目にする機会減少した「お召し列車」 陛下のお考えも影響か

3月1日(木)7時0分 NEWSポストセブン

47年ぶりにJR東日本が新造したお召し列車(撮影:白川淳)

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 光沢を放つ漆色の車体。先端には菊の御紋が金色に輝き、日章旗が翻る──天皇、皇后、皇太后のために特別に運行される列車を「お召し列車」といい、なかでも天皇のために特別に造られた車両を「御料車」と呼ぶ。『御召列車』の著書がある鉄道史研究家の白川淳氏が解説する。


「御料車には、天皇皇后両陛下と皇族、国賓以外乗ることはできません。昭和初期から運行していた一代前の『一号御料車』は老朽化したため、2007年にE655系に替わりました。翌年11月、両陛下がスペイン国王夫妻と茨城県つくば市をご訪問される際に、初めて運行されています」


 E655系に限らず、天皇が利用する列車はすべてお召し列車と呼ばれる。


「お召し列車は、春の植樹祭や秋の国体へのご出席、ご視察といった公式のご予定で運行される場合と、ご静養や私的旅行のために非公式に運行される場合があります。公式に運行される際は、原則として列車に菊の御紋が据えられ、日章旗が掲げられます」(白川氏)


 日本初の鉄道が開業したのは、1872年10月。その3か月前、仮運転していた列車に明治天皇が乗車したのが、お召し列車の始まりとされている。


 1925年にはJR山手線の原宿駅に「宮廷ホーム」と呼ばれる皇室専用の駅舎が設けられ、昭和天皇の時代によく利用された。150年近くにわたって運行されてきたお召し列車だが、その実体はベールに包まれている。


「陛下・皇族の安全確保のため、運行時は厳戒の警備態勢が敷かれ、ダイヤは非公開です。窓には防弾ガラスが使われていますが、内部の設計などを含めた詳細は一切明らかにされていません」(白川氏)


 運行に際しては綿密な計画が立てられ、特別な配慮がなされる。


「国鉄時代は、あらゆる規定が書かれた運転の手引が鉄道関係者に配布されていました。陛下にご負担がかからぬよう列車の揺れは最小限に抑えられ、停車位置が3センチ以上ずれることはなかったようです。


 今でも白い制服を着た駅長らが敬礼してお見送りやお出迎えをし、技能優秀な選りすぐりの運転士が運転を担当します。お召し列車は、まさにオンリーワンの列車なのです」(白川氏)


 平成に入ると、飛行機や新幹線を使うことが多くなり、菊の御紋や国旗が掲げられたお召し列車を目にする機会も減少する。「宮廷ホーム」も、2001年を最後に利用されていない。そこには、国民の負担になることは控えてほしいという今上天皇の意向もあった。皇室ジャーナリスト・山下晋司氏が言う。


「陛下のお考えだけで決まることではありませんが、大きな費用が生じることや、国民の迷惑になることはできる限り避けたいという基本的なお考えが影響しているのでしょう」


 戦前までは、国民はお召し列車の前で頭を下げ、列車を見ることすらできなかった。いま目にすることができるのは、両陛下が車窓から沿道の人々に手を振る姿だ。


「両陛下がお召し列車に乗っておられるときも、沿線に歓迎の人々がいれば、お立ちになってお手振りをされます。移動中は休んでいただきたいと、ご体調を気遣う声もありますが、こうした国民との触れ合いは、両陛下の喜びにもなっているでしょう」(山下氏)


 今上天皇が退位する平成31年4月30日まで1年余りとなった。平成最後のお召し列車を目にする機会は、いつ訪れるのだろうか。


●取材・文/戸田梨恵


※週刊ポスト2018年3月9日号

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