韓国に惜敗 カーリング女子「銅メダル」獲得のために必要なこと

2月24日(土)10時30分 文春オンライン

 準決勝の日本対韓国戦。カーリングの魅力がぎっしり詰まった「傑作」だった。


 第10エンド、そして延長のエキストラ・エンドともに日本は不利な先攻ながら、スキップ藤澤五月は打てる手はすべて打ち、韓国にプレッシャーをかけた。


 あとは祈るのみ——という状況に持っていったが、勝利を決めた韓国のドローショットは見事だった。


 仕方がない。でも、悔しい敗戦だ。



日韓のスキップ、藤沢五月とキム・ウンジョン ©共同通信社


見逃してはいけない「ストーリー性」


 カーリングは、2006年のトリノ・オリンピック以来、4年ごとに必ず話題にのぼるようになった「マイナー競技のなかのメジャー」であるが、なぜ、人気を博すようになるのか秘密がある。


 チームのストーリー性だ。 


 冬のオリンピックでは夏に比べて団体競技が少なく、チームの成長が見える競技がわずかだ。


 ところがカーリングでは、1試合2時間半かかるうえに、9試合も戦う「ラウンドロビン」(日本でいうところの「予選リーグ」)の中で、必ずといっていいほどチームのストーリーや、選手のキャラクターが浮かび上がってくる。


 感情の浮き沈み。体調の変化。選手たちのコミュニケーション。


 今回、日本の女子チームには「そだね〜」や「おやつタイム」に代表されるように、SNS時代に合致したサイドストーリーが話題になっているが、あくまで本筋はチームの「物語」にあり、そこを見逃してはいけない。



「おやつタイム」を終え選手を励ますフィフスの本橋麻里(左) ©getty


 日本はラウンドロビンで、韓国に唯一の土をつけ、スウェーデンには相手のミスを誘発させ、勝利を手にした。決勝に進んだ2チームにも勝ったのである。


 一方で、プレッシャーのかかるラウンドロビン最終戦のスイス戦では、自滅気味。敗れて相手のスイスの選手に慰められ、その後にアメリカが負けて準決勝進出が決まるというジェットコースター状態。


 そして準決勝では、弱点である「ナイーブさ」が出てしまった。


「しっかりして!」と年長のふたりを叱咤


 第10エンド、韓国のラストストーンが日本の石を弾き出そうとしたが、ヒットの角度が浅く、日本と韓国のストーンが動き出した。


 近くに残った方が1点を取る。


 カーリングでは、センターを横切る「Tライン」を超えたなら、相手の石をスウィープしても構わない。ところが、藤澤と吉田知那美のふたりは固まってしまい、動けなかった。


 負けた、とセルフジャッジしてしまっていたのだ。


 結果的には日本がナンバーワンを獲得したが、土壇場でナイーブさがのぞくあたり、まだ若いのだ(カーラーのピークは30代後半と言われている)。


 それでもその場面で、吉田の妹でリードの吉田夕梨花が、「しっかりして!」と年長のふたりを叱咤したというから、このあたりも日本の良さだ。



「合意型」の日本が手強いイギリスに勝つために


 そしてもうひとつ、カーリングの魅力として挙げられるのが「意思決定モデル」が競技を通して見えてくることである。


 カーリングは、とにかく即断即決を求められる競技だ。


 私はトリノ・オリンピックを見て刺激を受け、素人カーリングを一時期熱心にやっていたが(最近はごぶさたです)、素人でさえもめまぐるしく変化する状況の中で、パッパッパッと判断していかなければならない。迷ってもいいのだが、決断したら後悔してはいけない。


 ただし個人競技ではなく、4人でプレーするから、意思決定に加えて、「合意形成」をしなければならない。


 カーリングが技術力の高い選手4人を集めて代表チームを作るのがむずかしいのは、合意形成が必要だからであり、寄せ集めのチームではすぐに意見の齟齬が出てきてしまう。


 その意味で、カーリングは極めて政治的なのである(チームメンバーの離合集散が珍しくないのも、極めて政治的だ)。



「合意形成」が必要。サード吉田知(左)とスキップ藤澤 ©JMPA


 面白いのは、合意形成プロセスにチームカラーが反映されるようになることで、私が見てきた中では、次の3パターンに分類される。


● 勝負どころで会議が開かれる「合意型」

● 強力なリーダー、年長者がいる「トップダウン型」

● スキップとバイススキップによる「ツートップ型」


 日本はご想像の通り、「合意型」だ。藤澤、吉田姉のコミュニケーション力が光るが、むずかしい局面では4人が集まって合意を形成する。


 ある意味、日本の社会を反映しているとも言える。



「合意型」の日本チーム ©getty


 強国カナダの場合は、10代からスキップとして育てられてきた選手が、強力なリーダーシップを発揮する。しかし今回、男子準決勝でカナダのスキップ、ケビン・コーはアメリカ相手に苦戦を強いられ、終盤になって不安が表情に出ていた。こうなると、トップダウン型は弱い。


 さて、銅メダルを懸けた試合の相手、イギリスはどうか。このチームは手強い。


 前回のソチ・オリンピックの銅メダルチームであり、スキップのイブ・ミュアヘッドはゴルフの腕前も一級のアスリートであり、今大会には兄と弟も参加しているカーリング一家の出身だ。


 ミュアヘッドは強力なリーダーシップを持っているが、彼女にはアナ・スローンという1歳年下の相棒がいる。苦しい場面ではふたりで相談している場面が多く、「ツートップ型」の合意形成プロセスを持つ。


 日本は、ふたりの意見が衝突するような局面を多く作りたい。


 カーリングの面白さは、氷上だけでなく、相手の意思決定プロセスを揺さぶることでもチャンスが生まれることにある。


 イギリスを揺さぶるんだ、日本。



韓国戦後、涙を流した藤沢 ©共同通信社



(生島 淳)

文春オンライン

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