山田美保子「同期の八代亜紀さんを悼み、コンサートで涙した野口五郎さん。歌声はますます磨きがかかって」

2024年2月24日(土)10時0分 婦人公論.jp


写真提供◎avex

放送作家・コラムニストとして、数多くの著名人にインタビューし、コメンテーターとして活躍している山田美保子さん。小さいころは引っ込み思案で話すことも苦手だったそう。そんな山田さんを変えたのは何だったのか。さまざまな出会いや、出会った人のアドバイスを通じて、今の自分があるという山田さんが、自分が楽になるコミュニケーション術を紹介する新連載。第47回は「野口五郎さんのこと」です。

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客席は「うっとり」


「グータッチをしてくださって……」と告げた途端、涙声になってしまった野口五郎さんの姿に、もらい泣きをしてしまいました。

2月18日と19日、「東京オペラシティ」で行われた『GORO NOGUCHI CONCERT TOUR 2024 Follow Your heart〜こころのままに〜』のタイトルどおり、野口五郎さんが“こころのまま”を歌い上げた2時間余り。

私は18日のステージを観る機会に恵まれました。

今回、初めて「東京オペラシティ」でコンサートを開いた五郎さんのバックを務めたのは「N響メンバーによるゲートウェイ・ゾリステン with GORO’S BAND」。

元N響第2ヴァイオリン首席の大林修子さんをはじめ、小林玉紀さん、嶋田慶子さん、大塚百合菜さん、御法川雄矢さん、キール歌劇場管弦楽団副主席奏者の松崎敦子さん、堀沙也香さん、渡邊ゆかりさん、本間達朗さんの9名がN響ゲートウェイ・ゾリステンメンバーです。

ホールの特性や、いつもとは異なるバックの布陣に、長年、五郎さんを応援し続けてこられたファンの皆さんも最初はやや身構えていらっしゃるようにお見受けしました。

でも、ますます磨きがかかった五郎さんの歌声は、高音も低音も存分に伸び渡り、年齢ならではの色気や艶を帯びて、「東京オペラシティ」のホールにも、N響の皆さんの演奏にもピタリとハマっています。やがて客席は「うっとり」という言葉が似合う空間へ昇華していったのです。

素晴らしすぎる歌唱力と美しいメロディー


素人がいうのはたいへん失礼だとは思いますが、書かせてください! 五郎さんの歌声と味わいは昭和、平成を経て、令和でさらに進化しているのです。

五郎さん自身、10代の頃は歌詞の意味がよくわからなかったという大人の恋や男女の機微を歌ったヒット曲の数々は、酸いも甘いも噛み分けた現在の五郎さんと、その素晴らしすぎる歌唱力と相まって、歌詞の一言一言や美しいメロディーすべてが観客の心の芯まで伝わっていきました。


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「新御三家」と言われた郷ひろみさん、西城秀樹さん、野口五郎さんの中でも、ダントツに音楽がお好きであることが当時の視聴者やファンに伝わっていたのが五郎さん。

その足跡をここで記すには行数が足りませんが、実は10代の頃から著名な作詞家や作曲家の先生方とコミュニケーションをとり、歌を作り上げてこられました。決して“お人形さん”のようなアイドルではなかったという印象を2歳下の私も抱いていたものです。

さらに、ギターの名手であり、最新の機器を駆使しながら曲作りも続けていらして、アーティストとして、しっかりアップデートしていらっしゃるのが五郎さんです。

コロッケさんの物真似にもコラボをしてしまうような寛大さと優しさがあるうえ、近年、歌番組での共演が多い新浜レオンくんのような若手の歌もちゃんと聴いてあげて、感想を伝え、応援もしてくださる。

コンサート中も最高の“ファンいじり”


そして“バラエティ専門放送作家”である私は、お笑いに理解があり、コントのセンスが抜群で、コンサート中も最高の“ファンいじり”をなさる五郎さんにいつもグッときてしまいます。

ずっと現役であり続けて、60代後半になっても、素敵なルックスで、ファンの皆さんを魅了し続ける五郎さんには、「私はもうすっかり裏方で…」と言いつつ、スタッフパスを首から下げてコンサートのバックヤードで奔走する、妻の三井ゆりさんの存在があることもお伝えしたいです。


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それはファンの皆さんもよくご存じで、ゆりさんに心から感謝していらっしゃるのですが、ゆりさん本人は往年の五郎さんファンの皆さんと五郎さんとのツーカーとも言うべき素敵な関係の邪魔にならないよう、「すっかり裏方」に徹していらっしゃるのです。

御家族といえば、音大に通いながらピアニストとして活躍されている長女の文音さんの存在も、今回の五郎さんとN響とのコラボを後押ししていることでしょう。

文音さんの初舞台が「ゲートウェイ・ゾリステン」のコンサートで、その際、サプライズで五郎さんが登場し、『これが愛と言えるように』で親子共演を果たしたことはメディアでも大きな話題となりました。

18日は、その文音さんもバックヤードで関係者に挨拶をされていました。五郎さんが“こころのままに”素晴らしい歌声を披露されている背景には、こうした御家族のサポートがあることは言うまでもありません。

八代亜紀さんとの最後の想い出


最後に、冒頭の「グータッチ」について書かせてください。これは五郎さんが10代の頃から慕っていらした八代亜紀さんが急逝されたことに触れたMCでのことでした。

昨年来、歌手の皆さんの訃報があまりにも多いことはメディアに取り上げられていますが、五郎さんも“仲間”とも言える歌手の皆さんが相次いで旅立つことに心を痛めていらっしゃいました。

特に八代さんとは“同期”で、「五郎くん、五郎くん」と、いつも姉のように優しくしてくださったそう。

昨年、BS朝日の『人生、歌がある』で、五郎さんの希望で矢吹健さんの大ヒット曲『あなたのブルース』を八代さんとデュエットしたのが“最後の想い出”になってしまったといいます。

そのときの八代さんの迫力の歌声に圧倒されたという五郎さんは、歌い終わった後の優しい笑顔とグータッチしてくれたことを振り返り、言葉を詰まらせ、決して短くはない時間、ファンの皆さんの前で、すすり泣きをなさいました。

実は1月に出演されたラジオ番組で、「お姉さんではなく、お姉ちゃん」というべき存在だった八代亜紀さんに今回のコンサートが「届いてほしい」という想いで臨むことを話されていた五郎さん……。

辛いときは泣いてもいいんだよ


私も……、構成するバラエティ番組で何度も御世話になった八代亜紀さんや冠二郎さん、そして小金沢昇司さん急逝のニュースに言葉を失う1月を過ごしました。

能登半島地震や羽田空港での事故、そして愛犬の旅立ちなどが重なって、自分の感情が止まってしまって動かないような日々が続いていたのです。なぜか、そういうときって、涙も出ないんです……。

でも、18日、五郎さんの優しい歌声を聴き、だんだんと心がほぐれてきたことに加え、五郎さんが八代亜紀さんを想い、泣いてくださった……。

「辛いときは泣いてもいいんだよ」と言ってくださっているようで、私も「泣くこと」を自分自身に許可できた1日となりました。


2月23日にリリースしたニューアルバム『GOROes by myself 2 〜City Pop〜』(写真提供◎avex)

野口五郎さんは23日にニューアルバム『GOROes by myself 2 〜City Pop〜』をリリース。5月19日には「神奈川県民ホール」、7月27日には「かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール」でのコンサートが決定しています。

『私鉄沿線』『甘い生活』『君が美しすぎて』などの大ヒット曲が聴けるはずです。ぜひ、会場で五郎さんに“うっとり”していただきたいと思います。

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