映画『ハン・ソロ』映像なぜ暗い?撮影監督の美学とは

3月5日(金)12時7分 THE RIVER

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

スター・ウォーズ』屈指の人気キャラクター、ハン・ソロの若き日の知られざる冒険を描いた映画ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)。銀河の裏社会を主な舞台に、ソロが危険な戦いに挑んだ本作では、『スター・ウォーズ』のスペース・オペラらしさをベースに、西部劇や犯罪映画の質感も取り入れられた。監督はロン・ハワード、撮影監督は『メッセージ』(2016)などオーセンティックな映像表現を得意とするブラッドフォード・ヤングだ。

『ハン・ソロ』は映像が暗い?海外でも話題に

『ハン・ソロ』を鑑賞すれば、映画全編にわたって少し画面が暗いという特徴に気付くかもしれない。ほとんど闇に紛れた登場人物を僅かな光が照らしていたり、姿がシルエットのように描かれたりといった演出が多いのだ。

この画面の暗さは海外ファンの間でも劇場公開当時から話題になっている。米ボストンの映像機器会社創設者のチャピン・カルター氏は『ハン・ソロ』を劇場で鑑賞した時、その暗さに「とても困惑」し、映像が「暗いし、ぼやけているし、よく見えない」として劇場の支配人に文句をつけたと語っている。つまり、劇場側の映写トラブルかと勘違いしたほどなのだ。

また、ブルーレイがリリースされた後にも、海外の『スター・ウォーズ』コミュニティサイトには「映像が暗すぎて、濁っている。まるでコントラストをゼロに落としたようだ」「目が疲れるほどに暗い」との投稿があり、これに同意する声が多く寄せられている(スレッドの主は、「1080pのブルーレイで鑑賞するとかなり明るくなった」と加えている)。

ファンから専門家まで「暗い」と感じる『ハン・ソロ』の映像だが、これには製作上の意図があったようだ。撮影監督を務めたブラッドフォード・ヤングが業界専門メディア「British Cinematographer」のインタビューで、映像が薄暗くなった背景がわかる話を残している。

『ハン・ソロ』暗い映像の理由

ヤングは、『ハン・ソロ』前任監督のクリス・ロード&フィル・ミラーから、映像の参考として1971年の西部劇映画『ギャンブラー』を提示されたという。ヴィルモス・スィグモンドが撮影監督を務めた作品で、暗い室内の人物を蝋燭やランプの明かりでじんわりと浮き上がらせるような映像が特徴的だ。『ハン・ソロ』同様に雪原のシーンもあるが、空は曇っており、人物の姿をシルエットのように見せる演出も確認できる。「あの物語の色調と、ヴィルモスの映像に惹かれました」と、ヤングは『ギャンブラー』からの影響を話している。

ヤングは自身の映像について、「自然主義的で、カメラの技術面と光の使い方には落ち着いた印象があると思います」と認めており、「自然光をできるだけ取り入れるのが私のスタイル」とも説明している。

『ギャンブラー』の他にも、ヤングは「ゴードン・ウィリス撮影によるウディ・アレン映画をいくつか、たとえば『インテリア』(1978)や『スターダスト・メモリー』(1980)なんかも参考にしました」と明かす。「ダーク・コメディとダークな映像に橋を架けることにいつも関心があります。それから、ゴードンの撮影で見られる反・直感的な性質と、コメディ・ジャンルの調和についても。こういったことを、『ハン・ソロ』でもやれる余地があるかもしれないということで、惹かれました」。

ほか、『レニー・ブルース』(1974)も「ノワールとコメディの融合例」として参考にしており、『記憶の棘』(2004)の「並外れたヴィジュアル・スタイルとテクスチャーからも影響を受けた」と認めているのだ。

ヤングは『ハン・ソロ』について、「時代劇でもあり、西部劇でもあり、ロード・ムービーでもある」と形容。「この映画を、暗くてオーガニックな気質、私が"spirited blacks(spirited=勇ましい、活発な) "と呼ぶものと一緒に描くことができれば、『スター・ウォーズ』映画をひとつ前に進めることができるのではないかと思ったのです」。

自身のお気に入りは、沼の惑星ミンバンのシークエンス。ハン・ソロの帝国アカデミー時代の戦闘場面だ。「霧がかっていて、泥だらけで、第一次世界大戦の塹壕戦のようなシーンで、『007』のセットのようでした。爆発による点滅と、微妙なレベルの環境光が、霧の中で細部を綺麗に映してくれています」。

『ハン・ソロ』のダークな映像質感は、撮影監督ブラッドフォード・ヤングの美学によるものだったことがわかった。確かに、ソロの孤独な出自、裏社会に生きる登場人物たちの犠牲や別れ、裏切りと、『ハン・ソロ』で語られる物語は決して明るくない。こうした世界観の中で、SF映画のヒーローという現実離れした存在をひとりの若者として描こうとした際、自然な映像表現を尊重するヤングのスタイルが採用されたということだろう。そのこだわりもあって『ハン・ソロ』は、他の『スター・ウォーズ』映画とは一味違った異彩を放っていることは間違いない。

Source:British Cinematographer,IndieWire,The Cantina


THE RIVER

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