久保ミツロウ×能町みね子×ヒャダイン「親の人生、どれだけ知ってますか?母にロングインタビューしてみたら、恋愛の話が多すぎた!」
2025年2月28日(金)10時0分 婦人公論.jp
(イラスト◎久保ミツロウ)
フジテレビ「久保みねヒャダこじらせナイト」の久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダインによるおしゃべり連載「久保みねヒャダこじらせ公論」。番組ライブ終了後に楽屋で交わされる、打ち合わせなしの雑談を収録しております。
今回は2025年2月1日に開催されたこじらせライブの後のおしゃべり……の前半です。親って身近なようで、実は知らないことも多いな、と感じました。 (司会・構成◎前田隆弘)
* * * * * * *
前回「2024年は近所の友達が増えた」「いいクラスに入った」「『スケバン刑事』に出会った」はこちら
親の人生、どれだけ知ってますか?
能町 私のちょっと新鮮な話をしていいですか? お母さんにロングインタビューしました。
久保 おかロン!?
能町 そんな略し方はしません(笑)。
久保 いや、岡村ちゃん(岡村靖幸)の「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」の略称が「あのロン」だから(笑)。なんでお母さんにインタビューしたの?
能町 仕事と言っていいのかな……ちょっとは仕事なんですけど、岸政彦さんという大学教授で作家の方がいて、その人がいろんな生活史を作るプロジェクトをやってるんですね(*)。テーマは何もなく、市井の人々に話を聞く。大まかに言うと、その人の人生について聞くという。それを100人とか150人分集めた本があるんです。今までに『東京の生活史』『沖縄の生活史』『大阪の生活史』という本が出てるんですけど。
*社会学者として生活史(ライフヒストリー)を実践してきた岸政彦の監修によるプロジェクト。一般から公募した「聞き手」によって集められた「東京出身のひと」「東京在住のひと」「東京にやってきたひと」などの膨大な生活史を集めた「東京の生活史」を皮切りに、同じ手法で制作された「沖縄の生活史」「大阪の生活史」が刊行されている。
ヒャダ 面白そう。
能町 それの北海道版を作るというプロジェクトがあったから、やりたいと思って聞き手に応募したんです。
──そっか、能町さんは茨城のイメージが強いですけど、生まれは北海道でしたね。
能町 両親とも北海道なんですよ。だからこれはちょうどいい機会だと思って。親にインタビューするなんて、あんまりないじゃないですか。で、やってみたら、やっぱりロングインタビューは面白いんですよ。
ヒャダ 今まで知らなかったことがいっぱい出てきますよね。
能町 参考にしようと思って、今まで出た生活史プロジェクトの本も買ったんですよ。辞書みたいに分厚いから、全部は読めてないんですけど。読んだ感じだと、わりと苦労した話が多めの印象なんです。「あの頃はこんなに大変でね……」みたいな。でもうちの母親は恋愛っぽい話がかなり多かったんですよ(笑)。
一同 (笑)
能町 「こんなに恋愛の人だったんだ」と思って。
ヒャダ それは今のお父さんとってこと?
能町 違います。
久保 お父さん以外との恋愛の話しちゃったの!?
能町 お父さんとの話はむしろほとんどない(笑)。
一同 えーーーーっ!
能町 「こんなみずみずしい高校生活を送ってたのか、この人は……」って感じ。
久保 高校の恋愛話?
能町 高校というか、小学校・中学校からなんですけど。ただ、よくある「私、昔はモテたのよ」みたいな半分冗談の感じじゃなくて、しゃべる話しゃべる話に男の子が出てくるという感じです。でも男と遊びまくりとかいうことじゃなくて、純朴ではあるんだけど……。
──男の話をしようと思っているわけではないけど、自分の半生を語ろうとすると自然に男が出てくるという。
能町 「男が絡んでくる」と言うとすごく生々しく聞こえますけど、素朴な中高生でバキバキのリア充、という感じです。ちょっとびっくりでした。面白かったですけどね。
久保 でも、このタイミングじゃなきゃ絶対知ることができなかったね。
能町 小学生の話から始まるんですけど、その時点で幼馴染みの男の子が3人くらい出てくるし……。
久保 は?
能町 しかもこれ、時代背景でも地域の特性でもないと思うんですけど、実家に男の子が訪ねて来る話がやたら多いんです。
久保 やっぱ北海道だからじゃない? 寒いし。
能町 違うと思うけどなあ(笑)。
久保 うちは男子が来たことなかったし、人んちで遊んでもいなかったな。ファミコンでもない限り。
能町 小学生の同級生ですごくモテてた男の子がいたんですって。クラスの女の子が取り合いをするような。その男の子がそのまま本当にプレイボーイになって、大学生のときに急に外車でデートに誘ってきて、花火を見に行ったらしいんです。「でも結局、何もなかったんだよね。あのときもっと積極的に行ってたらどうなってたかな」とか言うんですよ。
ヒャダ そんなことまで覚えてるんですね。まず記憶力がすごい。
久保 そうやって恋愛に絡んだ形で、いろいろな人生の岐路を覚えてるってことなのかな。
能町 でも本人は「恋愛もちゃんとしとけばよかった」とか言うんですよ。
──本人の中では足りない?
能町 足りないというか、「好かれてはいるけど自分から好きで付き合ったことがない」というやつだと思います。
久保 よくあるやつだ。主体性がなかったんだ。
能町 自分が好きな人もいたんだけど、それはうまくいかなかったらしくて。
ヒャダ 好きな人じゃない人には好かれるという。
能町 モテてたはずなんだけど、自分が好きな人に対してはうまくいかなかったから、それで「ちゃんと恋愛しとけばよかった」になるんでしょうね。
久保 じゃあお父さんとはどうやって出会ったの?
能町 お見合いなんです。
久保 だからこそ、恋愛の「あのとき、もしあのルートに行ってたら」って……。
ヒャダ あーーー! きっとそうですね。
能町 それはある。だからお父さんに関しては「なんで結婚したんだろうね?」とか言うんですよ。
ヒャダ それでもちゃんと子供をこさえて。
能町 そのこさえた子供に向かって、「なんで結婚したんだろうね?」と言うんですよ。すごいですよね。
ヒャダ そこまで好きじゃなかったんですかね?
能町 私が話を聞いているときも、合間合間で5、6回、「なんで結婚したんだろう?」と言うんですよ。で、話を聞き終わったあと、LINEでメッセージが来て、「誰かに愛情を注ぎたかった時期なのかもね」って。
一同 (笑)
能町 普通に友達と恋愛の話してるみたいな感じ(笑)。
久保 親のそんな話、聞いたことない。
能町 お母さん、完全にそういうモードになっちゃって、めっちゃしゃべりたくなったっぽくて。
(2025年2月1日のこじらせライブより)
親の歴史はサルベージした方がいい
ヒャダ うちの母も、姉に対してそういうモードがあったんですよ。数年前、母と姉が話していたらそういう女友達モードになって、母が父との性生活について話し始めたらしくて(笑)。
一同 えーーーーーーっ!?
ヒャダ 姉は聞かされたらしいんですよ。
能町 さすがにそこまでは聞いたことない。お母さん、よく言いますね。
ヒャダ で、姉が僕にその話をしようとしたんですけど、「ストップ! そこまで!」って。「そういう話は聞きたくない。申し訳ないけど、それは1人で背負ってほしい」と言いました。だから詳しい話は知らないんですけど。
能町 確かにそれは聞きたくない。
──性生活はともかくとして、親の恋愛遍歴については聞く勇気あります?
ヒャダ 恋愛遍歴は……ないかもしれないです。聞いたことないですし。
能町 私も別に、恋愛遍歴を聞こうなんて思ってなかったんですよ。ただ母親の歴史を聞いていたら、恋愛がどんどん絡んできたというだけで。
久保 私だったら、自分の歴史を語ろうとするときに恋愛はまったく出てこないな。「if あの人と付き合ってたら」の if の岐路なし。
能町 私もわざわざ言わないな。
ヒャダ そんな岐路を考えるくらい、他者との関係を大切にしてた方なんですかね。
能町 鮮明に覚えてるのもすごいんですよね。
───鮮明に覚えているのは、記憶力がいいだけでなくて、そこに心残りがあったからというのもあるんでしょうね。
久保 たぶん心残りがあって、いろんな恋愛もののフィクションを見るたびに、自分のその部分を掘り返してたんじゃないかな。でも別にそれは誰かに話すほどのことでもなくて、ずっと黙ってたという。
ヒャダ やっぱり親の歴史をサルベージしとくのは必要ですよね。
久保 やってたもんね、ひゃっくん。
ヒャダ やってました。うちの母は苦労話や悲しい話ばかりでしたけど。思ってたより暗かったんですよ。僕と姉が小学生のときに思ってた母と、実際の母がけっこう違ってたんですよね。僕から見えていた母は快活な人だったんですけど、実は友達もあまりいなかったらしくて。
能町 それはそれで話を聞きたいな。
久保 自分の歴史を語るのに、「歴史と言ったらやっぱ苦労話でしょ」という先入観もあったのかもしれない。本当は楽しいこともあったけど、それをトークするのがイメージできないというか。
能町 苦労話をしたがる人というのはいますよね。
久保 破天荒な話をできるタイプの人のほうが少ないのかもしれない。
ヒャダ でも、うちの父はカラッとした人生をしゃべってくれましたね。
──言ってましたよね。「沖縄でパイナップルを洗ってた」みたいな話。
ヒャダ そうですそうです。時給が50セントだったと言ってました。ベトナム戦争での死体を洗う仕事だったら、1ドル50セントもらえたけど、それはやめといたみたいな。
久保 自分の歴史って、どこに今の自分を形作ったポイントがあるのか、不思議な感じがしちゃいますね。
能町 私、久保さんをロングインタビューしてみたい。
久保 おれロン?
ヒャダ でもそれこそ、墓まで持っていく話というのもあるじゃないですか。
久保 すごいある。自分の中にもそれがあるけど、それをフィクションに昇華したい気持ちもなく、ただただ「ドブ川に流したい」みたいな思い出になってる。
ヒャダ でも75歳くらいになると、自分のエンディングが見えてきて、「墓まで持っていくつもりだったけど、もう解禁してもいっか」みたいな気持ちになるのかもしれないですね。
──「話す」というのも大きいと思うんですよ。脳内ではそこまで意識してなかったことが、誰かに話すことで思い出したり、気づいたりすることってけっこうあると思うので。能町さんのお母さん自身、話しているうちに自分の考えに気づいてきた、みたいなところがあるんじゃないかと。
能町 でも昔から「うちの父親のほうが圧倒的に母親を好きなんだろうな」というのはなんとなくわかってたんですよね。母親のそういう話を聞いてたら、父親インタビューもしたくなってきました。でも、恋愛の話は絶対しないだろうな。
ヒャダ やっぱり性別の差はあるかもしれない。うちの母も、(女性である)姉だからそういう話をしたわけであって。
久保 父が息子に聞かせるんだったら苦労話サイドになりそうだよね。
能町 言われてみると、(母親は)弟にはそういう話はしなさそう。
久保 思い返すと、私は友達との恋愛話さえ長いことしてないな……。「そういうノリの話、ちょっとやめて」みたいな気持ちの方が強いかもしれない。
(2025年2月1日のこじらせライブより)
上垣アナ、ラジオいける、いってほしい
──今日の夜の部は、上垣アナの希望で「上垣皓太朗のオールナイトニッポン」プレイをしたじゃないですか。あれ見てて思ったんですけど……上垣さん、そのうち本当にラジオをやりそうな気がするんですよ。
能町 うん。全然やれます。
ヒャダ 越境でね。佐久間(宣行)さんだって、テレ東にいたときから「オールナイトニッポン」やってたんですから。上垣くんは今、フジで一番キラキラした存在なんで、ありうると思います。
久保 でも「上垣さんばかりこんなに特別扱いしてていいんだろうか?」という気持ちもあるんだよね。今は女子アナを前面に押し出せない時代だから、ますます……。
──彼にとっては波が来てるとも言えますけど、若いうちからいろんなものを背負わされすぎてそうな気も。
ヒャダ 社会人1年目にいきなりちやほやを経験していいのか、とは思いますけど、彼は基本姿勢が平身低頭だから大丈夫なんじゃないですかね。
──さっきスタッフの方と話してたんですけど、上垣アナって声もいいじゃないですか。リモート打ち合わせでイヤホンしてると、声の良さがダイレクトに伝わってくるんですって。そっちの意味でもラジオに向いてそう。
ヒャダ それこそ本当に「ひるのいこい」(*)とか。でもラジオのフリートークのところを聞いてたら、どこか「安住紳一郎の日曜天国」みを感じたから、もしかして安住さんがロールモデルなのかと思っちゃいましたけど。何にしてもタレンティッドでした。
*上垣アナが好きな、NHKのラジオ番組。
久保 タレンティットだけど、今日はちょっと抜けたところも見れてよかった。そこで少し厄落としできたんじゃないかなって。
ヒャダ ね。まさか関西弁が下手だという(*)。
*ライブ本番で、兵庫県西宮市出身の上垣アナ、大阪市出身のヒャダイン、「大阪のおばちゃん」になった能町で関西弁トークをやろうとしたが、なぜか不自然なノリになってしまった。
能町 全然スルスル出なかったですよね。
ヒャダ もう「アナウンサー口調の上垣皓太朗」というキャラが、彼の中ですっかり確立してるのかもしれないですね。
久保 でもやっぱり他にはいない、特殊なキャラだという感じがしますね。
ヒャダ 我々とできることはまだまだありますよ。
久保 そうそう、後進がのびのびとやっていくのを手助けして、「才能あるからお前頑張れよ」みたいなやつをやっていきたいですね。
ヒャダ 『動物のお医者さん』の話題であそこまで盛り上がれる相手は我々だけです。
能町 なんで『動物のお医者さん』を好きなんですかね? 全く世代じゃないですよね。
久保 親が読んでたんじゃない?
能町 親はいくつなんだろう。
ヒャダ 聞けばよかったですね。いや……我々が傷つきそうだからやめましょう(笑)。
能町 40代だったらどうしますか?
ヒャダ ない話じゃない。
能町 全然ありえますよね。
久保 私たちの番組も、もう12年やってきてるわけだからね。長い時間を過ごしてきたんだなと。
──以前、メッセージが来てましたよね。「12歳の頃から見続けてきましたが、早いものでもう就職です」みたいなやつ。
ヒャダ なんてこったって感じですよ。
能町 大変なことになりました。
久保 でも「大人はいろんなタイプがいる」というのを見せることで、気が楽になる人もいると思う。「大人にも幅がある」ってことを伝えていきたいね。佐久間さんみたいな人もいれば、私みたいな人もいる。
ヒャダ 佐久間さんなんて、エネルギーの権化みたいな人じゃないですか。中年の危機なんてどこ吹く風。
久保 まず年頃の娘がいることで、若めのジェンダー観と趣味の情報を得られて、気が合う奥さんもいて、家のことも任せられるし、自分の仕事に没頭できる環境がある。で、自分なりに家事の参加もやってて(*)、馬力が発揮できる環境が整ってる。
*以前、「久保みねヒャダ」にゲスト出演した際、「娘の弁当は自分が作っている」と話していた。
ヒャダ 馬力ですよ、馬力。
久保 そこへいくと、私は今、働けてない側の立場になっちゃってるから、働けてない側のメッセージをみんなに送っていきたい(笑)。
能町 「働けてない」って(笑)。
(2025年2月1日のこじらせライブより)
(次回に続きます)
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