文太、松方、千葉、梅宮ほか『仁義なき戦い』シビれる名言集

2月23日(木)7時0分 NEWSポストセブン

松方弘樹もしびれるセリフを残した

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 1973年1月13日、映画『仁義なき戦い』(深作欣二監督)が公開され、圧倒的な人気を呼んだ。シリーズ5作品は公開から40年以上が経った今も、ソフト化作品の人気がまったく衰えていない。その最大の魅力は、脚本家・笠原和夫が書き、男盛りの役者陣が魂を吹き込んだ「名セリフ」にある。


『仁義なき戦い』は、実際に起きた広島ヤクザ戦争の当事者である美能組・美能幸三元組長の獄中手記をもとに映画化された。戦後の日本を震撼させた抗争劇が、謀略や裏切りのエピソードと共に生々しく描かれる。


 第1作『仁義なき戦い』(1973年)は、山守組が誕生し、広能昌三(菅原文太)や坂井鉄也(松方弘樹)ら若者たちが力をつける中、老獪な山守義雄(金子信雄)の策略で、その多くが命を落とすまでを描く。


 第2作『広島死闘篇』(1973年)は、いわば番外編であり、広能が狂言回し的なポジションに下がり、山中正治(北大路欣也)と大友勝利(千葉真一)の2人の若者の対照的な生き方を軸に展開する。ストイックなあまり自死を選ぶしかなかった山中と、戦後派の代表として暴力の限りを尽くす大友は、シリーズにおける鮮烈な光となった。


 そして第3作『代理戦争』(1973年)と、第4作『頂上作戦』(1974年)で、激烈な抗争がクライマックスを迎える。関西の2大組織である神戸・明石組と神和会を巻き込んだ広島の勢力争いは、西日本のヤクザ地図を塗り替えるほどに重要な意味を持った。死者17人、逮捕者1500人という広島抗争は、何ら実りのないまま終焉し、広能も獄中の人となる。


 ここでシリーズは大団円を迎えるはずが、あまりの人気に『完結篇』(1974年)が製作された。脚本は笠原和夫から高田宏治に交代し、広能や武田明(小林旭)の世代から、後を引き継ぐ若い世代への襲名が大筋となった。そして全5作は、どこから切り取って観てもクセになる大傑作として今に名を残す。主要出演者のシビれる名ゼリフを振り返ろう。


●菅原文太(広能昌三役)


【山守さん 弾はまだ残っとるがよう】『仁義なき戦い』


 山守組・山守義雄組長(金子信雄)の謀略により、若頭の坂井鉄也(松方弘樹)は無残な最期を遂げた。その葬儀で広能昌三は「鉄ちゃん、満足じゃなかろう」とつぶやき、銃弾の雨を降らせる。最後に山守に向かって放った言葉は、本作を余韻の残る傑作に高めた。


【あとがないんじゃ… あとが…】『仁義なき戦い』



 山守組と敵対する土居組組長の抹殺を命じられた広能は、山守組長から「これで遊んでこい」と金を渡される。娼婦を買い、ゆきずりの情事に溺れる広能の愛撫は、娼婦が「痛い!」と訴えるほど荒々しい。捕まれば死刑か?──そんな緊迫感が広能を“性の野獣”に変えた。


【トルんなら今ここでトリないや! 能書きはいらんよ、いつでも待っとるよ 】『代理戦争』


 シリーズにおける広能昌三は、血気盛んな若者と老獪な組長たちとの板挟みにあい、常に苦虫を噛み潰したような顔をしている。それでも時折、理不尽な場面になれば青筋を立て、怒髪天を衝く表情に変わる。この落差が作品にメリハリを与え、観客に一体感をもたらした。


●松方弘樹(坂井鉄也役・『仁義なき戦い』/市岡輝吉役・『完結編』)


【神輿が勝手に歩けるいうんなら歩いてみないや、おう!】『仁義なき戦い』


 組員から取り上げたヒロポンを横流しした組長に詰め寄り放たれた、シリーズ屈指の名セリフ。ヤクザの世界で絶対である親(組長)に向かい「神輿」と言い放つ爽快感が、サラリーマンの共感を得た。演じた松方は当時30歳で、この作品が役者稼業の分岐点となった。


【お前ら構わんけ、そこらの店ササラモサラにしちゃれい!】『完結篇』


『完結篇』のシナリオにも、広島県人に聞いても「ササラモサラ」という言葉は存在しない。松方は撮影が終われば大部屋俳優を中心とした「ピラニア軍団」と酒を飲むことが多かったが、そこで耳にした「ササラモサラ(めちゃくちゃの意)」をアドリブで使ったという。


【喧嘩はいつでもできますがのォ、酒は滅多に飲めん】『完結篇』


「毒を以て毒を制す」を実践したのが、『完結篇』における市岡輝吉だ。不倶戴天の敵である大友勝利(宍戸錠)に、あえて「30分だけ飲みましょう」と接近。市岡以上に狂犬である大友はこれを拒絶するが、「喧嘩はいつでもできますがのォ」と丸め込んだ。


●千葉真一(大友勝利役)


【もし、あいつ等が飯食えんようになったら、あんた等も飯食えんような体になってもらいますけん!】『広島死闘篇』


 村岡組が警備を担当する競輪場において、大友一派は爆破などの行為を繰り返す。これを見かねた市議会は大友を説得するが、大友の答えは「わしンとこの若いもんにはレースで飯食うちょるもんも大勢おりますけんの」と、木刀を片手に聞く耳を持たないのである。


【わしらうまいもん食うてよ、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの】『広島死闘篇』


 梅毒で脳を侵され、シリーズきっての凶暴キャラである大友だが、その理論はどこか正鵠を射ている。シノギの不文律を父親に諭されても、「うまいもん食うてよ、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの。それも銭がなけりゃできやせんので」と逆説教する。


●梅宮辰夫(岩井信一役)


【わしらタクシー屋のおっちゃんに用はないさかい、これから1人で歩いたらよろしいがな。でもええでっか。前向いても崖や、後ろを向いても崖やで!】『頂上作戦』


 代理戦争でありながら、山守義雄の襲撃を決起しない打本昇(加藤武)に対し、岩井はしびれを切らして「あんた、タクシー屋のおっちゃんか」と皮肉を込める。「事業一本に絞りたい」と弱気な打本の返事に対し、岩井は「崖」の言葉を叩きつけた。


【そんな極楽は極道の世界にはないよ。人を喰わにゃァ、おのれが喰われるんで】『代理戦争』


 岩井は盟友の広能昌三に対し、山守義雄組長を追い落として広島を手に入れたらどうかと提案。だが広能は「わしゃ呉で収まっとりゃええ」と静観。岩井は「そんな極楽は極道の世界にはない」と叱咤する。1文字違いの「極楽」と「極道」の大きな差だ。


【おんどれらも、吐いた唾飲まんとけよ】『頂上作戦』


「吐いた唾飲まんとけよ」とは、「いったん口にした言葉を忘れるなよ」という最後通牒である。幼かった娘・アンナが泣き叫んだという逸話を持つ、梅宮辰夫の「眉毛を剃り落とした異様な姿」が、セリフの凄味を増幅する。ケンカの常套句として今に継承されている。


●渡瀬恒彦(有田俊男役)


【やれんのう! わいらのやること、いちいちケチつけられたんじゃよう!】『仁義なき戦い』


『仁義なき戦い』シリーズを一言で表わすなら“下剋上”である。とりわけ、第1作において切れ味を発揮するのが、主要キャスト最年少だった渡瀬恒彦。若頭の坂井鉄也(松方弘樹)にヒロポンの密売を咎められると、全身に不機嫌さをまとい、上目使いで反論した。


【何すっかバカが、わしゃ怪我人じゃ!】『仁義なき戦い』


「実録」と銘打たれた本シリーズは、ふとした瞬間のリアルな、どこかコミカルな表情を描くことも抜群にうまい。車を暴走させた末についに逮捕された有田は、血まみれのままなぜか警官に対し「わしゃ怪我人じゃ!」と、何の言い訳にもならない雄叫びを挙げる。


【兄貴、戦争はもう始まっとるんで】『仁義なき戦い』


 有田は、兄貴分の新開宇市(三上真一郎)を、旧知の市会議員と対面させた。議員は新開に、若頭の坂井鉄也を追い落とせと進言するが、新開は身震いするのみ。それを見た有田は「戦争はもう始まっとるんで」と、背中を押す。その後、有田は坂井の弟分を射殺した。


●小林旭(武田明役)


【広島極道は芋かもしれんが旅の風下に立ったことは一遍もないんでっ】『頂上作戦』


 シリーズは、第3作の『代理戦争』から武田明役として小林旭が加入し、さらにオールスター映画の華やかさを増す。山守組の若頭として貫禄を見せる武田は、神戸の大組織・明石組に対して一歩も引かず「旅の風下に立ったことは一遍もないんでっ」と意地を見せた。


【借りは貸しを生むためのもんじゃ】『完結篇』


 20年にも及んだ劇中の広島ヤクザ抗争は、もはや「切った張った」の時代ではなく、いかに「経済力をつけるか」の戦いであった。武田は「借金だらけ」とうそぶきながら、実は帳簿や博奕の貸し借り表など、きちんとした財産を組の発展のために残しておいた。


【わしらの時代は終わったんじゃけん】『完結篇』


 武田は跡目を松村保(北大路欣也)に、広能昌三は氏家厚司(伊吹吾郎)にそれぞれ譲り、戦争の終結とともに一線を退くことを決意する。武田は「終わったんじゃけん一杯やらんかい」と広能を誘うが、広能は「死んだモンにすまんけんのう」と固辞した。


※珠玉の名セリフ100篇を詳細に分析した『仁義なき戦い 100の金言』(石田伸也著、徳間書店刊)、『仁義なき戦い Blu-ray BOX《初回生産限定》』(2万9800円+税/販売:東映/発売:東映ビデオ)が発売中。本編のほか、貴重なボーナスディスクやブックレットなどを封入。


※週刊ポスト2017年3月3日号

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