塩対応が持ち味の島崎遥香 深夜ドラマで「怪優」の仲間入り

3月3日(土)16時0分 NEWSポストセブン

嫉妬深くて攻撃的な元彼女を熱演

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 テレビの視聴習慣は以前とはかなり異なってきている。ながら視聴は減り、録画が増えた。ネットで目にする番組の「レビュー」が視聴者の行動を大きく左右する。となれば、大きな宣伝予算を持つゴールデン枠の番組が数字をとるという意味では更に有利になるのだが、厳しいはずの深夜帯にも秀作は存在する。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


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 なぜ、人はドラマを見るのか? ドキドキしたいから。予想外の展開にワクワクしたいから。次に続く物語のスリル感、どこへ着地するのかわからない面白さもまたドラマの大きな醍醐味のはずです。


『ドクターX』が視聴率20%超えした理由が“水戸黄門”っぽさにある、という指摘を見ました。『相棒』しかり、『科捜研の女』しかり。パターンを踏襲するドラマが高視聴率の傾向が目立つ。たしかに一話完結型だと途中の回から始めても見やすいし、パターンが決まっていれば安心していられる。しかし、ドラマ視聴者みんなが満足しているわけではないこともまた事実。


 一話完結型の入りやすさと、連続ドラマのスリル感。その両方の旨味を組み合わせた「良いとこ取り」作品を作るのは至難の業でしょうか?…そう思っているところにドンピシャ、優れたドラマが登場しました。『リピート〜運命を変える10か月〜』(日テレ系木曜23:59)。


 深夜枠ゆえなのか、視聴率は3%程度しかなく超低空飛行。視聴者満足度の調査でも、話題にすらならない歯がゆさ。しかし、もはや世間の評判なんてどうでもいい。『リピート』はドラマの三要素──役者、演出、脚本が見事に揃い総合力で光っています。


「あの時こうしていれば」と考えたことがない人は、いないはず。


「2度目の人生は衝撃の大どんでん返し!」というキャッチコピーが示すように、このドラマのテーマは「時を遡る」こと。“もし一回限り10か月前に戻る“ことができたら人はいったいどんな行動をとるのか、が物語の軸です。


 主人公・篠崎鮎美(貫地谷しほり)は、地味な性格の図書館司書。フリーターの圭介(本郷奏多)は夢を諦めかけた青年。カフェ経営者の天童太郎(ゴリ)、専業主婦の橫沢佐知子(手塚理美)、学歴コンプレックスを抱く予備校生・坪井(猪野広樹)など性格も仕事も背景もまったく違う8人が、たまたま「人生をリピートできる」と集められたところから物語は始まる。


 冒頭、集まった仲間、一人ひとりが抱える人間関係や生活が紐解かれていく。その意味で、滑り出しは一話完結型に近いオムニバス的展開。しかし、不慮の事故で一人が亡くなりまたひとりと、リピート仲間が消えていくあたりから、不気味な雰囲気が漂い始める。中盤からミステリー色がひときわ濃くなり、謎が謎を呼ぶ連続ドラマゆえのスリル感が増していきました。という意味でまさに、一話完結型と連続ドラマの「良いとこ取り」の構造なのです。


 何と言っても注目はまず、役者。


 鮎美役の貫地谷しほりはほんわりとした、生きることにちょっと不器用でまっすぐな女性を演じています。地味だけど自分らしい人生を手探りしていく素直な人物が、丁寧に表現されています。


 その相手役・圭介を演じる本郷奏多も、輝きを放っています。「金さえ手に入れば」とやさぐれ、キャバクラでバイトしていた圭介。しかし鮎美と出会って、手放した夢の大切さに改めて目覚める。前半と後半で変化していく繊細な人物像を鮮やかに印象的に演じ切っています。


 一方、カフェ店主・天童役のゴリが、二人とはまた質の違うキャラクターを明快に表現している点も注目。ニコリともせず渋い顔、表情を崩さない。何かに悩んでいる。後悔している。打つべき手を探す。隠している秘密もある。そんな複雑な中年男・天童というキャラクターの造形が安定していて揺るぎない。ゴリはもはや俳優そのもの、というか映画監督もしているだけあって演出家の意図・狙いを的確に表現している巧さ、実に見事です。


 あわせて、この人の演技にも言及しないわけにはいきません。


 圭介の元彼女・由子役の島崎遙香。由子は、独占欲が強く嫉妬深くて攻撃的で圭介に首輪をして犬のようにかしずかせる。圭介の心が離れてしまうとストーカーになる。目が笑っていないから怖い。嫉妬のあまりナイフで刺し殺そうかというシーンは、画面からはみ出してくるド迫力。「女優」にかける強い意志の現れでしょうか、アンバランスな人物を島崎さんは渾身の力を込めて演じ切りアッパレ。AKB時代、「塩対応」が持ち味でしたが、「塩」をとっくに通り越し、凄まじい恐怖を感じさせる「怪優」の仲間入り、と言えるでしょう。


 リケジョの大森知恵(安達祐実)は冷たく怪しい。坪井(猪野広樹)は心の壊れ具合がゲスすぎて気味悪い。風間(六角精児)は裏で全ての糸を引いていそうな謎めいた人物……と一人ひとり、違うキャラがきっちり粒立っている。それこそ、演技の力と共に演出の力です。横浜等のロケを多用した演出の臨場感、疾走感も生きています。


 謎解きストーリーの一方で、ふとした瞬間に沁みる言葉にも出会う。


「何かが足りないってことは、伸びしろがあるってこと」

「リピートしてもしなくても、自分の人生変えたければ、努力しないといけないんだよ」


 原作は150万部のヒット作『イニシエーション・ラブ』作者、乾くるみの同名小説。しっかりとした原作があり屋台骨があるからこそ、脚本には過剰な説明やムダがなくセリフはシャープで時に印象的、テンポよく仕上がっています。


 一話完結型と連続ドラマの良いとこ取り。謎解きから人生訓まで光るセリフ。それぞれ役者の切れた演技と、人物造形をはっきり際立たせる演出力──そんな総合力が光る、今期の秀作ドラマです。

NEWSポストセブン

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