【アニメレビュー】オリジナル展開で少しだけ救われた、切なく悲しい『鬼平』第七話「瓶割り小僧」

2月21日(火)22時0分 おたぽる

テレビ東京「あにてれ」、『鬼平』公式サイトより

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 ちょっとサービスシーンもありつつ、笑わせてくれた第五、六話とは打って変わって、「現代と変わらんな」と胸が打たれる切ないお話が展開されたTVアニメ『鬼平』(テレビ東京ほか)。切ないことは切ないが、楽しめなかったのかといわれると、もちろん今回も楽しめたので、今週も張り切って第七話「瓶割り小僧」を紹介してみたい。

 悪名高い盗賊「蝮の新兵衛」の一味と思われる石川五兵衛を捕らえたものの、頭も口もよく回る五兵衛を相手に取り調べは難航。仕事のできる同心・小柳や、長谷川平蔵の右腕的存在の与力・佐嶋まで言いくるめられてしまうほど。興味を持った平蔵は、五兵衛の顔を覗き見る。するとその顔には見覚えがあった……。

 アニメ公式サイトなどでは今話のあらすじをこんな感じで説明しているが、物語は平蔵の夕餉の一コマを描いたアバンからスタート。上手そうな鮎が登場、今週もアバンから飯テロかよと思わせておきながら、平蔵が養っているお順が両親に構ってもらいたくてついうっかりお膳を蹴飛ばしてしまう。

 普段は義理の娘・お順に甘々の平蔵だが飯に関してだけは厳しい。思わず本気で怒鳴りつけてしまい、以後しばらくお順の機嫌が戻ることはなかった、というのが物語の導入部。何てことはないエピソードに見えるのだが、これがまたうまいこと、平蔵が池波正太郎の他の江戸もの小説の主人公たちと同様に食べることが大好きなこと、養子なのに親子関係が良好であることを短い時間の中で説明しつつ、物語後半に向けての伏線ともなっている。

 さて、物語は平蔵が「本所の鬼鉄」と呼ばれ、近所で暴れまわっていたころの回想へ。その頃からよく回る頭と口を持っており、大人も簡単に言い負かすほどであったが、家では母親の新しい男=クズな義理の父親からひどい虐待を受けていた五兵衛こと音松。平蔵は父親にぶん殴られているところを助け、「何かあればすぐ役宅に来い」と声をかける。

 実の父親を亡くしていた音松は平蔵を父のようにも兄のようにも感じるのであったが、平蔵が役目(仕事)で京都へ出かけている間、父親の虐待はエスカレート。母親にまで暴力を振るわれることに耐えかねた音松は、弾みで義父を刺殺してしまう。ところがその母親からは「お前なんか産まなきゃよかったよ!」と叫ばれてしまう。失意の彼は「鬼平のせいだ」と恨みに思いながら、江戸の町を飛び出すのだった。

 現代でもニュースなどで耳にするような展開が実に辛いが、さらにここから一捻り。お調べ中に、偶然にもお順の姿を見かけた五兵衛こと音松。おさな子の姿を見て改心した、一味のことを白状するからと、再びお順と遠目からでも会うことを要求する。まんまとお順を引き出した彼は、「お前は娘ではない! 盗賊の子だ!」と叫ぶ。

 平蔵を逆恨みする五兵衛こと音松の復讐にさらされたお順は、ショックのあまり姿を消してしまう。同心・密偵総動員でのお順捜索の最中、平蔵は何かに思い当たる。それは彼がお順を怒鳴りつけてしまったこと=鮎。お順は鮎を捕まえようと河に飛び込んでいたのだ。間一髪、平蔵に救われたお順。最後の復讐も実らず、平蔵の言葉に涙した五兵衛こと音松は、素直に「蝮の新兵衛」一味のことを白状。最後に一度だけ平蔵に抱きしめられ、笑顔で磔の刑を受け入れる。

 平蔵の「誰かがもう少しだけお前を見てやっていれば」というセリフが、なんとも悲しいエピソードとなった「瓶割り小僧」。原作小説では、このエピソードにお順は大して絡んでおらず、お順の出生と五兵衛こと音松をうまく絡めたのはアニメ制作スタッフの仕事と思われる。冒頭のアバンも含めて非常に上手い脚本だったと思う。

 また、本来は救いのないお話のままで終わるところを、お順を絡ませたことで、最後は父娘が仲直り、相変わらず娘には甘い平蔵であった、というオチがついたことで、少しだけ救われるように調整していたのも良かった。月曜深夜に、救いのないまま終わってしまったら精神的ダメージも大きすぎる。

 TVドラマでは45分程度で描かれてきた『鬼平犯科帳』の物語を、TVアニメとして20分ちょっとにまとめるのはかなり難しい作業だろう。詰め込みすぎ、あるいははしょったなと感じる原作ファンは多いだろうし、実際この「瓶割り小僧」でもちょいちょい変更されている部分はあるのだが、それでも見応えのあるドラマであった。

 その分殺陣アクションは短めだったが、お順を助けるために川に飛び込んだ平蔵は格好良かった。何気にこういったアクションも、飯テロ作画も高クオリティを保っている『鬼平』。次週の「大川の隠居」は後味の良い愉快なお話だったはずなので、ギャップを楽しんでみたい。

おたぽる

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