池上彰氏が語る「女性天皇」や「女系天皇」が誕生する可能性

2月24日(日)7時0分 NEWSポストセブン

ジャーナリスト・池上彰氏が特別講義(写真:宮下マキ)

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 5月1日の新天皇即位を前に、皇室と日本人の未来を考えるうえで知っておくべきこととは何か。何かと議論になりがちな「女性天皇」や「女系天皇」に関し、ジャーナリスト・池上彰氏による解説を、『池上彰の「天皇とは何ですか?」』(PHP研究所刊)より一部抜粋してお届けする。


 * * *

 女性天皇や女系天皇の誕生を認めるかどうか。歴史的には、女系天皇の例は見られませんから、女性天皇を認めるかどうかという問題よりも、議論は難しくなりそうです。


 ただ、これまで議論がなかったわけではありません。たとえば、小泉内閣の時代に「皇室典範に関する有識者会議」が設置され、2005年に約1年をかけて安定的で望ましい皇位継承のための方策について検討されました。その報告書では、「今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である」とまで書かれています。


 この会議が行われた当時は、まだ悠仁さまがお生まれになっていません。ですから、今以上に皇位継承が続くのかということに対して、危機感があったのでしょう。


 しかし、報告書が出てからしばらくして、紀子さまのご懐妊がわかりました。2006年9月6日に、男系男子である悠仁さまが誕生されました。そのために、有識者会議の提案を受けた法案の提出も見送られることになったのです。


 さらに2011年、民主党の野田佳彦内閣の下では、女性宮家の創設が真剣に検討されました。そこでは、女性天皇や女系天皇の容認ではなく、皇族減少の対策という点が議論の中心でした。



 両陛下以外の皇族も、さまざまなご公務をなさっています。でも、皇族が減ってしまうと、これまで続けてこられたご公務を取りやめるということにもなってしまいます。そこで、女性宮家を創設して、皇族の減少にブレーキをかけ、安定的に皇室のご公務を続けることができるようにしようというのが、野田内閣の考えていたことでした。


 しかし、これも法案にはまとまりませんでした。大きな論点として、女性宮家を創設するとしても、その範囲を内親王までにするか、女王までを含むかという議論がありました。また、そのいずれであっても、将来的に宮家は増えていくことになります。その場合の財政的な問題も考えなければなりません。


 こうした問題に結論が出ないまま、そのあとを引き継いだ安倍内閣は、女性宮家の創設には反対の立場をとっているので、議論が深まることもなかったのです。


 こうした「女性天皇、女系天皇の容認」やその延長上に想定される「女性宮家の創設」以外では、「男系男子」であることを優先させて、旧宮家の皇籍復帰を唱える論者もいます。


 しかし、旧宮家は戦後皇籍から離脱していますから、あらためて皇籍に復帰することは、現実的には難しいのではないでしょうか。世論調査でも、旧宮家の皇籍復帰に対しては、7割前後が反対しています。女性天皇とは違って、国民感情としても、認めがたいのが現実です。


 日本国憲法の第一条には、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」とあり、第二条には「皇位は、世襲のもの」とあります。



 この2点に着目すれば、私たち国民の総意に基づくのであれば、皇室典範を改正して、女性天皇や女系天皇を認めることは、憲法上、何ら問題はありません。


「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」の表明は、退位のご意向を表明するだけのものではありません。「おことば」は次のように結ばれています。


〈始めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。 国民の理解を得られることを、切に願っています〉


 このように、天皇陛下は「象徴天皇の務め」が安定的に続いていくことを強く願っておられます。私たちもまた、そのお気持ちを受け止め、これからの天皇のあり方、皇室のあり方をしっかり考えなければならないのです。


●いけがみ・あきら/1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。慶應義塾大学卒業後、1973年NHK入局。報道記者として勤務。1994年より11年間、『週刊こどもニュース』でお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題に。2005年にNHKを退職し、フリーのジャーナリストとして活躍中。著書多数。


※SAPIO2019年4月号

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