小芝風花さんが『あさイチ』プレミアムトークに登場。『べらぼう』撮影の裏側や母との絆を語る「フィギュアから芸能界へ。豆腐メンタルの私を元気づける3つの金言」
2025年2月28日(金)8時30分 婦人公論.jp
「私の場合、いわゆる《強運の持ち主》とは少し違います。15歳で女優デビューしてから現在に至るまで、決して順風満帆な道のりではありませんでした。」
2025年2月28日放送、NHK『あさイチ』のプレミアムトークに小芝風花さんが登場。現在、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』で、吉原の老舗妓楼・松葉屋を代表する遊女・花の井を演じています。主演の横浜流星さんとの撮影秘話や、母との絆を語ります。そこで、15歳で女優デビューするまでの道のりや、心の支えなどを伺った『婦人公論』2021年1月26日号のインタビュー記事を再配信します。
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NHK連続テレビ小説『あさが来た』でヒロインの娘役として注目を集めて以降、数々の話題作に出演。しかしデビュー当初は、悔しい思いをすることも多かったといいます。あきらめない原動力とは(構成=内山靖子 撮影=宅間國博)
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どんなに小さな役でもベストを尽くす
おかげさまで、このところドラマに主演させていただく機会が続いています。お仕事に恵まれているので、運はいいほうなのかもしれません。14歳のときに応募した事務所主催のオーディションで、3万5000人以上もの応募者の中からグランプリに選んでいただいたこともそうですし、大勢の俳優さんがいるなか、話題のドラマで役をいただけているのも本当にありがたいことです。
ただ、私の場合、いわゆる《強運の持ち主》とは少し違います。15歳で女優デビューしてから現在に至るまで、決して順風満帆な道のりではありませんでした。同年代の女優さんたちがどんどん活躍していくのを横目で見ながら、「なぜ、私はああいう役をやらせてもらえないんだろう?」と、悔しい思いばかりしてきましたから。
でも、そんなときでも、目の前のお仕事にはいつも全力で取り組んできたつもりです。負けず嫌いな性格なので、たとえオーディションに落ちても、「私を選ばなかったことを絶対に後悔させてやる!」と自分を奮い立たせたり(笑)。
また、ご一緒させていただいた共演者の方や監督さんたちに、「この子と仕事をして楽しかった。もう一度、一緒に作品を作りたい」と思ってもらえるように、どんなに小さな役でもベストを尽くし、私の存在を少しでも覚えてもらえるように心がけてきました。
そのおかげかどうかはわかりませんが、20歳を過ぎた頃から、「今度は、こんな小芝を見てみたい」と、それまでとは違った役柄でオファーをいただけるようになったのです。
大きなきっかけになったのが、NHKの朝ドラ『あさが来た』に、ヒロインの娘役として出演したこと。14歳から34歳まで、ひとりの女性の人生をじっくり演じたことで、私自身も女優として成長できたのかもしれません。
デビューして今年で10年目。こうして大きな役を任せていただけるようになったのも、周囲の方々とのご縁を大切にしながら積み重ねてきたことが、実を結び始めたからなのでしょうか。ほかの方から見たら、私の《一歩》は本当に小さなものだったかもしれません。でも、それらがすべてつながって今の自分があるのだと、あらためて実感しているところです。
スケートと女優の両立に悩んで
目標を達成するために、地道に努力や経験を積み重ねる——その姿勢は、芸能界に入る前、私がフィギュアスケートに熱中していた時代に学んだものです。習い始めたのは小学校3年生のとき。荒川静香選手がトリノオリンピックで金メダルを獲得して、興味を持ったのがきっかけです。
「勉強でもスポーツでもなんでもいいから、何か1つ熱中できるものを見つけなさい」というのが、母の教育方針でした。それまでも空手やバレエ、器械体操などを習っていたのですが、どれも続かなくて。そのなかで、フィギュアスケートだけは夢中になって、中学2年生で芸能界に入るまでずっと続けていました。
当時は、「次の試合までに、あのジャンプを跳べるようになろう」「今度の試合では今より順位を上げよう」など、その時々で目標を決め、それに向かってコツコツと練習する日々でしたね。週6日、まだ星が出ている早朝に家を出て、スケートリンクで滑る。そしてそのまま学校へ行き、放課後に再び練習——。そんな生活が丸5年間続きました。
もうやめたい、友達と遊びに行きたい、と思ったこともあります。でも、「シングルアクセルが跳べるようになったから、次はダブルアクセルを跳びたい」と、目標をクリアしたら、すぐに次の欲が出てくる。私、とても欲張りな性格なんです(笑)。だから、ハードな毎日でもくじけずにいられたのだと思います。
それだけに、芸能界かスケートか、どちらかを選ばなくてはならないときはつらかった。当初は、芸能界のお仕事をしながらスケートも続けられるんじゃないかと考えていました。でも、お芝居や発声のレッスンが週に6日あって、スケートも毎日滑っていないと感覚が鈍ってしまう。どちらも中途半端な気持ちで臨むわけにはいかない……。悩んだ挙句、せっかく大勢の応募者の中から選んでいただいたのだからと、芸能界で頑張ることに決めたのです。
振り返ってみれば、あの選択は正しかったと思います。もともと空想好きなところがあって、小学生の頃は、学校からの帰り道で「次の曲がり角でゾンビが襲ってきたら、手に持っている傘で戦おう!」なんて想像していたほど。
だから今も、「こういうシチュエーションのときには、どういう感情になるんだろう?」と、あれこれ考えてお芝居をするのがとても楽しいのです。また、将来の進路に悩んでいる同世代が多いなか、10代のうちに自分の好きな仕事に出会うことができたという意味でも、本当にラッキーでした。
成功した自分を想像すると
スポーツをやっていたので、メンタルが強いと思われがちですが、実は私、かなりの豆腐メンタルで(笑)。近頃はちょっぴり油でコーティングされて揚げ出し豆腐くらいにはなりましたが、意外に打たれ弱かったり、クヨクヨと悩んだりしてしまう。
そんなとき、いつも私の背中を押してくれるのが、スケートを習っていた頃に母がくれた3つの言葉。私にとっては金言なんです。1つ目は、夢に向かって努力すること。2つ目は、夢をあきらめないこと。そして3つ目は、成功した自分を想像すること。最後の言葉がとくに好きです。自分はこうなりたいんだからあきらめちゃダメだって、この言葉を思い出すたびに、もう一度自分を奮い立たせることができますから。
年女の今年は
今でも、不安を感じるときや悩みがあるときは、母になんでも相談しています。「今度のドラマ、私にちゃんとできるのかなぁ」と弱音を吐けば、「監督さんが選んでくれたんやから、あんたはのびのびやったらええねん」。逆にちょっと浮かれているときは、「あんた、調子に乗ってるんじゃない?」。
性格も似ているので、「今日、こんなことがあって」とグチを言えば、母も「なんやそれ、めっちゃ腹立つやん!」と一緒になって怒ります(笑)。でも、それだけでなく「その人は、こういうことが言いたかったんじゃない?」とアドバイスをくれるから、私も冷静になれる。そんな心強い母がそばにいるのだから、私は本当に幸せ者だと思います。
今は、1月から放送開始のドラマ『モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜』の撮影中です。私が演じる萌子美(もこみ)は、植物やぬいぐるみの気持ちがわかってしまう繊細な感覚の持ち主。そんな萌子美が数々の経験を経て成長していく姿と、彼女を取り巻く家族が再生していくさまを描いていきます。
植物と気持ちが通じるという点では、私と少し似ているかもしれません。自分の部屋に置いている鉢植えのガジュマルは、お店に何鉢も並ぶ中で「この子だ!」と心が通じ合って買ったもの。元気に育つよう、時折話しかけたりもしています。
2021年は、女優としてさらにステップアップするのが目標。憧れているのは寺島しのぶさん、安藤サクラさん、蒼井優さん、満島ひかりさんなど、どんな役も見事にこなす先輩方。私も、リアリティを感じてもらえるように、幅広い役柄を演じ分けられる女優になりたいです。
丑年生まれなので今年は年女。ウシだけに、相変わらずゆっくりなペースかもしれませんが、これからも一歩ずつ着実に歩んでいきたいと思っています。