水道橋博士×岡宗秀吾「男のロマンは女子にぜんぜんウケません」

2月24日(土)11時0分 文春オンライン

 水道橋博士とテレビディレクターの岡宗秀吾さん。芸人から霊能者まで、夜更けのトークイベントで繰り出される奇妙な話てんこもり対談の後編。


前編はこちら


◆◆◆


ECDさんの話がしたかった理由



『藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて』(水道橋博士 著)


博士 あ、俺、今日はECDさんの話がしたかったんだ。


岡宗 ラッパーの。先日、亡くなってしまいました……。


博士 プチ鹿島って知ってます? オフィス北野の後輩なんですけど。


岡宗 はい、もちろん。


博士 MXでやってる『バラいろダンディ』って番組があって、俺が金曜日、玉袋とライムスターの宇多丸さんが水曜日の担当なんですけど。それでこの前、プチ鹿島が初めて水曜日のゲストに出たんですよ。プチ鹿島がそこで、「僕、元々ラップやってました。実はECDさんが主催したラップコンテストで優勝してます」と言い出して。


岡宗 プチ鹿島さんが?


博士 そうなんです。「イエローモンキークルー」っていうグループでラップやってたと。それを聞いた宇多丸さんが、「知ってますよ」って言うんです。なぜならば、そのコンテストにエントリーして、ライムスターは落ちたから。


岡宗 じゃあ、プチ鹿島さんはライムスターを倒してるんですね。


博士 で、『バラいろダンディ』でプチ鹿島がその話をしてる時間に、ECDさんが亡くなられたという。


岡宗 はぁ……。



水道橋博士さん ©文藝春秋


博士 単なる偶然ですよ。単なる偶然だけど、これが俺の言ってる「星座」なんです。偶然並んでるにすぎない星だけど、星を結べば物語が夜空に浮かび上がるっていう概念、それが物語なんだと。でもこれを確かめる人がいないから、偶然が物語を結んでるということに誰も気づかない。「星座」っていうのは常に人間の暮らしの中にあって、その物語を求めてない人には全く見えない。でも求めてる人にだけ見えていく。


岡宗 そういうふしがありますよね。今日だって、奇しくも僕らがお世話になった川勝正幸さんの命日で、恵比寿で「集う会」があって。


博士 そうそうそうそう。


岡宗 今日ここでハカセと僕がこうやってお話させていただいてるのも、うーん……っていう思いがちょっとありますね。


博士 あと、今日は渋谷のクラブクアトロでミュージシャンの遠藤賢司さんの追悼ライブもあるんですよね(注・浅草キッドは遠藤賢司さんの「東京ワッショイ」を長年漫才の出囃子に使っている)。だから今日は渋谷で偶然3つのイベントが重なっているんですよ。惑星直列ですよ。


ハカセとたけしさんとの縁


博士 そうだ、俺が「これが一番“星座感”がある」と思ってる話をしてもいいですか。自分の伴侶とは赤い糸で結ばれてるという話。俺のカミさんは、面識がない頃から俺のブログの読者だったんです。で、俺以外の男性と結婚する予定があって、最後の家族旅行だってことで両親と金沢に行ったところ、タクシーの運転手さんが「お客さん、芸能人で誰が好きですか?」と聞いてきた。こういう会話ってよくあるじゃないですか。


岡宗 ありますね、タクシーの運転手さんと。



左:岡宗秀吾さん 右:水道橋博士さん ©文藝春秋


博士 それでカミさんが「知らないと思いますけど、浅草キッドの水道橋博士が好きなんです」って言ったんですね。まだ俺とは一面識もない頃ですよ。そしたらタクシーの運転手さんが、「水道橋博士は俺の弟子だよ!!」って、金沢訛りで話してきたの。そのタクシーの運転手さん、俺が30年前に修行した、浅草フランス座の岡山社長だったんです。


岡宗 へぇー。


博士 それで隣に座ってたカミさんのお父さんは、俺の名前を一度も聞いたことがなかったもんで、メモ帳に「水道橋博士」って書いたんですよ。そしたらその3年後に俺が、「お嬢さんを嫁にください」って言いにきた……って話。これすごくないですか。


岡宗 すごいですね。じゃあ奥様は途中で結婚相手を変えちゃったってことですね。


博士 まあそうですね。で、これは去年に発覚したことなんですけど、足立区在住のカミさんのおばあちゃんが、たけしさんのお母さん、北野さきさんとずっと仲良しで、昭和18年頃から北野家の2軒隣りに住んでいたってことがわかったんです。


岡宗 すごいっすね。


博士 もうびっくりしましたよ。それで去年の12月22日にうちの母親が死んで、その4日後に足立区のおばあちゃんも亡くなったんですよ。


岡宗 えーっ。


博士 そのお葬式で、確認できたの。完全に偶然だけど、神の手によって運命づけられているとしか思えないです。


岡宗 やっぱりハカセとたけしさんとの縁というのは、ちょっとレベルを……。


博士 超えてますよね。


岡宗 他人が見てもそう思いますから。



開高健に似てる!


博士 岡宗くんは、“ 『藝人春秋2』 という本の中に流れているものは開高健だ”っていうのを見破ってくれた人でもあるんですよね。あ、また開高「たけし」が韻を踏んでるけどね。


岡宗 いや今回、この代官山 蔦屋書店で僕とハカセが選書したコーナーを作っていただいてるんですけれども、僕は偶然、開高さんの『オーパ!』を選んでいて。僕もともと、顔面が開高健さんに似てるじゃないですか。


博士 似てますね。ほぼ同一人物です。



開高健さん ©安藤幹久/文藝春秋



岡宗秀吾さん ©文藝春秋


岡宗  Google検索してみてください。僕ほんとに似てるんですよ。大阪弁の方ですし、 『煩悩ウォーク』 の中にスタイリストの山本康一郎さんの話が出てきますけど、この人は開高さんの最後のスタイリストをやっていらした方で。


博士 『藝人春秋2』の上巻の照英の章に『オーパ!』が何回も繰り返し出てくる箇所があるというのは、読めば誰でも気がつくんですよ。でも『藝人春秋2』は、開高健の本を読み返し、評伝を読み、それを踏まえて書いているというところまで見破った人は岡宗くんが初めてです。


岡宗 『藝人春秋2』は、下巻に行くにしたがって楽しい話からグーッと覚悟や思いを刻んでいくような文章になっていきますよね。下巻はもう、読み進めるのが大変で。


博士 一気に読めないと。『煩悩ウォーク』は一気に読めますよ(笑)。


岡宗 僕の本は3時間で読めます(笑)。書くのは8カ月かかったんですけど。


博士 岡宗くんが指摘してくれた『藝人春秋2』の開高健イズムだけど、その継承をしている人が実はもう1人いて、それはいとうせいこうさんなんです。せいこうさんは、 『「国境なき医師団」を見に行く』 (講談社)という本を出されていますけど、あれプライベートで行ってるんですよ。それで「これはどういう意味なんですか?」って聞いたら、「というかハカセ、これって開高健なんだよ、やりたいことは」って言われて。それから「作家っていうのは行動的に表に出なきゃいけない」と。せいこうさんも長く沈んでる時期があったから、その頃の反動として、開高健もそうであるように、海外まで出て行って行動して、自分の韻を踏んでいる。行動によって韻を踏むんです。俺とクロスしてるんです。だから『藝人春秋2』の奥付に、「SPECIALTHANKS いとうせいこう」と入れたんですよ。


岡宗 なるほどなぁ。せいこうさんも今、開高イズムを継承しているんですね。


「これじゃあ売れませんよ」と編集者に言われて



『煩悩ウォーク』(岡宗秀吾 著)


岡宗 僕、今回初めて本を書いて思ったんですけど、僕は今まで、男性向けに番組を作ってきたつもりなんですよ。『BAZOOKA!!! 』もそうでしたし、ゲスいことから、下ネタ、暴力、オカルト、格闘技、ナンセンス、エロ……を主戦場としてきたところがあって。それで「自分が作るものは男性に投げてるんだ」とずっと思ってきたんです。男が熱狂するものを作るのが男だと。それが正しいことだろうと、どこか思ってたわけです。それで『煩悩ウォーク』のカバーのデザインを自分でやらせてもらったんですが、文春の担当編集者と揉めまして。


博士 え、そうなの?


岡宗 最初はもっと男のロマンが前面に出たイラストだったんですよ。でもそれを担当の方が、「いや、これじゃあ売れませんよ」と。「今は、本を買うのは女性が多いんですから」って。いやいや待ってくれと。はなから僕は男に向けて作ってるんだと。女性向けにカバーをデザインするなんてナシだ……と、色々やりあったわけですよ。結局、最初の男っぽいデザインはやめて作り直したんですが、それで結果、女の人がたくさん手に取ってくれて、女の人のほうがちゃんと読んでくれるんだなっていう(笑)。


博士 カラテカの矢部くんが出した 『大家さんと僕』 (新潮社)は、素晴らしい本なんだけど、なぜ20万部を超えるベストセラーになったかというと、女性が買うから。でも矢部くんってセックスアピールはないじゃない?


岡宗 まぁそうですね。


博士 じゃあ読者は誰に対して心を揺らしているかというと、老婆の大家さんなんですよ。あの大家さんに女性が憧れて広がっているわけ。それはすごくよくわかった。俺なんかもう書いている世界観は完璧に梶原一騎じゃん。要は女性に届くことをまるでやってないんだよね。



なまはげ館を支えるのは女性?


岡宗 もう感想のレベルが違うんですよ。男の人はまぁ、「面白かったです」くらいで終わりなんですけど。女の人は「あの話の“この世で一番美しい内臓”って表現がよかったです」とか、細かい繊細な感想を伝えてくれるんです。こういうことが文化を支えているんだなって。それで思い出したことがあるんですけど、何年か前に、テレビの仕事で秋田県の男鹿半島に行って「なまはげ館」っていうとこで撮影したんですよ。


博士 なまはげっていうだけでもう面白いもん(笑)。


岡宗 地元の方がなまはげのお面をかぶって、「悪い子はいねぇか」って再現するショータイムがあるんですよ。正直、「今、なまはげブームでもないし、こんなところ誰が来るのかな」と思ってたんです。そしたら観光バス2台で、女の子がグチャーっていっぱい来て、撮影ができなくなっちゃって(笑)。その女性陣に「そもそもなまはげに興味あるんですか?」って聞いたら、「興味ない」って言うんですよ。「知らなかった」と。だから女の人って、男鹿半島に来てきりたんぽを食べたあと「近くに『なまはげ館』あるから行かない?」「行く行くー」ってなってるんですよ。そんなん、男同士の旅行であります?



©文藝春秋


博士 俺は血の中に「みうらじゅん」が入ってるから行くと思うけど(笑)。


岡宗 そういう特殊な方もいらっしゃいますけど、お金払ってなまはげ見ようって、男はあんまりならないと思うんですよ。そういう行動力のある女性が、本とか音楽とか映画とか、文化を支えてくれているんだなと。


博士 「なまはげ館」に女性が行くのは、そこにセックスアピールがあるからじゃない?


岡宗 えっ、なまはげにですか?


博士 あるよ。なまはげに巨根感はないの? 天狗と間違えてる?


岡宗 でもまぁ、なまはげも多少高圧的にきますしね。逃げ惑う対象ですからね。それはそうかもわからないです。


博士 なまはげは、鼻でかくなかったっけ?



©文藝春秋


岡宗 女性の読者といえば、『煩悩ウォーク』の原稿は、最初に僕の奥さんに読んでもらって、かなり直しているんです。この本は自分語りがベースなので放っておくと自慢話になったり、逆に自分を卑下することで身を守ろうとしてしまう。そういうバランスが、書いてるうちに自分ではわからなくなるんですよ。


博士 ああ、すごくわかります。


岡宗 本を書く時って、自意識との戦いなんですね。でも奥さんが「ここ、自慢話になってるよ」とか「ここ、卑下しすぎてて面白くない」とか指摘してくれて、そのバランスを全部調整してくれたので、そこは感謝してるんです。


博士 ボクのカミさんは本読みなんだけど、ボクの本のゲラを読んでくれる瞬間が人生で一番大好き。映画の『ガープの世界』でガープが書いた小説のゲラを彼女のヘレン(メアリー・ベス・ハート)が読むシーンを思い出すんです。


岡宗 あ、ふたりで惚気けたところで、そろそろ終電の時間ですね。じゃあとりあえず中締めということで。サイン会をしたあと、閉店の深夜2時までしゃべりますんで(笑)。



2018年1月31日 代官山 蔦屋書店

ヘアメイク 浦杉美芸広 (Miwako Urasugi)

ロゴデザイン サトウアサミ






(「文春オンライン」編集部)

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