徹底したローコスト運営とサービス拡充を実現させたchocoZAP ダイソーから転身した女性役員の意識改革

2025年3月6日(木)9時10分 オリコン

RIZAPグループ執行役員の木村仁美さん(写真/片山よしお)

 3月8日の「国際女性デー」は、“女性の生き方を考える日”として女性の活躍やリーダー育成に向けた取り組みが進められている。幅広い業種のさまざまな役職に就く女性が目立つ中、コンビニジム「chocoZAP」で健康的な日常生活のあり方を提案するRIZAPグループでは、前職で100円ショップ「DAISO(ダイソー)」での経歴を持つ、執行役員 商品開発本部 本部長 兼 購買本部 本部長の木村仁美さんが活躍している。前職で培った商品開発のスキルや知見を、現在の事業でどのように活かしているのか話を聞いた。

◆「DAISO」で培ったコスト削減、ローコスト運営の徹底と意識改革に従事

——大創産業からRIZAPグループに移られた経緯を教えてください。

【木村仁美さん】 100円ショップ「DAISO」では、売価が一定の商品開発をしていました。仕事としてのステップアップを考えていた時に、RIZAPグループが事業拡大をしていて、経営者の理念と熱意に共感を抱き、ご縁があって入社しました。入社後は、雑貨を扱う「HAPiNS」の商品本部長、サポーターなどスポーツ商品製造のD&Mの取締役などを経て、2023年7月から本格的にchocoZAP事業に携わっています。現在はchocoZAP関連の商品開発・調達の責任者と、グループ会社の連携によるシナジー創出の役割を担っています。

——大創産業での経験値は、RIZAPグループでどのように活かされていますか?

【木村仁美さん】 大創産業の強みは、どこにも負けない交渉力と安さでバリューのある商品を開発し続けていること。そしてそれが世界各国のお客様から受け入れられています。RIZAPグループでも、まず1円でも原価を下げることの大切さに注力し、そのマインドを浸透させました。直近では、高付加価値で高価格のRIZAPと、低価格でいかに付加価値を高めるかというchocoZAPで、サービス形態の違いはありますが、事業推進においては共通するところがあり、双方をつなげました。

——chocoZAP事業には、ローンチから1年後に参画されています。

【木村仁美さん】 ローンチからずっと店舗数もサービスも拡大を続けていくなか、さまざまな商材の物価高もあり、それまでの調達や店舗運営のやり方では、継続拡大が難しくなるフェーズに来ていました。そこで、ローコスト運営を徹底するために、すべてを見直しました。chocoZAP事業は、ゼロから1を立ち上げましたが、この1をもう1回見直すタイミングでした。

◆徹底したコスト削減の一方、人材育成に投資も…体験を通した当事者意識の浸透

——どのようなことを重視して見直していったのでしょうか。

【木村仁美さん】 まずはオーバースペックになり過ぎない意識を現場に徹底しました。chocoZAPは初心者のお客様がメインなので、その方々が使いやすいものを選定できているか。使わない価値にお金を使うよりもお客様が本当に喜ばれる譲れないポイントが大切だと感じています。例えばスマホなども使いこなせない機能がある中で売価も上がり、もっとこうだったらなと感じることもあります。お客様にご満足いただけることが大前提ですが、お客様に継続していただくために、そして価格を維持していくために、スタッフみんなでいろいろなパターンを検証しながら、改善していきました。

——コスト削減を徹底しながらも、満足度向上のために投資しないといけない部分もありそうです。

【木村仁美さん】 それがいま一番の課題です。コストを抑えながらも、きちんと投資しないといけないこともある。例えば、マシンのメンテナンスが追いついていなかったり、女性のお客様は特に店舗の清潔感を気にされる方も多いので、それが不十分であれば、どんなに良いサービスであっても通い続けていただけない。きちんとニーズにあったスペックを理解し、その分の資金をしっかり投下していく。そのバランスはこれからも重要だと考えています。

——事業のコスト削減を進める一方、約1ヵ月間の100人規模の海外出張(中国)を実施されました。コスト削減と相反する大きな出費になりますが、どういった意図のもと行われたのでしょうか?

【木村仁美さん】 chocoZAPをさらに拡大していくためには、それまでの商品や備品の仕入れでは難しい段階に差し掛かり、調達やものの選び方から見直すことを、社員全員が経営目線で考え勉強するところから始まりました。各部署の1人ひとりが現地を実際に視察することで、原価を知り実際に交渉し、商売を肌で感じながら体験するからこそ身につく学びがあります。その結果、従来のコストの半値になった部材もありました。

——参加したのは商品開発部の方だけではなかったんですね。

【木村仁美さん】 社長を始め経営陣から新入社員まで、商品や備品調達、店舗運営に関わるメンバーだけでなく、DXを担う技術部門などあらゆる部署のスタッフが参加しました。そこにはROI(投資利益率)の観点があり、今回の知見をもとに、それぞれ独自に交渉ができるようになり、さまざまなコスト削減に繋がっています。教育の一環としての大きいプロジェクトであり、社員1人ひとりに当事者意識を浸透させることができました。

◆安心して通える店舗づくりとセキュリティ対策に活かされる女性視点

——コスト削減にこだわる上では、DX化も欠かせません。RIZAPグループではDX化を進めていますが、木村さんはそこにはどのように貢献していますか?

【木村仁美さん】 部署を超えた横の連携は、RIZAPグループの得意な分野です。DXに直接かかわっているわけではありませんが、コスト削減の視点からチェックしたり、意見を出したりしています。いろいろな部署がいい意味でフラットに動いて連携しています。

——一方、担当部署ではない社員が機械故障やメンテナンスに対応するなど、アナログな動きも行われています。コスト削減のプロとして、この取り組みをどのように見ていますか?

【木村仁美さん】 それぞれの部署の社員が、実際に店舗の現場で起きていることを自分の目で見て、肌で感じることはとても意味のあることだと考えております。もちろん人件費もコストなので、ただ人がやれば良いというわけではありません。人にしかできないことと、DX化でシステムに置き換えることの両軸が必要です。

——chocoZAPは運動初心者や美容に関心のある女性が、24時間無人でも安心安全に楽しく通えるジムです。女性が安心して通える店舗づくりには、どのように取り組んできましたか?

【木村仁美さん】 深夜に行きたいと思った時に、店舗が明るく、ガラス張りで中が見える方が安心感につながるのではないか。見られたくない方もいるかもしれませんが、見えている方が安心な場面もあるかと思います。そういったスケルトンの店舗づくりは、女性の目線が反映されていると思います。逆に、人に見られたくないエステや脱毛、ホワイトニングは、個室ブースにして見えない環境を作っています。そのメリハリとセキュリティ対策は、引き続き重要だと考えています。

——ネイルや脱毛、ピラティスなど、女性需要の高いサービスも多く提供されています。そこでも女性ならではの視点が活かされているのでしょうか?

【木村仁美さん】 例えばピラティスでは、マシンの置く位置や角度を重要視しています。体の動かし方や姿勢によっては、利用している姿をあまり見られたくない。でも、限られた店舗の面積の中で、監視が行き届く位置と角度にしないといけない。とても重要な問題のひとつです。安全安心を最優先に、死角を作らないレイアウトを意識しています。

——女性向けサービスが充実していると感じます。

【木村仁美さん】 女性向けに感じるサービスも、実は男性の需要もあります。男女関係なく、時代とともに美への意識は高まっています。健康や美容等のカテゴリーで私たちがお手伝いできるサービスをこれからも追加していき、男女問わずお客様に喜んでいただける店舗を目指しています。

◆“健康=美”の時代に、心と体の両方の側面で健康的に長生きするための支援をしていく

——RIZAPグループは、日本にパーソナルトレーニングを根付かせ、「健康的な生活と運動」「健康的な美」に向き合ってきました。コロナ禍以降は、フィットネス需要も増え、運動と健康への意識の変化も見られました。近年は、世の女性たちの“美しさ”の捉え方が多様化していますが、世の中の動きをどう見ていますか?

【木村仁美さん】 まず前述のように男性の美意識が高まっていることを感じます。女性に関しても、“痩せている=美”という価値観が、この数年で大きく変わりました。体重を減らすダイエットではなく、健康的にイキイキと長生きするための支援ができればと考えています。普段から明るい表情でいることや元気でいることが、いまの時代の美しさではないかと捉えられています。そのなかで、運動をして汗をかき筋肉をつけることで、自分への自信や、自分らしくいることにつながっていきます。そういった個性が大切な時代であり、健康でいることがよりフォーカスされていると思います。

——健康的な生活を送る上では、それぞれの「働き方」も重要になります。RIZAPグループでは、どのような取り組みが行われているのでしょうか?

【木村仁美さん】 TPOは必要ですが、服装も装飾も自分らしくいられる環境が整っており、スケジューリングも個人に任されていますので、仕事の仕方の自由度が高いです。もちろん責任は伴いますが、一番成果を上げられる環境下で働く方法を選べる、とても働きやすい会社です。

——女性はライフステージに合わせて働き方も変わります。

【木村仁美さん】 女性だけでなく、男性で育休を取っている社員もいます。有給休暇も含めて、どんどん取りましょうという社風なので、働き方の間口はとても広い。未来に対する不安がない、働くことに安心感がある会社です。こういった環境の背景も健康的な生活につながると感じています。

——健康的な美を追求する女性に対して、RIZAPグループはどうサポートしていきますか。

【木村仁美さん】 トレーニングによって体が健康になるのはもちろんですが、それだけでなく、精神衛生上も健康的になって、頭も冴えます。現代社会に生きる女性には、いろいろな悩みや苦労があると思いますが、体を動かして汗をかくと、デトックスされ心のモヤモヤがすっきりします。身体の健康だけでなく、運動が心の健康にもつながる循環を作っていきたい。皆さんの身体と心の健康に私たちはこれからも寄り添っていきます。

(文/武井保之)

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