中居正広さんの退所会見がびっくりするほど穏やかで、“肩透かし”だった理由

2月26日(水)21時0分 文春オンライン

 2016年1月18日、強靭なツイッターサーバーが一瞬で落ちた、スマスマの生放送。あの滅びの呪文「バルス」にも耐えうる強靭なツイッターサーバーが、です。SMAP解散報道を受けてのメンバーの沈痛な肉声と陰鬱な表情は、ファンでもなんでもない私のような人間まで打ちのめす破壊力でした。と同時にやはりSMAPは国民的アイドルなんだなと再認識したのです。ちなみに同年1月6日に行われたベッキーの不倫謝罪会見の時はツイッターは落ちなかったと記憶しております。


 2020年2月21日。4年前のあの日手の甲をぎゅっとつねっていたように見えた中居正広が、ジャニーズ事務所を退所することを明らかにし会見を行いました。ラフな服装に笑顔、仕切りから何から一人で(いや実際はたくさんの人の手がかかってるんでしょうが)行い、物々しい雰囲気を予想していた取材陣は一斉に肩透かしを食らった状態に。全体的に終始和やかな空気の会見に見えました。



©getty


湘爆魂どこいったんだべ……江口も泣くべ……


 思えば2019年はたくさんの衝撃会見があった年でした。闇営業問題でお笑い総本山吉本興業を告発した宮迫博之、深夜に84分のノンストップ会見を行った「イチロー鈴木のオールナイトニッポンGOLD」あらためマリナーズ・イチローの引退会見。


 私は少し期待していました。あの日手の甲をぎゅっとつねっていた(ように見えた)中居くんの、本当の答えが聞けるかもしれないと。この「衝撃会見」ブームに乗っかって、藤沢のヤンキーここはカマすべ!!と。


 しかし蓋をあけてみたら、びっくりするほど穏やかだったのは前述の通り。湘爆魂どこいったんだべ……江口も泣くべ……。あの日宮迫もイチローも生放送生配信され、一方の中居くん会見は録画で、だからでしょうか。臨場感のなさと、この距離感は。そしてハッとしました。これはもしや「テレビ」というやつでは。『ナカイの会見』というテレビ番組では。



中居くんは実のところ何も言ってはいなかった


 中居くんのテレビ番組とは、中居くんがMCで脇に実力のある中堅芸人か何かを置きつつ、ゲストをほどよくいじり、企画はつつがなく進行される。毒もなくだからといって媚びもなく、覚えているほどの内容はないけど、ああテレビを見たという気にさせてくれる。あの会見はまさにそれでした。


 中居くんは実のところ何も言ってはいなかった。たくさんしゃべっているのに何も言ってない、それこそ中居くんがテレビの世界で成功した秘訣だと思うのです。自分の主張をしないから、安心してキャスティングできる。「ナカイの」とつくものはだいたい間違いない。




©文藝春秋


「中居はテレビでしか生きられない人だから」これはSMAP育ての親・飯島三智氏が関係者に漏らしたとされる言葉です( 週刊文春2019年4月25日号 より)。「テレビでしか生きられない人だから」あの日手の甲をつねってでも「テレビの外」に飛び出てしまうことを我慢したのかもしれない。そしてまた一世一代の会見でも「テレビの人」であることを選んだ。


 あくまでテレビ的に「中居くん、攻めてる〜」と視聴者に思わせるライン、たとえば「夏から秋にかけてお話をしようと思ったんですけど、また誰かがやめるとか、誰々が抜けるとかあって、バタバタしていて」とか「世界……って言っちゃいけないんですか?」etcを笑いでなぞりながら、SMAP解散について、新しい地図が地上波に出られないこと、キムタクとの不仲説など核心をつく質問に関しては「1%から99%の中で模索している」に代表されるような、玉虫色の回答でお茶を濁す。「CMの後もまだまだ続く!?」と思わせて、また来週〜と終わってしまった感じでした。


「ジャニーズを辞めたら地獄に堕ちる」という呪いの片棒


 ひたすら耳ざわり良く、会見は終わりました。なんなら「ジャニーズのタレントがこんな穏やかな形で事務所を辞められるなんてすごい! これが令和か!」とも思いました。でも、いやちょっと待って。「ジャニーズのタレントが円満退社できるなんてすごい」って思ってるお前、そもそも誰ですか。だってそれって「ジャニーズのタレントが円満退社などできるわけない」という共通認識の上に成り立つ「驚き」だから。「ジャニーズのタレントは辞めたら地獄に堕ちて仕方ない」という呪いの片棒を、気づかないうちに担がされていたんじゃないか、私。そう思うと少し怖くなりました。まさにこの会見が、そんなたくさんの「片棒」で支えられているように思えたからです。


 それは「●●と△△は派閥が違うから共演できないんだよ」ということが、当たり前のように語られることのおかしさだったり、なんなら日本の芸能界で長年非ジャニーズの男性アイドルが活躍の場を奪われていたことだったり。公共の電波なのに、僕たち私たちのエンタメなのに、そこにずっと歪な力が働き続けた結果、それがいつしか私たちの脳内に常態化して常識化して、国民総なんちゃって業界人みたいになってしまったんじゃないかって。



ジャニーズはやっぱり怖かった


〈光GENJI以降「ジャニーズそんな怖くないし衣装もそんなダサくないしお笑いとかもやるし自分の言葉でしゃべるよ〜」ってやってジャニーズ好き以外の人を取り込んだSMAPが最後の最後でジャニーズ怖いよ〜っつっておわった〉これは、れいのスマスマ生放送の後につぶやいた私のツイートです。



 光GENJIの閃光のような爆発とそのあとの残酷な喪失を経験した世代にとっては、苦労しながらじわじわと売れてやがてテレビの世界で天下を取るSMAPの姿は希望以外の何物でもなかったのです。でも最後の最後で、天下の上にもっと天下があることを痛感させられ、もやもやとともに歩んだこの4年。そしてあの会見。ジャニーズはやっぱり怖かったし、SMAPは、中居くんは、テレビの国の人でした。



 中居会見後のツイッターもまた穏やかでした。穏やかというか、あまり話題になっていなかったように思います。かつてツイッターを落とすほどの衝撃を与えた人の、再出発の会見としては、少々寂しい感じも否めません。


 しかし、彼が最も大切にしたい人たち……私のような「国民的アイドルSMAP」を求める人間ではなく、一番好きで一番大切なアイドル・中居正広をずっと応援してくれるファンが最も望んでいるであろう自分の姿を見せたんだなって思うと、そういうところやっぱりアイドルですよね。



(西澤 千央)

文春オンライン

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