『翔んで埼玉』社会現象級ヒットの予感!?「カメ止めに続く大当たり映画」
2019年3月5日(火)12時38分 シネマカフェ
◆『翔んで埼玉』って?
「パタリロ」などで知られる魔夜峰央氏の同名漫画を原作にした本作。オープニングから魔夜氏本人が登場し、“この物語はフィクションです”というお決まりの文言に続いて、“実在の人名団体、とくに地名とは全く関係ありません”といったお断りが入った上で始まる、いたって大真面目で壮大な茶番劇だ。
◆公開初週超えのヒットは『ボヘミアン・ラプソディ』以来
そんな本作は2月22日(金)に公開されるや、初日3日間で動員24万7,968人、興行収入3億3094万9,400円を達成し、まさかの週末ランキング初登場1位となる大ヒットスタート。
さらに公開2週目となった3月2日(土)〜3(日)は、アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』を抑えて動員数20万4,770人、興収2億8055万8,300円という数字で土日2日間の興行成績は公開1週目を上回った。この事態は極めて稀で、動員数は前週比107.2%、興行収入は108.3%と、あの『ボヘミアン・ラプソディ』の公開2週目(動員対比107.3%、興収対比109.6%)に倣うかのような伸びとなっている。
客層は学生からシニアまで幅広く、平日も好調に推移していることもあってか、公開10日間の累計は動員数73万9,028人、興行収入9億580万7,800円となり、興行収入30億円も見越せる数字をたたき出している。
◆ご当地・埼玉で大ウケ!「伝えたいのは地元愛」
本作は魔夜氏独特の耽美な世界観を、二階堂さんやGACKTさん、伊勢谷友介、京本政樹ら眉目秀麗な面々が“ガチ”で演じることによって、実在の県を取り上げながらも徹底したファンタジー・コメディとなっている。
そのうえで、彼らが演じる<伝説パート>と、島崎遥香や麻生久美子、ブラザートムが演じる埼玉県熊谷市在住の家族がその“都市伝説”に触れることで、メタ的に郷土愛を再認識する<現代パート>の二部構成になっている点も特徴だ。
<伝説パート>では、二階堂さん演じる東京都知事の“息子”・壇ノ浦百美の「そこら辺の草でも食わせておけ!」に代表されるように、埼玉ディスりや自虐ネタのオンパレード。日本で最もアツい街・熊谷いじりはほんの序の口で、地元のFMラジオ局「NACK5」や「十万石饅頭」「深谷ネギ」、チェーン店の「山田うどん」などご当地モノも続々登場する。
劇中にも登場するように “海がない県”であることから、「(冒頭の)『東映(波がザッバーンしてるアレ)』ですでに笑いがこみ上げた埼玉県民は自分だけでしょうか……。海は埼玉県民の憧れ」といった声も上がるほど。
こうした“埼玉ディスり”のため、埼玉県民に受け入れられるのか関係者一同は若干の不安を抱えていたというが、ふたを開けてみれば、都道府県興行収入シェアで首都・東京を抑え、なんと埼玉県が全国1位に。公開3日間で最も多くの動員を記録したのは、さいたま新都心(さいたま市大宮区)にある「MOVIXさいたま」となった。
SNSには、「想像以上に本気で作られた茶番劇で、とても見ごたえがあった」「上映終了後、拍手が起こった…こんな体験は初めて」「大人が大真面目に作ったふざけた映画はいい」「お金もかけて、きちんと下らないから面白い」「日々に疲れた人におすすめ。ほんとくっだらない!!!(※絶賛してる)」と、この本気の茶番劇を絶賛するコメントが後を絶たない。
また、「あの役はGackt様じゃないとダメ」「ガクト&伊勢谷友介が同じ画面フレームインするだけで顔面偏差値が爆上がり」「(友情出演の)成田凌そこかーい!」とキャスト陣を称える声や、「“美男子”を演じるのが二階堂ふみで、男なので一人称が“ぼく”で、何度もGACKTにキスをおねだりする、という情報はもっと大々的に報道すべき」といった声が。
埼玉県民と思われる鑑賞者からは「埼玉をディスってはいるが、伝えたいのは地元愛」「都内の上映場所少なすぎて浦和帰って観ました」といった声が上がり、ふだん映画館には行かないが「埼玉県民として観てきました」「11年ぶりに映画館行った」という人までも。
しかも、脚本を手掛けた徳永友一氏(ドラマ「僕たちがやりました」「海月姫」「ストロベリーナイト・サーガ」)が草加市にある獨協大学出身ということもあってか、“埼玉県民か否か”を見分けるための踏み絵が草加せんべいとなっており(原作では県知事の写真)、「踏み絵が草加せんべいww」「草加せんべいが出オチで爆笑」と映画ならではの改変に歓喜する声も多い。
この盛り上がりに、「翔んで埼玉で話題だからって調子乗んなよって言われそう」と心配(?)する県民の声も上がり始めている。
◆『テルマエ』『のだめ』を手掛けた監督は千葉出身!原作超えの埼玉vs千葉対決、実現
SNSで話題を呼んで2015年に復刊した、30年以上も前の未完の原作を実写化した本作。メガホンをとったのは、『のだめカンタービレ』シリーズや『テルマエ・ロマエ』シリーズ、『今夜、ロマンス劇場で』といったヒット作を生み出してきた武内英樹監督。予告編でも印象的な「THE ALFEE」高見沢俊彦の大凧と「X JAPAN」YOSHIKIの大漁旗が掲げられた、江戸川を挟んだ埼玉解放戦線vs千葉解放戦線の対決は映画オリジナルのシーンだ。
こうした千葉いじりも随所にあり、笑うポイントがまるで異なり“出身地バレ”することから「埼玉&千葉県民は地元の映画館で観るべし!」といったアドバイスが上げられ、「聞いていたとおり、埼玉県人と千葉県人で、笑いが起こるツボが違う!(笑)」「埼玉出身、いま千葉県民のわたしにはあるある過ぎて痛快」「笑うポイントで千葉県民感丸出しになった」「ふなっしー見つけた時は自分の中の千葉の血を感じた」と、両者のバトルには白熱した(?)感想が続々。
このバトルは劇場側にも飛び火し、魔夜氏が原作執筆時に住み、二階堂さんやGACKTさん、武内監督による舞台挨拶を勝ち取った埼玉「新所沢レッツシネパーク」と『ボヘミアン・ラプソディ』のスタンディング応援上映で有名な千葉「成田HUMAXシネマズ 」で“代理戦争”が勃発。Twitter上で攻防を見せた後はお互いを称え合い、同じ映画館として友情を深めるという胸熱の(?)展開も巻き起こっている。
加えて、東京一極集中や地域格差などもさらりとディスられており、瓶に詰められた空気の匂いだけで東京の地名を当てる、その名も「東京テイスティング」には「完全に芸能人格付けチェックのノリ」「油断してると東京生まれもあれだな」「東京でも八王子と田無に飛び火してて劇場内で笑いがw」との声が。
「上京組のわたしでさえ面白かったのに、埼玉東京千葉群馬の人はどんな気持ちで観るんやろう」という地方出身者からも声も聞かれ、実は埼玉や関東圏だけの問題ではない、“いま”の日本を笑い飛ばし、ハッとさせる物語が人々の心をつかんでいるようだ。
『翔んで埼玉』は埼玉県ほか全国にて公開中。