いじめやパワハラも減少する「AI時代」に求められる教育

2月19日(月)7時0分 NEWSポストセブン

大前氏がAI時代を語る

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 様々な分野でAI(人工知能)が活用されることで、働き方や学び方、生き方などが大きく変わりつつある。経営コンサルタントの大前研一氏が、AI時代に必要とされる教育について提言する。


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 明治維新150周年という節目に、この国を造り直す「維新」の必要性がある。その「維新」においては、膨れ上がった公務員を大幅に削減することが極めて重要だ。


 公務員の仕事の大半は、AI化によって不要になる。なかでも地方公務員は、47都道府県・1741市区町村が、どこもかしこも同じことをやっている。しかも、地方公務員の仕事の大部分は国からの委託業務だ。その上、各種の届け出や許認可など作業内容に一定のパターンがあってマニュアル化や外注化が可能な「定型業務」が大半で、クリエイティブな能力が必要な「非定型業務」は予算編成やイベントの企画など非常に限られている。


 したがって、中央に業務系のシステムを置き、インターネットで国民が各地方自治体に直接アクセスできるようにすれば、警察、消防、ゴミ収集、公園の清掃といった労働集約型の分野以外の地方公務員は、おそらく現在の10分の1に削減できるだろう。


 同様の理由で、学校で教科を教える先生も10分の1に削減できると思う。なぜなら、今の日本の小学校・中学校・高校の先生は、文部科学省が定めた学習指導要領に基づいて画一的に教えているだけだからである。


 ということは、先生は誰でもよいのである。たとえば、池上彰氏や林修氏のようにわかりやすく教えられる先生の授業をネットで受講できたら、それで事足りる。実際、今は大手予備校でも人気講師による授業映像の配信が当たり前になっている。さらに、学習指導要領に準拠した「AI先生」を導入すれば、講師は生身の人間である必要はなく、ロボットやマンガやアニメで代替できる。


 また、児童・生徒によるいじめや先生によるパワハラの問題もAIのディープラーニング(深層学習)で対応可能だ。全国の学校の過去の事例をコンピューターに入れておき、似たような事例を調べてAIに的確な対処法を聞けば、大方の問題は解決できるだろう。


 では、そういう中で生身の人間である先生の役割は何か? それは親の役割と無限に近いものである。たとえば、人間の徳や倫理、生きる方法、社会のルールを教えると同時に、本人の能力を見抜いて的確な進路指導をすることだ。すなわち「メンター(助言者)」としての役割である。


 さらに重要なのは「答え」を児童・生徒と一緒に考えることだ。それはすでにデンマークやフィンランドなどの北欧を中心に20年くらい前から取り組まれている教育であり、そこでは先生は答えを“上から”教える「ティーチャー」ではなく、児童・生徒に答えを自分たちで考えることを促して議論を活発にする「ファシリテーター(促進者)」としての役割を担う。


 20世紀の教育は、最初から「答え」があって、児童・生徒にそれを覚えさせるトレーニングだった。しかし、21世紀は「答えがない」時代であり、先生も答えがわからない。そこでは、自分で質問して論理を組み立てて答えを推測し、クラスの仲間と議論する中でリーダーシップをふるって周囲の人たちを説得して一つの結論に導く(答えにたどり着く)能力が求められる。


 先生は、そういう能力を児童・生徒から引き出すために、「君はどう思う?」「あなたの意見は?」というように平等な議論のプロセスを主導する存在に徹しなければならないのだ。もちろんクラスの中でそういう議論を推進する能力のある児童・生徒がいれば、どしどし役割を入れ替わって“リーダーシップ”を発揮してもらう。それを見抜くのも指導者の役割、ということになる。


 たとえば「21世紀に繁栄するのはどの国か?」という質問があったとする。世界190数か国のうち、どの国が有望かという議論が進む中で、「国という単位で考える必要はないのではないか」「繁栄するのは国ではなく地域ではないか」といった議論に発展することが期待される。


 あるいは、コロンブスについて学ぶなら「1492年にアメリカ大陸を発見」というだけの知識ではなく、「なぜ、あの時代に大航海が始まったのか」という質問からスタートして、要はヨーロッパ列強が他国の資源、労働力、市場を支配して富を収奪する植民地時代になったのであり、そう考えると、今の中国の広域経済圏構想「一帯一路」は21世紀の新植民地政策ではないか、というところまでつながっていくことが望ましい。


 つまり、質問に隠されている問題点を見抜いて全く新しい考え方やものの見方を提示できる──それが21世紀に求められる最も重要な能力なのである。


※週刊ポスト2018年3月2日号

NEWSポストセブン

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