中学受験 難関私立より公立中高一貫校、という選択

2月21日(火)7時0分 NEWSポストセブン

公立中高一貫校は志願者数が減っても狭き門に

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 中学受験シーズンが終わり、今年も女優の芦田愛菜(12)が都内の名門私立中学に合格するなど大きな話題となったが、近年、中学受験において大きなシェアを占めるのは「公立中高一貫校」だ。中には難関私立中学や有名私立大学の付属校に受かっても公立中高一貫校を選ぶ家庭もある。


 安田教育研究所代表の安田理氏が、公立中高一貫校の「いま」をレポートする。


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 現在首都圏には年々増えて21校もの公立中高一貫校がある。東京が11校、神奈川が5校、千葉が3校、埼玉が2校である。また、公立中高一貫校には中等教育学校(高校募集がなく6年間同じメンバーで学ぶ)と高校募集がある併設型と呼ばれる学校がある(○○中学校とか○○高校附属という校名になっている)。


 公立中高一貫校の入試は、開校初年度は、小学校の学習範囲からしか出題されない「適性検査」(教科別の問題ではなく融合問題)ということで、ダメ元で大勢が受けるため(地元の小学校では全員が受けたなどというケースもあった)大変な倍率になる。それがきちんと準備しなければ受からないということがわかり、年々倍率が低下するのがふつうだ。


 終わったばかりの2017年度入試を見てみよう。もっとも倍率が高かったのは昨年開校した千葉県立東葛飾の12.0倍で、もっとも低かったのは川崎市立川崎の4.4倍である。因みに難関とされる都立小石川中等教育は6.4倍、千葉県立千葉9.6倍であった。


 前年より倍率が上昇したのは、東京の都立立川国際中等教育、都立富士高校附属、千代田区立九段中等教育、神奈川の県立相模原中等教育、県立平塚中等教育、千葉の千葉市立稲毛高校附属、埼玉の県立伊奈学園、さいたま市立浦和の8校で、他の12校は下がっている。


 このほか今年新設された横浜市立横浜サイエンスフロンティアが8.6倍となっている。

私立の難関中学は2〜3倍のところが多いから、倍率が年々低下しているとはいえどこも大変な狭き門である。


◆公立中高一貫校 首都圏ではどこが人気? どこが難しい?


 公立中高一貫校の募集人員は80名から160名まで幅があるのでどこが人気があるとは一概には言えないが、今年応募者が1000名を超えたのが、県立相模原中等教育と横浜市立南、前年1000名を超えたのが、この2校に加えて都立桜修館中等教育、都立三鷹中等教育、都立小石川中等教育、都立両国高校附属の4校。一応これらが人気校と言っていいだろう。


 次に難度であるが、中学入試の模試による位置づけでは、男女とも県立千葉、都立小石川中等教育が3模試とも高いことは共通している。あとは模試によりバラバラである。また、「適性検査」は長い文章を読み、記述の分量も多いことから、応募者は女子のほうが多いことがふつうだが、都立小石川中等教育、都立武蔵高校附属、県立相模原中等教育、県立千葉、県立東葛飾といった難しいとされるところは男子のほうが多くなっている。


◆私立中学と併願する受験生の多い学校、少ない学校


 公立中高一貫校のスタート時は、落ちたら地元の公立中学校に進学する人が多かったが、

2年、3年と塾に通って準備をして受けると、それを無駄にしたくないということで私立中学校も併願する人が増えてきている。


 逆に、私立中学を本命として勉強してきたが公立中高一貫校も受ける人もあり、おおよそ公立中高一貫校受検者(適性検査を受けるということで、公立中高一貫校の場合は「検」を使う)の25%くらいが私立中学も受けているとみられる。


 東京都教育委員会は、都立10校について、試験当日の欠席者数、合格発表後の辞退者数を公表しているので、それを見てみよう。


 10校平均の欠席率は4.1%。学校別では都立小石川中等教育が7.8%、都立武蔵高校附属が6.7%と高くなっている。10校全体の辞退者数は合計87人(男子33人、女子54人)で、都立10校がそろった2010年度以降では2番目に少なかった。


 このうち男子の3分の1(11人)、女子の半数近く(26人)が都立小石川中等教育の辞退者。同校は男女計37人と、過去最多の辞退者を出した。次いで都立桜修館中等教育が12人、都立両国高校附属が11人となっている。逆に都立富士高校附属は、辞退者が男女ともにゼロだった。都立三鷹中等教育も2人、都立南多摩中等教育も3人と少なかった。こうしたところからも併願している私立中学のレベルの違いを見て取れる。


 私立中学側でも、公立中高一貫校は平均6倍にもなって不合格者が大勢出るので、受検者に併願してもらおうと「適性検査型入試」を行うところが年々増えている。


 特待生として合格すれば学費免除ということで、学費の点で私立中学をあきらめることがないようにしている。当初は実施校は東京の西部だけに限られていたが、いまでは3県にも広がり、2017年度入試では110校もが実施しているほどである。


◆志望者が減っても、難度が上昇しているのはなぜ?


 公立中高一貫校を選ぶ最大のメリットは言うまでもなく学費が安いこと。開成など難関校、有名大学付属校を蹴って進学する人が毎年結構いるのもこれが一番大きいだろう。


 それに加えて各校それぞれに工夫を凝らしたレベルの高い教育を行っていることが挙げられる。国がグロ−バル人材養成のために始めたSGH(スーパーグローバルハイスクール)にも、横浜市立横浜サイエンスフロンティア、横浜市立南が選ばれている。


 特色のある教育を行っている学校も多い。例えば、都立桜修館中等教育では高2で5000字程度の研究論文を書かせ、高3ではそれを英訳させている。また、海外研修というと私立中高一貫校のイメージだが、公立中高一貫校でも都立小石川中等教育、都立両国高校附属などは実施していて、この点での私立との差はなくなっている。


 次にあまり知られていないが、実は大学合格実績がスゴイ。2010年に開校した都立大泉高校附属、都立富士高校附属、都立三鷹中等教育、都立南多摩中等教育の4校すべてが2016年春の第1期生で東大合格者を出したのだ(富士が2名のほか、他は1名。このほか大泉が京大2名、三鷹が京大1名)。卒業生数が少ないので絶対数ではあまり目立たないが、率ではすごいものがある。


 つい最近発表された2017年の東大の推薦入試、京大の特色入試、東工大の推薦入試においても、県立相模原中等教育が東大と東工大に、都立小石川中等教育が京大に、都立桜修館中等教育と横浜市立横浜サイエンスフロンティア(中高一貫の卒業生ではないが)が東工大に合格者を出している。こうした卒業生の進学実績も公立中高一貫校を選ぶ大きな理由となっている。


◆公立中高一貫校の今後はどうなる?


 2016年千葉県立東葛飾、2017年横浜市立横浜サイエンスフロンティアと開校が続いたが、21校にもなったので、今後はさいたま市が大宮西高校を中等教育学校にする計画があるくらいである。これからの開校なので、グローバル化の先進校として国際バカロレアの認定を目指すとしているので、これも大いに注目されることになるだろう。


 中学受験の保護者と接していて感じるのは、保護者自身が以前のようにこれから賃金が上昇し続けるとは思っていないことだ。いつリストラがあるかわからない、いつ企業合併があるかわからない、いつ外国人社長になるかわからない……。そこで、どの段階で教育に投資するか今まで以上に考えるようになっている。


 実際、「わが子は理系が向いていると思う。理系だったら国立大学に進ませたい。難関国立ならば大学院までがふつうだ。そこでかかるのだから、中等教育段階では安い公立中高一貫校に進んでほしい」そう言われたことがある。


 これからは一段と大混迷の時代に入る。年金も先送り、もらえる額も減少するとなれば、保護者自身が自分の老後が心配になる。これまでのように子どもの教育にばかりかけてはいられない。


 そうした社会背景から考えれば、これからも公立中高一貫校へのニーズは高くはなっても、低くはならないのではないだろうか。

NEWSポストセブン

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