68才と59才カップル 行きずりの旅行客に“夫婦”と嘘ついた理由

2月21日(水)16時0分 NEWSポストセブン

旅先で出会った熟年夫婦は実は…(イラスト/アフロ)

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 旅先での見知らぬ人との交流は楽しいものだが、女性セブンの“オバ記者”こと野原広子(60才)は、不思議なカップルに先日会ったという。その嘘に微妙な心の機微を感じた。


 * * *


 年末、友達のY子(48才)と行った静岡県・伊東のホテルでのこと。夕食のバイキングで、私たちの横のテーブルから、「生ビールも飲み放題っていいですよねぇ」と声をかけられたの。


「T美」と名乗る彼女は68才。ぴかぴかの肌つやで、高齢者というより中年まっただ中といった印象。


「ワゴン車に布団を積んで、夫婦で全国を回っているの」と言う。いわく、この日こそホテルに泊まったけど、ふだんは道の駅の駐車場で寝泊まりして、「旅ばかりしている」んだって。


「いいなぁ」と身を乗り出す私に、ご主人のA男さん(59才)は無言でニコニコ。


 見た目はメタボ気味なのに、びっくりするほど動きが素早くて、酒の強い女3人のグラスが空くと彼は、飲み放題のビールや酎ハイをせっせと運んできてくれたりする。内心、こんな男性が家にいたらいいなと思ったわよ。


 その後、カラオケルームに移動して、聞けばふたりは再婚同士。


「結婚7年目。あはは。まだまだ新婚に近い感じかな」とA男さんがT美さんに身を寄せれば、T美さんもA男さんのはだけた浴衣の胸元を合わせたりして、仲睦まじいなんてもんじゃない。


「よほど仲良くないと、夫婦で車の中で布団敷いて寝られないよ。私らみたいに女同士でつるんでいたら、そんな男の人と永遠に出会わないわ」と私たちが大きなため息をつくと、「いえいえ、こればかりは縁」とT美さんはどこか得意げ。


◆「うちに遊びに来てね」と小指を出してウインク


 なんでも彼女は、ずっと熟年女子仲間の幹事役で、毎週末のように飲み歩いていたんだそう。


「それがさぁ、おれが出てきて、うふふ、大変だったんだよな」


 A男さんはそう言って不敵な笑みを浮かべる。



 T美さんは、「友達の飲みの誘いを2、3度断ったら、『おかしい』と仲間から一斉に責められて、彼との交際を仕方なく白状。そしたら、『9才も年下! 身元、ちゃんと確認したの?』と言われたり、『孫がいるのに、何やっているの』とバカにされたり」とうつむきながら、でもうれしそう。


 結婚までは山あり谷あり、大波小波で、やっと結ばれたんだって。


「だから今はすごく幸せ。そうだ、今度うちに遊びに来てね」


 そう言って、彼女は小指を出したの。鮮烈だったのは、翌朝の朝食の席。


 私とY子はドすっぴんなのに、T美さんはバキッとフルメイク。「年下の男性と恋愛した人は、心がけがちがうわ」と言うと、「朝起きたらすぐメイクするのは、女なら当たり前じゃない?」だって。


◆えっ!? 「再会、お断り」!?


 東京に帰ってしばらくして私は、T美さんに「近いうちにおうかがいしてもいいですか?」とメールをした。T美さんの温かい笑顔に会いたくなったのよ。車で全国を回る“ヤドカリ旅”の話ももっと聞きたいし、女として爪のアカを分けていただきたい。


 ところが、半日以上たってから届いた返信は──。


「お誘いはうれしいけど、来られるのは困ります。また伊東で会いましょう」


 文面から“迷惑”という二文字が透けて見えるんだわ。


「了解。またいつかどこかで」と返信したものの、腑に落ちないったらない。あのときの熱心なお誘いは何だったのよ?


 すると翌日、またT美さんからメールが来て、「夫婦と言ったけど、実は結婚はしていないんです」。まさか、旅先の約束を真に受けられるとは思っていなかったみたい。


 さっそく同行したY子に、居酒屋で湯豆腐をつつきながらその話をすると、「やっぱりねぇ。夫婦にしては仲が良すぎたもの。でも、なんで行きずりの私たちにウソをついたんだろう」と不服そう。


「きっと、行く先々で“夫婦”と言っているんじゃない?」「なんのために?」「そのときだけ“夫婦”になりたくて、じゃないの?」


 そう言うと私は、熱い焼酎をグイと飲んだ。


 あれからよ。温泉地で仲良し高齢カップルを見ると、「夫婦気どり?」と疑うクセがついちゃって。意味なく胸がざわつくんですけど。


※女性セブン2018年3月1日号

NEWSポストセブン

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