生田斗真、セリフほぼなし! 身体表現で魅せる難役への挑戦「いい財産に」 40代を迎えてからの変化も語る
2025年3月5日(水)10時45分 マイナビニュース
●さまざまな感情をアクションで表現「チャレンジングでした」
アクション、コメディ、ラブストーリーなどあらゆるジャンルの作品で活躍し、見る者を魅了している俳優・生田斗真。Netflix映画『Demon City 鬼ゴロシ』(世界独占配信中)では、最愛の妻と娘の復讐を誓う殺し屋を演じた。セリフはほぼなし、すべての感情をアクションで表現しなければならない難役に挑んだ生田にインタビューし、本作での挑戦を振り返るとともに、今の俳優業への思いやこれまでの転機など語ってもらった。
河部真道氏による漫画『鬼ゴロシ』を実写化した本作。殺し屋稼業をしていた坂田周平(生田斗真)は、家族のために足を洗おうとしていた矢先に、謎の組織「奇面組」によって愛する妻・葵(木竜麻生)と娘・りょう(鷲尾心陽)を奪われてしまう。頭を撃たれた坂田は奇跡的に生き延びるも昏睡状態に。12年後、再び奇面組に襲われた坂田は、眠っていた殺しの本能が覚醒。壮絶な復讐が始まる。坂田の仇敵となる「奇面組」には尾上松也、東出昌大、高嶋政伸(高ははしごだか)、田中美央が名を連ね、監督・脚本は映画『メランコリック』の田中征爾氏が務めた。
本作は、本日5日に発表されたNetflix「日本の週間TOP10(映画)」で1位、「週間グローバルTOP10(非英語映画)」でも2位を獲得(2月24日〜3月2日)。さらに、韓国、カナダ、イタリア、ドイツ、フランス、ブラジル、インドなど世界69の国と地域でも「週間TOP10入り」を果たした。
——本作への出演を決めた思いをお聞かせください。
日本の作品においては復讐アクションに特化したものはそんなに多くなく、そういう意味で自分にとっても新たなチャレンジになると思いましたし、こんなにセリフのない役は初めてで、情熱、怒り、悲しみなどさまざまな感情をすべてアクションで表現していくというか、そこで見せなきゃいけないというのはすごくチャレンジングでした。
——坂田を演じる際にどんなことを意識しましたか?
坂田が“復讐の鬼”になるきっかけとなる、家族を奪われてしまった瞬間……あの日から、燃え盛る怒りのエネルギー、怒りの炎が消えたことは一瞬もないというような、ずっとあの日に囚われている感じと、常に憎しみの思いを原動力にしているパワー、そういうものは途切らせないようにしなきゃと思って演じていました。
——キレキレのアクションを披露されていますが、事前にどのような準備をされましたか?
アクション練習をアクションチームと数カ月かけてやっていて、体作りもしていました。
——これまでもさまざまなアクション作品を経験されていますが、今回のアクションで今までにない挑戦だったと感じていることを教えてください。
今までやってきたものと圧倒的に違うのは、残虐性が乗っかっているということ。ただ単に相手を倒すとか致命傷を与えるアクションではなく、そこに憎しみの感情も乗っけていく。僕はアクションで本当に当てるのが苦手で、「相手に当てて怪我させてしまうかもしれない」「相手が痛い思いしてしまうかもしれない」という気持ちが働いてしまうんですけど、アクションチームにも「生田さん、鬼になってください! 思いっきりいっちゃってください!」と言われて。自分の中の優しさの部分や情の部分を取り除くように稽古をしました。
——本気で当てるように?
そうです。アクションチームから「我々はそのために鍛えているので大丈夫です。思いっきりきてください!」と言われて、「いくよ!」って。
——作品によっては、本気で当てないアクションも多いわけですよね。
立ち位置によって当たっているように見えたり、一瞬で相手を倒すアクションもありますが、今回は何をやっているかわかるアクションをテーマにしていたので、カメラのアングル的に若干引いた全身が映るようなアクションもたくさんあったので、当てなきゃいけないところは当てていきましょうというのが多かったかもしれません。
——今後また本気で当てていくアクション作品があったら、優しさを捨ててできそうですか?
はい! また数カ月の稽古が必要かもしれないですけど(笑)
——改めて本作への参加がご自身にとってどんな経験になったかお聞かせください。
身体表現がここまで試される作品はそうそうないですし、ここまで振り切ったチャレンジングな役はなかなか出会うことがないと思うので、いい財産になりました。セリフとかいろんなことが封じられ、いつものお芝居とはまた違う表現だったので、すごくいい経験に。体力的には1番しんどかったかもしれません。
——セリフではなく表情で魅せるということで、これまで以上に表情も意識して演じましたか?
そうですね。あとは、前進していくエネルギーを放出し続けなきゃいけないというか、それをキープするのが大変でしたが、すごく刺激的でした。
●「年齢を重ねて休むことも大事だと思うように」
——1996年にデビューされてから今年で29年になりますが、今の仕事に対する思いもお聞かせください。
休めるときは休みたいです(笑)。20代の頃は特に、休みなく働いているというか、常に能動的に何かを摂取したり、何かを求めたりすることが一番刺激的でしたが、40代を迎えて、何もしない時間から得る何かみたいなものもきっとあるなと。何かきっかけがあったわけではないですが、年齢を重ねて休むことも大事だと思うようになってきました。
——実際に何もしないで休んでいる時間がプラスになったなと感じたエピソードがありましたら教えてください。
わからないですけど、どんなに強い格闘家もずっと力が入っているといいパンチが出ないし、いい技がかけられないのと一緒で、脱力する時間が必要だなと。いざというときにパワーを一点に集中させていく技を身につけていけたらなと思っています。
——この作品もパワーを貯めてぶつけた作品に?
そうですね。空いている時間に(娘役の)心陽ちゃんと散歩したりして、本番になったらぐっとアクセルを踏むようにしていましたが、そういうことがうまくできるようになっていきたいです。
——これまでの活動を振り返って、ご自身にとって大きな転機になったと感じていている出来事を教えてください。
たくさんありますが、演劇に出会ったことは大きかったと思います。映像作品と違って、演劇は頭のてっぺんから爪の先まで、常に誰かに見られている状態での表現なので、細部まで気を遣わないといけない。そして、役としての生き様ももちろんですが、普段自分がどういう人間であるかというのも透けて見えてくる。そういう舞台の上で何かを表現するというのは、僕にとって0に戻れる瞬間になっているなと感じています。
——舞台経験が映像作品にもプラスになっていると感じますか?
まさに今回の役はきっとどこかでつながっているのかなと。全身が見えるアクションとか、体で表現する演技というのはつながっていると思います。
●絶対無理と思う役や作品にやりがい「飛び込んでみようかなと」
——さまざまなジャンルの作品に出演されていますが、ご自身の中でアクションはどういう位置づけですか?
アクション1つとってもさまざまなジャンルがあって、三池(崇史)監督とご一緒した『土竜の唄』は超喧嘩ファイトで、そういったアクションもあれば、岡田准一さんとかがやっているような技で見せていくアクションもあるし、そういった意味で今回の憎しみ100%のアクションはまた違う見せ方になるのかなと。
——自分の武器の一つというか、アクションに大きなやりがいを感じられているのでしょうか。
自分としては得意だと感じたことはなかったです。人に当てるのが苦手というのもあって。容赦なくバコ〜ン! ってできる役者の方が迫力が出るんですよね。なかなかいけない弱さが自分にはあるので。
——ご自身が特にやりがいを感じているものとは?
「これ絶対無理でしょ」という役や作品の方が、力を発揮できる気はします。自分の得意な形が通用しないものの方が、火事場の馬鹿力的なものが出るのか、役への掘り下げが深くなるのかわからないですけど、そういう経験をたくさんしてきました。自分のイメージとかけ離れた役をいただくと、誰かが僕のことをこんな角度で見てくれていたんだという面白さも喜びも感じて、ドキドキするけど飛び込んでみようかなとかという気持ちになります。
——今後はどうなっていきたいと考えていますか?
僕は将来を思い描いたことがあんまりなくて、「次はこういう役だから、こういう準備をしようかな」というぐらいで、「10年後どうなってたい」「40代こう過ごしたい」ということがないまま来てしまって、きっとこれからもそうなんだろうなと思います。自分で人生の地図を描いてその通りに進んでいくより、行き当たりばったりで進んでいって、気づいたら自分でも想像してなかった場所に立てていたみたいな方が、自分としては合っているのかなと。
——こうなりたいと思って目指すのではなく、オファーを受けて、目の前の役や作品と向き合っていった先に、どんな世界が広がっているのか楽しみたいという感じでしょうか。
そうですね。僕たちは基本的にお話をいただいてから始まりますし、作品との出会いや人との出会いで変わっていくので、ある意味、運任せなところもあるなと思っています。
■生田斗真
1984年10月7日生まれ。1996年にNHK Eテレ『天才てれびくん』に出演後、ドラマ『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(07)や『魔王』(08)などで注目を集める。2011年、映画『人間失格』(10)、『ハナミズキ』(10)でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、ブルーリボン賞新人賞を受賞。そのほかの代表作に、映画『土竜の唄』シリーズ(14、16、21)、『予告犯』(15)、『グラスホッパー』(15)、『彼らが本気で編むときは』(17)、『友罪』(18)、『告白 コンフェッション』(24)、ドラマ『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』(15)、『俺の話は長い』(19)、『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』(21)、『鎌倉殿の13人』(22)、『警部補ダイマジン』(23)、Netflixシリーズ『さよならのつづき』(24)などがある。今年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』にも出演中。
ヘア&メイク/豊福浩一(Good) スタイリスト/前田勇弥