年に一度、旬の演者が大ネタをぶつけ合う贅沢な落語会

2月20日(火)16時0分 NEWSポストセブン

贅沢な落語会が目指すものは?

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 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、毎年12月に自身がプロデュースする、大ネタをぶつけ合う贅沢な会についてお届けする。


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 毎年12月に僕がプロデュースする「恵比寿ルルティモ寄席」は旬の演者による大ネタを4席ずらりと並べるのがコンセプト。


 2014年の第1回は桃月庵白酒『芝浜』/三遊亭白鳥『隣の町は戦場だった』/柳家三三『富久』/橘家文左衛門『文七元結』、第2回は春風亭一之輔『芝浜』/三遊亭兼好『富久』/白酒『井戸の茶碗』/文左衛門『子別れ』、第3回は兼好『ねずみ』/一之輔『文七元結』/白酒『二番煎じ』/(文左衛門改め)文蔵『芝浜』。このコッテリ感は半端じゃないが、年に一度くらいこういう会があってもいいと思っている。


 僕は、二人会や三人会をプロデュースする際には「こしら・一之輔」とか「こしら・萬橘・馬るこ」とか、組み合わせの妙にポイントを置くが、このルルティモ寄席は、今はなき「東横落語会」の再現を目指している。1985年に終了した「東横落語会」は小さん、志ん朝、談志、圓楽、小三治らが大ネタをぶつけ合う贅沢な会で、これに通ったことで僕は落語にのめり込んだ。


 昨年12月18日に行なわれた第4回のトップバッターは三遊亭兼好で『紺屋高尾』。久蔵が自分は職人だと打ち明ける場面での「この3年、花魁に会えると思うと毎日が楽しかった。だから嘘でもいい、3年経ったらまたおいでって言ってください。その言葉を胸にまた3年、一所懸命働いて、誰よりも幸せに生きていけるんです」という台詞が胸を打つ。笑いの多い演出が爽やかな感動をもたらす珠玉の逸品だ。


 続いては春風亭一之輔の『富久』。古今亭系統の演出に一之輔特有のダイナミックな感情表現を導入、運命に翻弄される幇間の姿を劇的に描いた。前半の火事見舞いの場面でこの久蔵という幇間が「酒には弱いが愛すべき男」として表現されているのが後半の展開に活きている。


 3席目は桃月庵白酒の『居残り佐平次』。口がうまくて調子がいい佐平次の抜群の軽さが魅力だ。ラストは佐平次が「この金で蕎麦屋でもやろう」と言い捨てて去り、それを知った旦那の「蕎麦屋? 畜生、一杯食わせやがった」でサゲ。このルーツは亡き古今亭石朝だという。


 毎年トリはこの人と決めている橘家文蔵、今回の演目は『らくだ』。強面の豪快キャラと繊細な演技が相まって迫力満点、屑屋が単なる被害者ではなく少々変わり者に描かれていてカラッと笑える。立場が逆転して途端に弱気になる丁の目の半次が可愛く見えるのが素敵だ。


 四者四様、聴き応え満点のスペシャルな一夜となった。今年の暮れもこの4人が揃う予定だ。


●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。


※週刊ポスト2018年3月2日号

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