自分の事故死から物語がはじまる異色のアドベンチャー『Fragments of Him』が話題に

2月28日(日)16時0分 おたぽる

『Fragments of Him』公式サイトより。

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 ビデオゲームでは、自分が操作しているキャラクターが死んでしまえばゲームオーバーになる。“ライフ”のストックがあれば即終了にはならないものの、とにかく死なないために全力を尽くさなければならないのがゲームの常だ。しかし驚くことなかれ、プレイ開始早々に主人公が死んでから話が進む物語形式のゲームがリリースを控えている。


■自分のいない世界を“ゴースト”になって見守る

 オランダを拠点に活動するインディーズデベロッパー、SassyBot Studioが年内のリリースを目指して鋭意開発中のタイトルが『Fragments of Him』だ。このゲームではなんと、プレイがはじまった途端に主人公の“ウィル”が交通事故で亡くなってしまうのだ。

 いきなり主人公が死んでしまって、では一体どのようにゲームが進行していくのか……? 若くして(20代半ば)不遇の死を遂げたウィルは“あの世”へ行くわけではなく、魂はまだこの地に残された状態であり、プレイヤーはいわば“ゴースト”のウィルを操作して、友人たちや最愛の祖母の部屋を訪れることで、物語が進んでいく。あくまでもゴーストであり、他人からはその存在を確認することはできず、できることも限られている。友人の行動に直接影響を及ぼすことはできず、ほとんどの場合が傍観者として物語に関わることになるということだ。

 物語の舞台は1990年代のイギリス・ウィンチェスターの街をモデルにしており、主人公のウィルはかつてウィンチェスター大学の卒業生で、在学時には学友で恋人の女性・サラと深い関係にあったという。卒業してからは別れることになったが、それでもまだ友人としての関係は続いていたという設定だ。ゲームではサラのほかに、親友でパートナーのゲイ男性であるハリー、祖母のマリーが重要人物として登場し、ゴーストとなったプレイヤーはこの3人を背後から見守り、ウィルを失った彼らの悲しみを共感するとともに、これまで知り得なかった彼らの素顔を垣間見ることになる。そして時にはウィルのほうから“メッセージ”を与えて彼らを導きつつ、この4人が関係する真実のドラマが明らかになってくるという内容のようだ。

 操作するのがゴーストとはいえ、ゲームシステム的にはファーストパーソンゲームなのだが、開発を担当するマタ・ハギス氏はあえてこの作品を“2人称ゲーム”であると定義している。ウィルのゴーストはFPSゲームのように主体的に行動することはできないからだ。したがって、ストーリーの分岐もそれほどなく、基本的にエンディングも1種類のようである。とすれば厳密な意味ではビデオゲームとは呼べないのかもしれないが……。

「これもゲームだと考えています。本作をプレイすることで、物語をベースにした感動体験を“観客”として味わってもらうゲームなのです」とハギス氏は「VICE」の取材に回答している。つまり映画のように完全に受身にはならず、ある程度インタラクティブに関わることができる“感動体験映像コンテンツ”なのだ。『Fragments of Him』がいったいどんな感動体験をもたらしてくれるのか期待したい。


■小説と映画とゲームを混ぜ合わせた新ジャンル

 主人公の死から物語がはじまるという斬新なアイディアは3年前のゲームジャムで生まれたということだ。ゲームジャムとは限られた時間の中で、その場でゲームの企画を考え、場合によっては制作までしてしまうイベントだが、その時のテーマは「ミニマリズム」だったという。ミニマリズムは美術・建築・音楽などの分野で使われる思想的な主義のことだが、現在ではそれをライフスタイルに適用させて、必要最限度のモノで暮らす生活を指す言葉にもなっている。

 このテーマのもとに、最初はパズルゲームを作ろうと構想を練っていたハギス氏だったが、ミニマリズムを実践する「ミニマリスト」のことに考えが及んだとき、「なぜモノが無い場所で暮らそうとするのか?」という、当然といえば当然の疑問が生じてきたという。そこでハギス氏なりに考えた結果、モノが備えている“思い出”に着目することになる。つまり身の回りのモノには、それぞれ過去の思い出が詰まっており、時には思い出したくない記憶もよみがえらせることがある。こうした“グッズ”の数々を、ミニマリストたちはなるべく持ちたくないと考えるのではないかということだ。

 逆に言うならば、いかにモノが記憶の再現力に優れているものであるかが思い知らされることになり、故人の遺品と身近にいた人々に残された記憶だけで物語を作ることを思いついたのが『Fragments of Him』のアイディアの萌芽であったという。作品中でも、ウィルの“遺品”の数々がゲームの進行に効果的な役割を果たしているのだ。

 以前に当サイトで紹介した小児がんの子どもを持った父親を追体験する『That Dragon, Cancer』や、国立公園の職員になって山火事防止に取り組む『Firewatch』など、小説と映画とゲームを混ぜ合わせたような作品が最近目立つようになっている。2013年の屋敷探索ゲーム『Gone Home』も“何も起らないゲーム”として大いに話題になった。この『Fragments of Him』がさらにこのジャンルの可能性を広げるものになるのかにも注目だ。
(文/仲田しんじ)

【参考】

・VICE
http://www.vice.com/read/fragments-of-him-is-an-interactive-reflection-on-loss-that-even-the-best-player-cant-make-happy-336

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