で見せていたハロプロ研修生のレッスン風景なんかは、良かったんじゃないですか? なかなかシビアなシーンもありましたし。


朝井:(ハロプロ研修生のダンスレッスンを担当している)みつばちまき先生がブチギレてるところを見られなくなったのはショック。研修生に質問しているときの、「どんな答えが返ってきても同じレベルでキレる」と決めている感じ、たまらないですよね。


──確かにハロプロの厳しさを垣間見られるシーンがたくさんありました。


朝井:でも、ステージ上の姿がすべてで裏側をあまり見せないというハロプロの美学もあると思うので、本当はレッスン風景なんかは見せたくないメンバーもいるとは思うんですよね…。だから難しいところでもあるんだけど、でも実力主義のハロプロだからこそ、レッスン風景を見たいっていう気持ちもあって。


『GREEN ROOM』が良かったのは、レッスンで苦労しているところをドラマティックに演出するのではなくて、ボイスレッスンやダンスレッスンをそのままトレーニングとして見せていたところだと思うんですよ。それこそ「スキルとはなんぞや」みたいな。別に泣かせるようなドキュメンタリー性はいらないので、アスリートのトレーニング風景を覗き見る感覚で、裏側を見たい気持ちはあります。


──では最後に、現在モーニング娘。の13期メンバーオーディションが開催中ですが、どんなメンバーに入ってきてほしいですか?


朝井:ぼくはとにかくおださく(小田さくら)を追って観てしまうんですけど、その視線を散らしてくれるような人が入ってきてほしいですよね。おださくの「ステージは私にモノよ」感を脅かすような存在を期待したいです。入ってすぐに『Help me!!』のBメロ(小田さくらが担当しているソロパート)みたいなソロパートが与えられたら、おださくも今以上に本気を出して、結果、全員がもっともっとかっこよくなると思うんですよ。12期はアイドルらしいかわいい子が多かったので、13期はアイドルの生態系を崩すようなおださく系統の子を期待しちゃいます。


◇連続ドラマ『武道館』

フジテレビ系 毎週土曜夜11時40分〜

BSスカパー! 毎週水曜夜9時〜


日本武道館の舞台に立つことを目標に活動する女性アイドルユニット「NEXT YOU」。恋愛、人気格差、家族との関係…といった悩みを抱えながらアイドルとして生きる彼女たちは、夢を実現できるのか──。アイドルの裏側に迫った朝井リョウの同名小説『武道館』(文藝春秋)を、ハロー!プロジェクトのアイドルユニット・Juice=Juice主演でドラマ化。BSスカパー!版は、フジテレビ版にオリジナルシーンを加えて放送される。



【朝井リョウ(あさい・りょう)】

1989年5月31日生まれ。岐阜県出身。早稲田大学文化構想学部在学中の2009年に『桐島、部活やめるってよ』(集英社)で小説すばる新人賞を受賞。2013年、『何者』(新潮社)で第148回直木賞を受賞。男性受賞者としては戦後最年少。最新作は2015年の『世にも奇妙な君物語』(講談社)。


(取材・文/相羽真)

NEWSポストセブン

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