観光客過去最高の名古屋 “自虐大作戦”の取り組みが奏功

2月22日(木)16時0分 NEWSポストセブン

名古屋が愛され都市に変貌できた秘密は?

写真を拡大

 城郭の前では服部半蔵らに扮するイケメン忍者隊がお出迎え。「ゆるりと楽しんでくるのだぞ」とポーズを決めると女性客からは「キャー!」と黄色い声があがる。カメラのシャッターを切る外国人旅行客は「ファンタスティック!」と歓声を上げた──。2月中旬の昼下がり、平日にもかかわらず、名古屋城は5月からの木造復元工事を前にして観光客で溢れかえっていた。この盛況ぶりに名古屋城観光ガイドボランティアの栗田正昭さん(73才)が笑う。


「名古屋城は2016年度には191万人を超える来場者が。皆さんに来ていただけるのは本当にありがたい」


 名古屋城だけでなく、今名古屋が沸きに沸いている。1月22日、名古屋市は2016年度に訪れた観光客数(推計)が過去最高の4727万人となったと発表した。


 名古屋市といえば、かつて都市ブランド・イメージ調査で「行きたくない街NO.1」という不名誉な称号を獲得。また週刊誌などで「名古屋ぎらい」大特集が組まれ、今や全国的にネガティブなイメージが広まっている。


 そもそも、名古屋はなぜここまで嫌われたのか。「名古屋ぎらい」は、1980年代にタモリが「東京と大阪に挟まれて独特のコンプレックスがある」「名古屋人はエビフライをエビフリャーと呼んで好んで食べる」などと揶揄したことが始まりだ。


 名古屋ぎらいの記事では、「名古屋人は見栄っ張りで結婚式を派手にしたがる」、「天むすやトンテキなど、名古屋飯とされているものが実は三重県発祥だった」という“パクリ”疑惑などが報じられた。その他にも「多くの車がウインカーを出さずに車線変更し、クラクションを鳴らしまくる」という“名古屋走り”や「エスカレーターでは他の都市のように、急いでいる人のために片側を空けることはせず、両側とも歩かず立ち止る」、「新装開店の時に贈られる祝い花を抜き取って持って帰ってしまう」など、他県からすれば驚きの習慣が伝えられた。


◆名古屋走りが消えた!


 その名古屋がいつのまにか“愛される都市”へと変貌を遂げていたというニュースを聞いて、その真相を確かめるべく、本誌・女性セブン記者は名古屋へと向かった。


 名古屋駅から繁華街に向かってタクシーで“名古屋名物”の100m道路(※横幅が100m以上の大きな道路。名古屋と広島にのみ存在)を走っていると、どの車もきちんとウインカーを出してから車線変更し、クラクションの音も聞こえてこない。さらに、名古屋随一の繁華街・栄にある老舗デパート・三越では、買い物客がエスカレーターの右側をきれいに空けていた。


 一方、あるスナックの前に真新しい開店花が置かれている。通りがかりの女性が慣れた手つきで花を抜いていく。彼女に話を聞くと「えっ!? 開店花を持っていくのはお祝い。花がないのは繁盛店の証だから」と涼しい顔。この風習は変わってないようだ。


 名古屋市民たちが「行きたくない街No.1」に選ばれたことに対して危機感を持っていないわけではない。60代男性が言う。


「最初は腹がたった。でも、途中から嫌われる自分たちにも理由があるのではと考えた。例えば芸能人が全国ツアーを回った際、“名古屋はノリが悪いから二度と来たくない”と言うらしい。“ヒューヒュー”とか言うのが恥ずかしいだけなんだけど…。年寄りは今さら性分を変えられないけど、せめて孫にはライブに行ったら積極的に盛り上げろって言っているよ」


 50代のタクシー運転手は名古屋のために努力を重ねる。


「名古屋の魅力を外から来た人に伝えたいと思い、ガイドの資格を取る勉強を始めました。名所を巡るコースの組み立て方などを学んでいます。勉強しているうちにわかったことなんですが、名古屋には観光地はたくさんあるのですが、“目玉”がないと感じるようになりました」


 実際、名古屋市には観光資源がないわけではない。名古屋城をはじめとしてイケメンゴリラ・シャバーニ君で全国区となった東山動植物園、熱田神宮、2017年にオープンしたレゴランド・ジャパンなど、優良コンテンツがあるにもかかわらず、「名古屋には見るべきものはなにもない」との市民の声は多い。この批判を行政はどう捉えているのか。名古屋市観光文化交流局のナゴヤ魅力向上室室長の田頭泰樹さんが言う。


「名古屋が“行きたくない街No.1”に選ばれたときのアンケートで、市民からの“当然だ”“仕方がない”という声が8割ありました。また、自分の街を他人におすすめしますかというアンケートでも“おすすめしない”が圧倒的。“名古屋なんて…”と思っている市民がこんなに多いのかとショックを受けました」


 そこで名古屋市民の意識を改革すべく立ち上がったのが「ナゴヤ魅力向上室」である。


「市民が名古屋を好きになり、“名古屋に来てね”と心から言えるようにならない限り、役所が何をしても変わらない。名古屋市民はプライドが高いのに自慢が下手。大阪は“たこ焼きなんて別においしくないやん”と言いながらも、観光客には“おいしいから食べてって”と強くアピールできるのに、名古屋はどんなにいいと思っていても“いや、つまらないものです”と言ってしまう。そのメンタルを変えようとスタートしました」


 その典型例が東京で人気となっている名古屋生まれの『コメダ珈琲店』や台湾ラーメンの有名店『味仙』だ。自分たちが日常的に食べているものが、東京では行列ができているということを聞いて、初めて目を向ける。


 魅力向上室では、そんな名古屋人の気質を逆手にとり、メディアを使ってアンケート結果を拡散したり、市民を巻き込んだイベントを展開したりして、あえて負の要素を強調した市民への“自虐大作戦”を展開した。


「“なぜ私たちは、友人・知人に名古屋に訪れることをすすめられないのか”をテーマに『ナゴヤ・プロモーション会議』を創設したり、名古屋工業大学が開発したネット対話システムを使い、市民230万人による大討論会を行ったりして、“無名より悪名が勝る”を体現しました」(田頭さん)


 そうした活動によって、少しずつ市民の心に変化が生まれたのだという。「まだまだ名古屋には伸びしろがある」と田所さんは語気を強める。


「入場料が高すぎると話題になったレゴランドは、今年ホテルと水族館が併設され、さらなる集客が期待できる。3月には名古屋城の入口には食べ歩きができる“金シャチ横丁”も誕生します」


 今後に向けて期待は高まるばかりだ。


※女性セブン2018年3月8日号

NEWSポストセブン

「名古屋」をもっと詳しく

「名古屋」のニュース

BIGLOBE
トップへ