安倍政権内部で新型肺炎は“神風邪” 憲法改正に利用の動きも

2月19日(水)7時0分 NEWSポストセブン

厚労省に差し入れをする岸田氏(時事通信フォト)

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 感染拡大が続く新型肺炎をめぐっては、医師、検疫官、チャーター便のクルーたちが官民挙げて献身的な水際作戦を展開している。その一方で、現場から離れた“安全地帯”である永田町の惨状は、目を覆いたくなるばかりだ。


 安倍政権は中国湖北省に滞在経験のある外国人の入国を禁止する一方、政府チャーター便を派遣して武漢から邦人を帰国させるなど、素早い対応を取ったように見える。


 だが、政権内部では新型肺炎をひそかに「神風邪」(カミカゼ)と呼んでいるのだという。自民党ベテラン議員が語る。


「安倍総理にはまだ悪運がある。本来なら、今国会はIR汚職や桜を見る会問題などの不祥事追及で窮地に陥ってもおかしくなかった。そこに新型肺炎の流行で国民の関心が外に向いた。官邸は上陸を水際で食い止めることができれば支持率も上がると張り切っていて、武漢からの政府チャーター便を国会審議の時間帯に合わせて帰国させるなど、巧妙に利用している」


 事実、チャーター便の第一便が到着したのは、ちょうど参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫氏が「桜を見る会」問題を追及したタイミング。安倍側近の世耕弘成・参院幹事長は、「このシチュエーションで感染症について質問をしない感覚に驚いています」とツイートし、“疑惑追及より新型肺炎が重要”とアピールしてみせた。


 その一方で、情けないのはポスト安倍に名前があがる次期総理候補たちだ。国の危機は手腕の見せどころのはずなのに、加藤勝信・厚労相はクルーズ船への対応が後手後手に回って指導力を発揮できず、茂木敏充・外相は、日本の感染者数を少なく見せるために、報道機関にクルーズ船の感染者を「国内感染者数」に含めないように要請するのに躍起。


 岸田文雄・政調会長はいち早く党の対策本部を立ち上げたものの、やったことは満面の笑みを浮かべてカップ麺の箱を抱え、対策にあたる厚労省の役人たちに差し入れするパフォーマンスだった。


 新型肺炎の流行で4月に予定されている習近平・中国国家主席の国賓での来日が微妙になっている。これも、「総理の支持基盤である保守派には国賓招待に批判が強いだけに、延期なら好都合」(自民党議員)という。


 その挙げ句、自民党には国民の不安に便乗して新型肺炎を憲法改正に利用しようという声まであがっている。


 自民党の憲法改正案には大規模災害やテロ対応などで私権を制限して政府に強い権限を与える「緊急事態条項の新設」が盛り込まれている。


 伊吹文明・元衆院議長が会合で、「(新型肺炎は)緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えたほうがいいかもしれない」と発言すると、下村博文・前自民党憲法改正推進本部長も、「(新型肺炎拡大を)議論のきっかけにすべきではないか」とぶち上げた。


 政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。


「政府は感染が拡大するクルーズ船の乗客全員の検査をもっと早くやるべきでした。それなのに検査の人員を出し惜しんで時間がかかった。行政の対応がこれでは、たとえ緊急事態条項をつくっても同じことが繰り返される。必要なこともやらずに憲法改正など火事場泥棒の発想でしかない」


 最前線で戦う人たちの思いに、この政権は応えられていない。


※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号

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