大前研一氏、北方領土問題解決に「希望者には日本国籍付与」

3月8日(金)16時0分 NEWSポストセブン

経営コンサルタントの大前研一氏

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 北方領土については、政府も長らく「四島返還」を強く訴えてきたが、昨年11月の安倍晋三首相とプーチン大統領の会談後から、二島先行返還を軸に進める方針へと転換された。果たして、今の路線で問題は解決できるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、北方領土問題の最適解について解説する。


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 歯舞群島と色丹島を返してもらうメリットはどれほどあるのか? たとえば1972年の沖縄返還の場合は、日本人が約96万人も居住していたので、非常に大きな意味があった。しかし、歯舞群島にはロシアの警備隊が駐留しているだけだし、色丹島には約3000人のロシア人が住んでいるが、日本人は1人もいない。そこを取り戻すメリットは、漁業権の範囲が拡大することくらいだろう。


 私は一昨年、北海道をオートバイでぐるりと巡ったが、どこもかしこも広大な“空き地”ばかりだった。離島の利尻島、礼文島、奥尻島も有効利用されているとは言い難い。もし、歯舞群島と色丹島に加えて国後島、択捉島も返還されれば、そのぶん行政府は解決しなければならない難題が山積みとなるが、それに備えた明確な統治ビジョンが日本政府にあるとは思えない。


 たとえば安倍首相は記者会見で、二島が返還された場合にロシア人の島民をどうするのかという質問に対して「理解してもらうしかない」と答え、これにロシアが猛反発した。なぜなら、ロシアはバルト三国で苦い経験をしているからだ。1991年のソ連崩壊後もバルト三国にはロシア系住民が6〜30%くらい残っており、この人たちが今、いじめ抜かれているのである。


 同じ轍を踏まない方策として、日本は北方四島に居住しているロシア人に「三つの選択肢」を与えるべきだと私は主張してきた。それは、(1)希望する人には日本国籍を付与する(2)ロシア国籍のままでも日本の年金や健康保険などの制度を利用可能にする(3)ロシア本土に移住したい人には費用を負担する──というものだ。そういう提案をすれば、ロシア側も受け入れやすいと思う。



 これは特別な扱いではなく、戦後、日本が在日外国人に対して行なってきたことと同じである。


 ただし、返還後の北方四島の統治に対するロシアの意向は“沖縄方式”だ。つまり、施政権(立法・司法・行政の三権を行使する権限)は日本に返すが、軍政はロシアが維持する、ということである。しかし、現状で四島に日本人は住んでいないのだから、日本側には施政権をもらって沖縄方式にする意味がない。


 それならいっそ、平和条約締結と二島先行返還を交渉の入り口にしながら、最終的には四島をかつての北マリアナ諸島やパラオのような国連信託統治形式で日露共同の「非武装中立地帯」にするのがよいのではないか。それならアメリカも受け入れやすいだろうし、国後島の南に広がる豊穣の海での漁業も可能になる。四島とサハリン(樺太)、極東ロシアで日露がエネルギー分野を中心に経済協力を推進すれば、世界中から投資や産業を呼び込めるし、観光資源としても大きな可能性を秘めている。


 安倍首相は、日本にとってあまり意味のない二島先行返還を選挙対策に利用するのではなく、どうすればそれが真の国益になるかということを考えて、平和条約を主眼としたロシアとの交渉を進めるべきである。


※週刊ポスト2019年3月15日号

NEWSポストセブン

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