29歳で誘拐され顔面麻痺...凄絶人生乗り越えた男の挑戦 音楽未経験からわずか2年で1000人規模ライブ

2025年3月2日(日)19時5分 スポーツニッポン

 2月24日、DUALのボーカル・SYOTAが初のソロワンマンライブ「WhoisSYOTA?」をヒューリックホール東京で開催した。音楽未経験からわずか2年で1000人規模のライブに挑戦したこの夜。その軌跡をレポートする。

 SYOTAは37歳、東京都葛飾区の母子家庭に生まれ育つ。住居は風呂なし共同トイレ。母と祖母は働き詰めで、幼少期は曾祖母に育てられた。

 動物好きの彼はペットショップに就職するも、ある日交通事故を起こし、女手ひとつで育ててくれた母に多額の借金をしてしまう。 この出来事をきっかけに転職を決意。「月100万円稼げる仕事」と検索し、宝石関係の仕事に就職。その後独立し、法人化するまでに成長した。

 順風満帆に見えた人生は突然崩れる。29歳のある日、誘拐され、24時間に及ぶ拉致監禁と暴行を受ける。死を覚悟した瞬間、彼の脳裏に浮かんだのは「幼い頃の夢を追わなかった後悔」だった。

 「もし生きて帰れたら、必ず歌手になる」

 奇跡的に助かったものの、彼を待っていたのは顔面麻痺だった。歌手を目指すどころか、表情すら動かせない日々が続いた。決意した夢を諦めかけたが、同じような経験や後遺症に苦しむ人々の希望になりたいと思い、2022年にロックバンド「DUAL」を結成。

 バンド結成1年目で恵比寿LIQUIDROOMにて1000人、2年目には豊洲PITで3000人のライブを達成。異例のスピードで成功を収めたかに見えたその時、彼を襲ったのは突発性難聴だった。右耳の聴力を失いながらも、SYOTAは今回のソロライブを決行。

 SYOTAが音楽活動を始めたのは、DUALの結成からだった。それまで音楽経験はなく、バンドのメンバーに恵まれながら活動を続けてきた。2024年8月、豊洲PITでのライブを成功させたものの今後も活動を続ける上で、今の何も知らない自分のままで音楽の神様は微笑んでくれるのかと疑問に感じたSYOTAは、プロの環境に飛び込むためにソロライブを決意。ソロプロジェクト始動後わずか半年後にこの大舞台を実現させた。

 開場直後、世界的に活躍するDJ・Baby-TのWelcomeパフォーマンスがスタート。SYOTAの旧友である彼は、この日のために海外から駆けつけ、熱気ある空間を作り出した。開演前のアナウンスを務めたのは、「ちびまる子ちゃん」や「芸能人格付けチェック」など人気番組のナレーターとして知られる木村匡也。名台詞を交えた軽妙な語り口で観客の期待を高め、いよいよ幕が上がった。

 ステージ上にはまず、TikTokで100万再生を超え話題となった、SYOTAの人生を振り返る動画が流れた。しかしその直後に披露されたのは音楽ではなく、なんと演技。人気急上昇中の俳優・福島愛と村松健太(むらけん)による迫真のパフォーマンスで観客を惹きつけた。

 SYOTAのステージはジャンルを超え、多彩なアーティストとのコラボレーションが特徴だ。そして驚くべきは依頼したのではなく、自身のご縁による共演という点である。Baby-Tが編曲したDUAL楽曲のDJmix、本公演のために作られた新曲『Magic』ではクラブのような空間を作り出した。

 次に登場したのは、氷室京介GLAYら日本トップアーティストのドラムを支えるTOSHINAGAI。SYOTAに新ジャンル「Jazz」への挑戦を課した彼の選ぶミュージシャンと共に『FeelLong』『Gift』を情熱的に披露した。さらに、本公演のディレクターも務めた感覚ピエロの横山直弘が登場。DUAL結成当初からSYOTAを支え続ける横山とは、『INeedYou』『RED BITE』『天才ゲーム』などを息の合った演奏で届け、ステージを盛り上げた。

 楽曲の盛り上がりと共に、EXILEやちゃんみな、timeleszのステージを務めるダンサーたちが次々とステージに加わる。さらに大阪からSYOTAを支える、BEASTfrom関西DUALの源元気も登場し、『YAGURA』を披露。代表曲『龍の唄』では10名のキッズダンサーも参加するなど、ステージは豪華絢爛なエンターテインメントショーとなった。

 アンコールでは、現在闘病中で活動休止しているリーダー・MIYATAをステージにあげ、仲間への強い愛を見せた。観客は総立ちで前方に駆け寄り、会場が一体となる感動のクライマックス。本編でジャズを披露したTOSHINAGAIや名古屋・大阪のメンバーたちもサプライズ登場し、感動のフィナーレを迎えた。

 「武道館までに必ずまたこの場所に戻ってくる」

 自身に課した挑戦を見事乗り越え成長をみせたSYOTAはそう宣言する。そして、「7月4日に公開される阿部寛さん主演の映画『キャンドル・スティック』に、なんらかの形で関わる」と最後に重大発表をして幕を閉じた。全ての瞬間にSYOTAらしさが詰まったソロライブとなった。

スポーツニッポン

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