介護殺人に温情判決 やむにやまれぬ犯行と認められた面あり

2月28日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 昨年7月、世間の関心を集めた2つの介護殺人事件の判決が下された──。7月8日、妻(当時83歳)に対する嘱託殺人の罪で起訴されたA氏(93歳)に、千葉地裁は「懲役3年、執行猶予5年」を言い渡した。公判で明らかにされたのは60年以上連れ添った最愛の妻を自らの手で殺めなければならなかった夫の悲痛な心情だった。


 事件が起きたのは2014年11月。千葉県内の自宅で妻の首にネクタイを巻き付け殺害したA氏は「妻を殺した」と自ら110番通報し、逮捕された。


 その前年10月に妻は転倒して腰を骨折。自力歩行が困難になり、痛み止めの薬も効かず、昼夜を問わず苦痛に苛まれるようになった。「痛みで眠れない」「もう死んでも構わない」と何度も訴える妻の姿を見て、A氏は「妻はなんでこんなに苦しむんだ!」と苦悶に満ちた声で叫んだ。当時、A氏は妻と2人暮らし。


〈自宅において被害者とほぼ2人きりの閉ざされた環境で眠る間もなく献身的に介護を続ける中で、次第に疲弊し、追い詰められた〉(判決文より)


 事件当日。廊下で転倒した妻から「もう痛みに耐えられない。何もできない。苦しいだけ。殺してほしい」と懇願され、A氏は“もう断われない”と決心。その日の夜、添い寝をしたA氏は楽しかった思い出を妻に語り続けた。その時の様子を「妻はニコニコしていた。とても綺麗だった」と公判で話している。


 判決後、裁判官は「奥さんが悲しまないよう、穏やかな日々をお過ごしになることを願っています」とA氏に語りかけた。


 この判決の9日後、熊本地裁は妻(当時67歳)に頼まれ首を絞めて殺害したB氏(71歳)に「懲役2年6月、執行猶予4年」の判決を言い渡した。


 約6年前、30年以上勤めた大手鉄鋼会社をリタイア後、故郷・熊本に夫婦2人で移り住んだB氏だったが、移住後間もなく、妻が階段から落ちて背骨を骨折。「骨粗鬆症」と診断された。


「症状は日に日に悪化し、奥さんはほとんど寝たきりの状態になってしまった。以来5年間、B氏は独りで妻の介護をしてきました。次第に妻は“生きていても仕方がない”“死にたい”といった言葉を漏らすようになり、事件直前には妻が自分の首を絞めながら“殺してほしい”と繰り返すようになったといいます」(裁判を傍聴した地元紙記者)


 公判で検察官から「介護で一番辛かったこと」を問われたB氏は、「“死にたい”と言いながら、手で(妻が自分の)首を絞める姿を見るのが耐えられませんでした」と語った。


 事件前日も妻は「何もできない。生きる意味がない。楽になりたい。首を絞めて」と懇願。絶望感で精神的に限界に達したB氏は2015年5月3日、妻を車に乗せ、車内で絞殺した。


 A氏もB氏も有罪となったが、いずれも執行猶予が付く“温情判決”となったのは、こうした事件が「やむにやまれぬ犯行」と認められた面もあったといえるだろう。


※週刊ポスト2016年3月4日号

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