本田博太郎 CG使わない『北京原人』なら時代変えたと思う

2月24日(金)16時0分 NEWSポストセブン

映画『北京原人』で原人役を演じた本田博太郎

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、時代劇だけでなく『北京原人』のようなユニークな作品に出演するなどした1990年代、素晴らしい演出家に巡り合えてきたことについて本田博太郎が語った言葉をお届けする。


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 本田博太郎は1995年、工藤栄一がメイン監督を務めたテレビシリーズ『雲霧仁左衛門』にレギュラー出演し、盗賊団の一味「州走りの熊五郎」を演じた。山崎努が扮する頭目の指示に対して「へい」と返事をするのだが、その口調が独特だった。


「工藤さんが熊五郎だったら、ということを考えていました。工藤さんだったら、命令されてもパッとは動かないだろう、と。ましてや山崎さんが頭にいて、小頭に石橋蓮司さんですから。あの二人の下では『はいっ!』って素直に従うような人間は通用しないと思いました。『お前、もういらん、おもろないって言われたくない!』と、もっと深いところで感じ、思考する、手に負えないような奴が集まってるはずです。


 ですから、このような感じで『へ〜い』となりました(笑)」


 1997年の映画『北京原人 Who are you?』では原人役を演じて話題になった。


「俺の代名詞みたいになっちゃったけど、嫌なんです。あれは完璧な手作りで、CGなんか使わないでアメリカに持っていくべきだったんですよ。『猿の惑星』だけじゃない。日本にもこんなのを作る奴らがいるんだ──そう思えるくらいのができるはずだったと思います。


 そこからきっと何かが生まれたと思うんです。たとえ日本で評価されなくとも、海外で分かってくれる人たちが必ずいるんだと。CGを使わなくとも、これだけ説得力あるものが日本でもできたって。もしそういうものができていたら、『俺たちはCGに頼り過ぎてきた。原点に戻ろうよ』と思う作品になっていたんじゃないでしょうか」


 近年では『剣客商売』など、大ベテラン・井上昭監督の作品で名演技を見せている。


「少しずつでいいから、井上昭監督がOKしてくれるような芝居を、表現者としてできたらいいなと思っています。監督の洞察力というか美学は、繊細で奥深いから、俗っぽい生き方をしてる人間では対応ができない。ちゃんと自分の生き方を貫いていないと、監督から心地よいOKがなかなかもらえない。見抜かれちゃう。『あの心が僕は好きだから』って言ってもらえるようじゃないとね。


 そういう羅針盤のような、洞察力をもった演出家です。そういう存在は大事だし、一緒に仕事をして楽しいし、だからこそ怖いんです。


 十年おきくらいに素晴らしい演出家に巡り合えてきました。蜷川幸雄さん、岡本喜八さん、工藤栄一さん、そして井上昭さん。共通するのは、役者に対して線を引かないこと。深い優しさがあって、共犯者的に関わってくれる。だから、俺も『この人が喜ぶ芝居を目一杯やりたい』と思えるんです」


 ベテランとなっても、危機感を忘れた日はないという。


「『俺もここまで来たか』なんて慢心した瞬間にダメになる仕事です。常に『今年も一年もった』、そう思っています。今の俺を見てオファーをくれたら、それにちゃんと応える。大事なのは、『今、何が出来るか!』です。それが職人俳優ですから」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


◆撮影/藤岡雅樹


※週刊ポスト2017年3月3日号

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